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君の声~たった1つの願い事~  作者: セリオス・ケルツァート
第3章 叶わない願い、君に届け
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導く光 2

 レーネは、青の世界を落ちていく。

 風が心地よい…鳥はこのような思いをしているのか。そう思うと、鳥が羨ましくなった。




 ふと、下を見つめる。

 眼下に、あの懐かしい場所があった。

 私が彼に告白した、

 私の耳が聞こえなくなった、

 私を庇い、

 軍人にルーフォスが捕まった、

 …思い出が、沢山ある丘の上。




 結局、ルーフォスの返事は聞けなかった。嫌…聞く前に、私は死んでしまったけれど。

 翼を力強く羽ばたかせ、その地に降り立つ。裸足から伝わる懐かしい土の感覚、

通り抜けていく風。

 …そんなのは、ずっと当たり前だと思ってた。


  


 歩き出そうとした時。

 羽が消えた。羽が黄金色の光の粒となって、消滅していく。私の周りで。

 

 



 突然、ユミィ…“希望や奇跡を運ぶ者”の声が脳裏に響く。


『ありがとう、レーネ。これで、やっと彼の元に行ける』


「え…?」

 耳を疑う。…どういう事だろう。


『彼と約束したんだ、あの時。罪を犯して私の身体が、彼の腕の中で消える瞬間…。

 私は、彼に言われた。「魂だけになっても貴女を待ち続ける」と。


 その後、神々によって…彼と関わる事も許されなかった。それから…自らの罪を償う為に、神々に仕えた。私は人々に“希望や奇跡を運ぶ者”として働いた。何億年と。あの暗い場所で、ただ1人…働き続けた。


 やがて解放された。が、自分では、彼の愛した国に戻れない。神々は、そんな愚かな私の為に、私の願いを聞く者を与えた。その使命を持つ者…それが、お前なんだ。レーネ』


「……それが…私…?」


『私のせいで、貴女が死ぬ運命になってしまった。すまない。なんと、礼をすれば良いか…』


「良いよ」

 見えない光に対して、微笑む。 


『ありがとう、許してくれて』

 優しい口調。おそらく、安心したのだろう。




「ただ1つだけ、教えて。神話では、貴女は彼に抱かれて死んだ。だが、彼女が夢に出て来て、『他の人を愛せ』と言った。それでも、彼は貴女だけを生涯愛して続けた。

 

 その神話と今の話と違うのは、何故?神話と聖天使祭は、何を伝えようとしているの?貴女の話と違い、終わりが良くない。なのに、神話では何故…」


『…それは、彼が後世に残した遺言。こうであって、欲しいと言う願い。

 だけど、お互いに願いは叶わなかった。だから、神話には幸せな終わり方であるように。事実は変えられなくとも、物語なら変えられるから。

 ……いつか貴女にも、すぐ分かるわ。そして、神話が現実になる事を」


 

 最後の方は、聞こえなかった。というよりも、黄金色の光の塊が、自分の身体から出てきたからだ。

 嫌…もう光ではなかった。輝く金の光を纏たった、1人の美しい女性…。

いつか見た、旗に描かれた聖天使の姿にソックリだった。



 タイミングを計ったように…。どこからか白銀の光が、彼女の側に来た。その白銀の光も、眉目秀麗の男性の人に変わる。


 光の塊だった2つの光は、どちらも人の姿になった。2人は微笑んで、キスをした。

そして、彼女はコチラを振り返る。


『…私…』

 困ったように見てくる、光だった女性。


「良いよ。彼の所に、行ってあげて。ずっと、待たしてたんでしょ?」


 そこで、光だった女性が笑った。でも、次の瞬間。とても意地悪そうに、笑った。



『ありがとう。

 貴女に良いことを教えてあげる。貴女が死んで、あれから22年。

 貴女は、誰かの約束を破ったわ。それで、神々はその人に、呪いをかけたわ。そうね…例えば、外見。神の力のせいで、あんまり変わってないんだから』


「…?」

 あの人…?私のせいで?

 クスクスと笑う声。


『ごめんなさい、驚かせてしまったようね。大丈夫、安心して。呪いではないわ、ちょっとしたプレゼントよ。受け取って

あげて」



「えっ……?」

 ビックリした。この人、何考えてるのだろう。よくわからない。


『今分からなくても、その内分かるわ。

ありがとう、レーネ…。さようなら。

私達に出来なかった事を、貴女達は受け継いで欲しい…』

 そう言い残し、去って行く光の女性。

 男性と女性は、抱き合って天に帰って行った。





「…行っちゃた」

 これから、どうしょう…。帰る所なんて、ない。もう…22年経ってるなら。…ルーフォスはどんなになったんだろう。他の女性ひとと、生きてるのかな…。

 それより、私…誰と約束を破ったんだろう。思い出せない…



 首を左右に振る。…嫌な事は、考えたくない。

「歌でも歌おうかな…」

 とは言え、レーシェみたいには歌えない。


「良いもん、しょうがないもん」

 大きく息を吸い、深呼吸。それで、神話の歌を歌う。




『…ありがとう



 どんな時も一緒にいられて

 幸せだった



 その記憶を糧に

私は生きていこう



 例え貴方が他の誰かを

好きになったとしても



私は君の幸福しあわせ

願い続ける

永久に…



でも、それでも

君を愛してる…

ずっと 』


 

 その綺麗な歌声は、丘を越え、遠くまで

響いて行った…。










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