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君の声~たった1つの願い事~  作者: セリオス・ケルツァート
第3章 叶わない願い、君に届け
18/22

綿飴 1

 

 「おかあーさんっ!!」



 などと、考え事をしてたのに。子供が呼びかけたので、思考を中止する。自分と同じ桜色の髪を持つ子供が、抱きついて来た。


「なぁに?ロッティ」


「おかあさん!見てっ!!天使さまが」


 アッチアッチと、指を指差する。

 その手の先に、『聖天使』の像を運ぶ大人達。あぁ、ここも飾り付けされるのか。

 グルリと、辺りを見渡す。『聖天使祭』が始まろうとしていた。


 立派な木々に、シアンブルーと白銀のリボンが付けられて行く。そして、聖天使のシンボルが描かれた旗が、アチコチで飾られる。

 




 その青い旗の中心。手を組み、閉じた目から静かに涙を流す…『聖天使』。

 その背中には、白き翼。流れるような淡黄金色の髪。羽衣のような金の輝きが、その細身に纏っている。腰には、銀色の双剣がぶら下がる。


  神聖なる彼女の美しさ。


 それを、尚さら引き立つように、彼女は両足の間に腰を落としていた。…つまり、祈るような姿勢。


 



 


 そう言えば…私は、この天使のようになりたかった。腰にぶら下げた、自身の銀色の柄を触る。だけど、真似出来なかった。

「おかあさん…」

 ツンツンと袖を引っ張る娘。


「なぁに?」


「神話のおねえさん、どうなったの?」


「まず、死ぬ前に好きな青年の腕の中に。

青年は、泣いてた。許してくれ、と。

 彼女は黙って、彼の頭を撫でた。もう、苦しまなくて良い、と。

 そのまま、彼女は彼の腕の中で、黄金色の光の輝きになって消えた」


「それで?それで?そのままだと、かわいそ過ぎるよ?」


 プゥと頬を膨らませ、猫のような耳を倒す娘。その仕草が、とても可愛い。…私、親バカだ。


「うん。それで…」

「ゴホンっ!!その続きは、また後でっ!!」

 いつの間にか、復活したマリン。彼女の不機嫌そうな声に、止められてしまった。

 ジッと彼女を見ると、まだ若干目が赤い。それに、金の短髪がクシャクシャに汚れている。


「…マリン、もう大丈夫なの?」


「お陰さまで、バッチリ治りました。見苦しい所、失礼しました」


「嫌。別に良いけど」


 ソッポを向くシルベット。それを見て、クスクスと笑うマリン。そんな部下を見て、笑うロッティ。


「よかった!マリンおねえさん、元気になった!」

 

 喜びに満ちた笑顔。ロッティが、マリンの手を掴む。猫のような耳をピンッと伸ばして。




「だいすきっ!!」




 物凄い衝撃を食らった、マリンの驚いた顔。…それに、また泣きそうだ。


「わ、私は……汚い…。要らない、さ、触らない方が…良い。だからっ!!…そんな声で、言わないでっ!!」



 振りほどく手。マリンの零れ落ちる涙。珍しい、呂律の回らないなんて。しょうがないなぁ…。そう思って。

困ってオロオロしている子供に、耳元で囁く。途端に、パッと明るくなるロッティ。





「マリンおねえさんは、汚くなんかない!

大切な家族だよ!!」




 懸命にマリンの手を掴む。誇らしげに、胸を張るロッティ。マリンは目を見開き、上司の顔を見る。すると、上司は口の端を上げ笑ってた。勝ち誇ったように、堂々と。 



「ま!そう言う事!血の繋がりなくとも、TMSGの家族さ!!」

 ガクッと、転けそうになるマリン。


「…やっぱり、貴女には叶いません」


「だろっ!?」

 顔は素敵なのに、笑うと少年ぽっく見える彼女。


「…シルベット先輩」


「ん?どうした?綿飴食べるか?」

 指差す方向に、綿飴屋。マリンは苦笑しながら、軽く首を振る。


「食べます」


「おっ!良いね!おっちゃーーん、綿飴2個!」

 バカデカイ声、帰ってくる返事。



「…先輩って、なんで元気なんですか?私は、羨ましいです」


「うーん。とりあえず、笑え。幸せと元気は、笑う事でやってくる。だから、無理してでも、笑え。その先に、必ず幸せがあると、信じて」


「わかりました」

 クスクスと笑うマリン。いつも無表情顔より、とても良い。吹っ切れたような笑顔に、シルベットは頬を膨らませる。


「なによ?」


「…私は、必ず恩返ししたい。私を助けてくれた人達、貴女にも」


 ポリポリと、頭をかくシルベット。彼女の癖だ。



「んじゃ、まず笑いな。それだけでも、人を幸せにさせる力があるからさ」


「それ、分かりましたよ。だけど、ちょっとは目上とか偉い方には、大人しくしてください。見てて、恥ずかしいです」


「ええーー。みんな、平等に接しているのにぃーー??」


「ダメな事は、ダメですよ。先輩」






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