様々な思い 1
*…*…*…*…*
次の日、朝8時頃。
都市ドミニカ。その都市の、とあるアパートの一室。雀の鳴く声で、ルーフォスは自室で目覚めた。
上半身を起こして、しばらくボケーッとする。テーブル上の時計を見て、立ち上がる。パジャマを脱いで、置いてあった服に着替える。
深い溜め息。結局、昨日疲れて行けなかった。あの場所に。
そのまま、玄関へ。靴を履き、ドアを開ける。外に出て、鍵でドアを閉めて2階から1階へ向かう。
見上げれば、綺麗な朝方。暗い黒から、真っ青な空。
いつも通り、歩いて近くの食堂で、一服。その後、ゆっくり休むか。そう決めていたが、何故か公園に寄りたくなった。
*…*…*…*…*
その数分後。アパート前の公園で。
公園のベンチに座る。目の前に、騒ぐ小さな子供達。あぁ、自分もこんな事あったなぁ。そう思いながら、見つめた。
ふと、ピンクのボールが、自分の足元にたどり着く。
すると、持ち主だろう小さな子供が寄ってきた。
「おにいちゃん、ソレ取って」
ボールより淡い、桜色の髪をした少女が
話しかけて来た。見た目からして
恐らく、10才…前半だろう。
それに、珍しい。レーシェか。
あ、でも、この子は猫のような尖った耳がある。レーシェだけど、混血の子なのかも知
れない。尻尾はないから、人種だろう。
怖がらせないように、ソッとボールを渡す。
「ありがとうっ!!」
パッと、一瞬にして明るくなる少女。元から整った顔立ちなので、笑うと花のような咲く美しさ。
「ロッティ!!」
どこから、澄んだソプラノの高い声。
「あ!おかあさんっ!!」
その声に、桜色の少女は反応する。
目の前で抱き合う親子。母親もレーシェらしく、娘と同じ鮮やかな桜色の長髪。だが、瞳の色は娘と違い黄色。それに、母親には猫のような耳がない。いったて、普通。娘だけ、違う。
母親であろうその女性は、娘と離れて。娘に「お父さんと居てて」と呟いて、向こうに行かせる。
その女性は、子供の後ろ姿を愛しそうに見つめる。
その後。こちらを向き、手を差してきた。
「私はシルベット・エル・オリビア。
TMSGと言えば、分かりますか?貴方は、確か議員の…革命軍の元リーダー。
ルーフォス・スフィアさんですね?」
「あ、あぁ」
ぎこちない返事と握手。それもそのハズ。彼女と出会うのは、始めだし。それに、TMSGと言うのは…。あの省略した言葉…『時空管理特別警備隊』の事だろう。陰ながら、人々を支えていく旅のような仕事……そう、誰かに教えてもらった思い出がある。
「良かったっ!!間違えてなかった。私、貴方に会って見たかったですよ!」
綺麗な様式なのに、明るい笑顔のせいで
少年ぽっく見える彼女。その彼女に、クスリと微笑む。
「あぁ!やっと、笑顔になった!なんか遠くから見てて、暗かったから心配だったんだ!良かった!」
子供のように自分を指差して、シルベットは笑う。自然と憎めないキャラ…それより、親しみが会って良い。まるで、昔からの親友と話しているかのような感覚だ。
「ありがとう」
感謝の念を込めて言う。
「嫌々、良いんですよ」
笑顔のまま、首を左右に振る彼女。
「人を笑顔にするのも、TMSGの役目なの?」
「嫌。自分でも、よくわからない。なんか、警察ぽいけど心理カウンセラー。そんな感じ」
「ふ~ん」
ふと、遠くで遊ぶ子供達が、目に入る。
ロッティと呼ばれた娘と父親の姿。幸せそうな姿。だけど、彼女達にとって、日々の日常。
「私の娘、可愛いだろう…じゃなくて、でしょ?」
自慢げに聞いてくる問いに、苦笑しながら頷く。
「でもな。私は、ロッティの将来が心配だな」
それはそうだろう…。親として。そう返すと、彼女は寂しそうに微笑む。
「なぁ、ルーフォスさん」
「何ですか?」
「人って、面倒くさいね。まぁ、生きてる者全て、面倒くさい者だけど…」
そうだな…と言い換えす。
「だって、団体行動するのに。自分と違う、叉は気に食わないからって、仲間ハズレにするんだ。ほら、あんなように」
指差しする方向の先に。
彼女と同じ桜色の髪を持つ、彼女の娘。皆と遊びたかったのだろう。なのに、仲間ハズレにされ、父親と遊んでいる。だけど、チロリと、同じ年頃の子供達を羨ましそうに見つめている。泣き言も言わないで、笑顔で父親と遊んでいる。偉いなぁ…。
「結局、みんな自分と違う者を認めたくないのだろうね。嫌、怖いのかも知れないし、各本人達にも非があるのかも知れない」
「…仮に、そうだとしても。生まれは、しょうがないと思う。それは、生まれたその子に非はない。だから、憎まれたり差別されたりするのはおかしいと思う」
悲しそうな顔で、無理に笑うシルベット。
「…ありがとう。そう思ってくれる人、少ないんだ。嬉しいよ」