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進むしかない 1

11月24日、更新しました。

変更「サイラトル」→「サイネルダ」

 サイネルダ国。

 高度経済成長した、機械ばかりのーー…実力重視の国。


 そんな所には、もはや緑豊かな森は少なくなり。美しいはずだった海は、くすんだ青海になり果てた。…いや、灰色と言うべきか。環境汚染が激しく、見える形…それでも、人々は一見、幸せそうに見える。…が、そうでもないか。


 実力重視しすぎて、美しい環境は破壊寸前。腐敗して傾くばかり国。国民の不満がいつ爆発してもおかしくない状況。



 

 そんな国の国立図書館。

 灰色の海が見える、唯一国にある図書館。

膨大な量の書物が保管される所で、1階から5階まである。

 その3階の学習室…と言っても、個室ではない。書物の棚並ぶ端、窓側にある周りの人から見えてしまうオープンな学習場。


 そんな学習場、昼の光が入ってくる。

…まぶしい


 レーネは、綺麗な翡翠色の瞳を細めた。

「ちょうど、今日みたいな日かぁ~」

 と、静かに呟く。誰かに聞かれていないか、気になるが自分で調べようがない。

だって、私は耳が聞こえないから。

 読んでいた本を、机の上に置く。


…『治療魔法薬全集』。


 これは、国が認めた様々な病気に効く薬の本。こんなの読んでたってな~、治らないなら読まない方がいいのかな…。

だって、私は事故で失ったんだもん…。

治る訳ないよ。


 レーネは、静かにため息をついた。国の試験事故の時、とっさに身をていして守ってくれた彼の事を思う。

「…ルーフォス、あなたに会いたい」

 …どこに居るの?




 ☆☆☆


 その1時間後、都市の端。

アンティークで洒落た家。そのせいだろうか。新しいのに、とても古びた雰囲気を持っている。


 そんな家の居間。

ベージュ色のソファーに、腰をかけるレーネ。


「何もしてないのに、辛いや」


 自分の声すら聞こえない。なのに、呟いてみた。ただそれだけなのに、胸の中が悲しさと虚しさが埋まる。何度この複雑な感情と共に、生きて来たんだろうか…?何度死のうと思ったんだろう…。


 午後の光を反射する亜麻色の髪。その光る髪を、くるくると指で回す。


 などと思ったていたら、居間の奥から母親が出てくる。口を動かしていたから、父親と話していたのだろう。母親は手に持っていたホワイトボードを、私に見せる。


『おかえり、レーネ』


 何気ない会話…嫌、筆談。私は、口を動かし「ただいま」と呟く。ちゃんと、言えたか疑問だが。

 母親はホワイトボードに書いてある文字を消して、早々と文字を書く。


『あのね、レーネ。今後の誕生日プレゼントのことなんだけど、「猫」を買おうと思うの。どうかしら?』


 猫…。私の大好きな動物。昔も飼っていたが、今はいない。失った時、立ち直れないくらい落ち込んだ。もう、飼わないと思っていたのに。考えている間に、母親がまたホワイトボードを見せてくる。


『どう?』


 反射的に、私は「うん」とうなずく。また、悲しい気持ちになったら…辛いなぁ。だけど、こんな私を見たらミケもあの世にいけずに留まるだろう。…きっと、あの少年も生きていたら、私のせいで留まってしまうだろう。色々考えていたが、母親がまたホワイトボードを見せてくる。


『じゃあ、楽しみ待っててね』

私と同じ、翡翠色の瞳を輝かせた。



読んでいただき、ありがとうございます。



 +A変更

タイトルが、「今を生きる」→「進むしかない」

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