表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の声~たった1つの願い事~  作者: セリオス・ケルツァート
第3章 叶わない願い、君に届け
15/22

様々な思い 1

 *…*…*…*…*


 次の日、朝8時頃。

 都市ドミニカ。その都市の、とあるアパートの一室。雀の鳴く声で、ルーフォスは自室で目覚めた。


 上半身を起こして、しばらくボケーッとする。テーブル上の時計を見て、立ち上がる。パジャマを脱いで、置いてあった服に着替える。


 深い溜め息。結局、昨日疲れて行けなかった。あの場所に。


 そのまま、玄関へ。靴を履き、ドアを開ける。外に出て、鍵でドアを閉めて2階から1階へ向かう。


 見上げれば、綺麗な朝方。暗い黒から、真っ青な空。

 

 いつも通り、歩いて近くの食堂で、一服。その後、ゆっくり休むか。そう決めていたが、何故か公園に寄りたくなった。



 *…*…*…*…*



 その数分後。アパート前の公園で。

 公園のベンチに座る。目の前に、騒ぐ小さな子供達。あぁ、自分もこんな事あったなぁ。そう思いながら、見つめた。


 ふと、ピンクのボールが、自分の足元にたどり着く。

 すると、持ち主だろう小さな子供が寄ってきた。


「おにいちゃん、ソレ取って」


 ボールより淡い、桜色の髪をした少女が

話しかけて来た。見た目からして

恐らく、10才…前半だろう。

 それに、珍しい。レーシェか。

 あ、でも、この子は猫のような尖った耳がある。レーシェだけど、混血の子なのかも知

れない。尻尾はないから、人種だろう。


 怖がらせないように、ソッとボールを渡す。

「ありがとうっ!!」

 パッと、一瞬にして明るくなる少女。元から整った顔立ちなので、笑うと花のような咲く美しさ。


 

「ロッティ!!」

 どこから、澄んだソプラノの高い声。

「あ!おかあさんっ!!」

 その声に、桜色の少女は反応する。


 目の前で抱き合う親子。母親もレーシェらしく、娘と同じ鮮やかな桜色の長髪。だが、瞳の色は娘と違い黄色。それに、母親には猫のような耳がない。いったて、普通。娘だけ、違う。


 母親であろうその女性は、娘と離れて。娘に「お父さんと居てて」と呟いて、向こうに行かせる。


 その女性は、子供の後ろ姿を愛しそうに見つめる。

 その後。こちらを向き、手を差してきた。


「私はシルベット・エル・オリビア。

TMSGと言えば、分かりますか?貴方は、確か議員の…革命軍の元リーダー。

ルーフォス・スフィアさんですね?」

 

「あ、あぁ」

 

 

 

 ぎこちない返事と握手。それもそのハズ。彼女と出会うのは、始めだし。それに、TMSGと言うのは…。あの省略した言葉…『時空管理特別警備隊』の事だろう。陰ながら、人々を支えていく旅のような仕事……そう、誰かに教えてもらった思い出がある。



「良かったっ!!間違えてなかった。私、貴方に会って見たかったですよ!」

 

 綺麗な様式なのに、明るい笑顔のせいで

少年ぽっく見える彼女。その彼女に、クスリと微笑む。


「あぁ!やっと、笑顔になった!なんか遠くから見てて、暗かったから心配だったんだ!良かった!」


 子供のように自分を指差して、シルベットは笑う。自然と憎めないキャラ…それより、親しみが会って良い。まるで、昔からの親友と話しているかのような感覚だ。



「ありがとう」

 感謝の念を込めて言う。

「嫌々、良いんですよ」

 笑顔のまま、首を左右に振る彼女。

「人を笑顔にするのも、TMSGの役目なの?」

「嫌。自分でも、よくわからない。なんか、警察ぽいけど心理カウンセラー。そんな感じ」

「ふ~ん」



 ふと、遠くで遊ぶ子供達が、目に入る。

 ロッティと呼ばれた娘と父親の姿。幸せそうな姿。だけど、彼女達にとって、日々の日常。

「私の娘、可愛いだろう…じゃなくて、でしょ?」

 自慢げに聞いてくる問いに、苦笑しながら頷く。

「でもな。私は、ロッティの将来が心配だな」

 それはそうだろう…。親として。そう返すと、彼女は寂しそうに微笑む。

「なぁ、ルーフォスさん」

「何ですか?」

「人って、面倒くさいね。まぁ、生きてる者全て、面倒くさい者だけど…」

 そうだな…と言い換えす。

「だって、団体行動するのに。自分と違う、叉は気に食わないからって、仲間ハズレにするんだ。ほら、あんなように」


 

 

 指差しする方向の先に。

 彼女と同じ桜色の髪を持つ、彼女の娘。皆と遊びたかったのだろう。なのに、仲間ハズレにされ、父親と遊んでいる。だけど、チロリと、同じ年頃の子供達を羨ましそうに見つめている。泣き言も言わないで、笑顔で父親と遊んでいる。偉いなぁ…。


「結局、みんな自分と違う者を認めたくないのだろうね。嫌、怖いのかも知れないし、各本人達にも非があるのかも知れない」


「…仮に、そうだとしても。生まれは、しょうがないと思う。それは、生まれたその子に非はない。だから、憎まれたり差別されたりするのはおかしいと思う」


 悲しそうな顔で、無理に笑うシルベット。


「…ありがとう。そう思ってくれる人、少ないんだ。嬉しいよ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ