再会
*…*…*…*…*
夜明け前の廃校。『ドミニカ小学校』。その学校の体育館。
色褪せた木の床、ぶら下がった電球。けして、綺麗とは言えない施設内。
そんな体育館の中。ルーフォスは、静かに着替えた。
誰も起こさないように、忍び足でコッソリと。ただ1人で、校門に向かう。バレないようにして来たので、靴を履いていない。なので、足裏がとても痛い。
数分後、古びた表示が目に入る…。『ドミニカ小学校』と書かれた表示。が、すでに文字が切れかかっていた。そんな時間は、立っていないハズなのに。なんて、思いながら
周りを見渡す。…誰もいない。
ここに来れば…レーネに会えると思っていた。
苦笑し、来た道を帰ろうとした、その時。
「ルー……フォ…ス…?」
懐かしい幼なじみの声がした。まさか、そんな事ないハズ。だって、彼女は…
「ルーフォス!!」
明るく綺麗なソプラノ。…まさか。僕は、彼女にずっと会いたかった。だけど、彼女は僕のせいで、一生治らないケガを負ってしまった。だから…会ってはいけない。そう思ってた。自分の感情をごまかして。
だけど…レーネの事…
喉をゴクリと飲み込め、声の方を向く。亜麻色の髪や翡翠色の瞳、薄紅色の唇、桜色の頬。可愛らしい彼女。その姿は変われど、確かにレーネだった。
目の奥が、熱い。頭が痛くて、視界が滲む。
「ルーフォス!!」
彼女の姿が、大きくなった。…嫌、そう思っていたら、僕は彼女に抱きしめられた。
「大丈夫?どこか、痛いの?」
何も答えられない。嫌…答えたくて、彼女には聞こえない。言ってムダだ。
滲む視界。あぁ、僕は今泣いているんだ…。情けない。バカみたい。
「…ごめんなさい。守るって約束したのに…。ごめんなさい」
何も聞こえない彼女に、頭を下げる。くいっと、顔が上を向かされる。…同じ身長なのに。こういう時の彼女は、背が高く見える。
「…確かに、私は何も聞こえない。だけど、ルーの言う事はなんとなく分かるよ。
だからね、良いんだよ。過ぎた事よ」
間近にある幼なじみの顔。優しそうな顔から、一変。恐ろしく、真面目の顔付き。
「ねぇ、ルーフォス」
「何?」と、首を傾げて見る。こういう時のレーネの顔は、怖いくらい綺麗だ。と、同時に、こういう時は彼女は危ない事を考えている表情だ。
強い光を宿した翡翠色の瞳。その瞳の光が、まぶしいくらい輝く。
「私は、ルーフォスと戦うよ。
あの日みたいに。
だから、私は革命軍に入るよ。何も役に立てないかも知れない。だけど、戦うよ。
…例え、もう君の声が聞けなくて。」