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君の声~たった1つの願い事~  作者: セリオス・ケルツァート
第3章 叶わない願い、君に届け
17/22

様々な思い 3

「マリン。そっちに、行ってて」

 シルベットは、彼女の背中を押す。


 

 その背中を見送って。

「ごめんなさい。いきなり、変な話をして」


「いいえ。僕も、人の役目になれて、嬉しかったです」


「そう」


 

 

 

 そう言った切り、しばらくの間。

互いに黙っていた。


「貴方は、優しい人ですね。貴方と、話せて良かった。ありがとう」

 沈黙を破ったのは、シルベット。


「いえいえ」


「そういえば、都市の丘ってありますよね?」


 …都市の丘。よく、レーネやジャックと遊んだ場所。レーネを傷つけた、軍人に捕まった所。


「はい、有りますね。それが何か?」


 彼女は、笑った。とても嬉しそうに。


「今日は、何の日か知ってますか?」


 え、いつも通りの日。なんか、あるハズない………。そう言いかけ、頭に何か引っかった。

 否、1つだけ合った。僕らが作った、1大イベントが。曇りで、夏本番の眩しい日じゃないから忘れていた。





「今日は、8月13日。

 僕が王を倒して、全て終わった日」

 ボソリと、呟いた。




「…そこは、神話の天使が…」

「ま、待って!言わないでっ!」

 シルベットの話を中断させて。何だか、心の中が明るくなった。今まで憂鬱だったのに。


「…そんなに元気になったら、死んだ人に迷惑ですよ。まぁ、暗いよりマシか」

 低く呟く彼女。「でも」と、また呟いて。

「私達は…生き残った者は、死んだ者の思いを引き継ぐ役目がある」



「僕は、引き継ぎます。みんなや、レーネの思いを」

 くるりと、振り返る。そのまま、走ろうとした時。

「どこに行くの?」





「僕、約束した場所があるんです。神話の話

モデルとした丘の上っ!!

 前…昔に好きな子に告白されて、答えられなかったっ!!居なくても、伝えたいっ!!もう、後悔したくないっ!!絶対にっ!!」



 その瞳は、いつかの少年の瞳。揺るがない意志の強い……強い思いの炎を灯していた。






 *…*…*…*…*



 その青年が去った後。

 シルベットは、静かに微笑んだ。


「幸せが、貴方の上にも有りますように」


 上を向く。憎たらしい程、青い空を見上げる。



 遥か昔、都市ドミニカの丘の上。

 こんな神話がある。

 数多の『世界』を、自国を、守った天使がいた。


 なぜ、そういう風にいたったか?彼女は…天使は、許されない恋をした。

天使は、青年を愛した。

青年も、天使を愛した。


 だが、神々はソレを許さなかった。それで、若者を生かしておく事が許さなかった。

 ついでに、数多の『世界』を世界を国々を、壊し始めた。


 その事を聞き、天使は苦しんだ。

 自分が愛した青年は、この「アレッシィ世界」を守る者。自分は、人の為に働く天使。



 数多の『世界』、国々、

青年の愛する国を救うか?

 それとも、神々の言う通りにして愛した者を皆殺しするのか?


 迷わなかった。天使は決めていたから

。自分の愛した青年の為に、この命を…捨てようと。青年の愛した物を、すべてを守りたい。ただ、それだけ。


 神々に刃向かい、自らの死を持って死んだ場所…それが、都市の丘とされる。


 それで、天使が死んだ事によって、

消えた事によって、全てすくわれた。

 


 だか……。8月13日に、驚くべき事が起きた。その為、その天使を祭る『聖天使祭』。





 


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