様々な思い 2
しばらくして、目の前が。
金色に染まる。…何だろう。そう思っていたら、それは1人の女性の髪だった。顔は結構綺麗な顔立ちの人…無表情で、不気味だったが。顔からして、シルベットと同じ位…もしくは、少し若いかも知れない。
シルベットは、その彼女に手を振る。
「コッチだよ~!!マリン」
マリンと言われた女性は近寄り、頭を下げる。
「…すみません。遅くなりました」
年頃に似合わない、黒い制服。話からすると、たぶんTMSGの者だろう。
「いいよ。それより、さっ…」
ルーフォスを指差し、話そうとした時。
「知ってます。革命軍のリーダー、ルーフォスさんですね。会った事があるので、分かりました」
シルベットの話を遮り、淡々と事務的に話すマリン。僕は知らないよ、こんな人…。下品な言い方だけど、こんなグラマテスな身体の人の知り合いなんていない。目を背けながら。
それに、その瞳には、冷酷で冷たい。冷たい氷のような翡翠色の瞳。レーネの同じ瞳。
「私、ルーフォスさんに助けられました。ありがとうございます」
深々と頭を下げるマリン。
「嫌々っ!!何もしてないよ!」
慌てて、上に顔を向かせる。手を離すと、また俯いてしまう。1人で、オロオロしていると。それまで、黙っていたシルベットが口を開ける。
「…この子は、昔。国軍に酷い仕打ちを受けたんです。たった1人の母親の風邪薬を買う為に、安くしてくれと軍人に言った…。
ただそれだけだった。なのに…」
また押し黙るシルベット。
「私は、国軍に何を……バカな大人達に……
何をされたか……分かりますか…?」
途切れ途切れのマリンの声。
「私は、殺されかけました。捕まり……大人の玩具として。殺されかけた時、革命軍の貴方に助けられました。…覚えていませんか?
あの時の…ボロボロの子供達を…私を」
言葉を失い、目を見開く。心の奥で、忘れていた記憶が蘇る。
みんなとレーネで、軍人の牢屋を爆発させて。罪ない人達に助けたあの時を。その中いた、服をズタボロに幼い女の子。…その子が、今ここにいる子なのか…。
その幼い子供だった…マリン。
「私はっ!!怖かったっっ……!!恐ろしかったっ!自分が壊さていく、自分と同じ子が殺されて行くのを。
そんな絶望して自害をしようとした時、貴方が、貴方達が助けてくれたっ!」
氷の仮面のような顔が、崩れるように、
壊れるように。……いつか見た、苦しそうな表情になる。
「…マリン。もう、辞めよう。ルーフォスさん、困ってる」
マリンの肩を掴み、背中を撫でるシルベット。
「機嫌を悪くされたら、ごめんなさい。ルーフォスさん」
淡々と話すシルベット。だが、その瞳は悲しそうに揺れていた。…泣いているようにも見えた。
「ルーフォスさん」
シルベットの腕の中にいる、くぐもったマリンの声。
「…何?」
「私は、自分が汚くて、嫌いだった。絶望して、何度死のう…そう思ったか。
でも、今を生きて、立ち向かって行く貴方達の姿を見て、私も頑張ろう。そう思った。
そう思わせてくれて、希望を与えてくれて
ありがとう」
今まで抑えていた感情。
それが痛い程、分かった。
「君は、汚くなんかないよ。悪い大人達のせいだ。だから、自分を責めちゃいけない」