もう1度だけ…2
マリーの店から出て、都市の墓所に向かう。手には、可愛らしい花束。持っていく相手へのプレゼント。今さっき、買ったばかりのお土産。
大通りを挟んで、すぐ近くに設立された墓所へ着く。
大理石で作られた白い墓達に、青々と茂る草。ここは、国の為に命を落とした革命軍の墓。
…ここだ。
そんな墓の中、探していた墓を…
やっと見つけた。
墓に刻まれた文字を目読する。
『レーネ・サファイア
革命軍の1人。享年16才。
国の為に、命を散らした少女。』
その墓に、しゃがんでひざまつく。
そして、片足を立てて、花束を捧げる。レーネの遺体は、骨すら残らなかった。だから、この墓は空っぽ。だけど、ここに彼女がここにいると信じて、ひざまついた。
「ごめんなさい、レーネ。…こんな事になるなら……」
あの日、君の耳が聞こえなくなる前に
気持ちを伝えとけば良かった…。あの時、もっと早く君を逃がせば……。
後悔したって、遅い。彼女は、もう居ないのだから。もう…どこにも、居ないのだから。
「助けられくて、ごめんなさい」
こんな姿見られたら、天国の彼女は……。きっと、怒るだろう。
僕だけ助かって、あれから22年も生きてる。
彼女の犠牲の上で、生きてる…。
僕は、彼女の後を追うべきだった。だけど…この国を守る為に死んだ彼女達の…無念を。伝えて行かなけば、ならないから。それを理由にして、生きてきた。…逃げてきた。
そんな僕を、怒る。嫌、許す訳がない。
…けして、許さないで欲しい。
じゃないと、僕が…僕はダメなのだから。
許さない人物なのだから…。
だけど、だけど。
そんな事より、レーネ。
もう1度だけ、君に会いたい……。
嫌、君の声が聞きたい。
ただそれだけ。それだけが、
僕にとって……たった1つの願いだ。
叶わない願いと知りながら、叶えと強く願った。
強い自責、悲しみの中…。
深い溜め息をつき、立ち上がる。そのまま
、フラリと歩き出す。
いつか自身が、国軍の軍人に捕らわれた
丘の上を。レーネを傷つけてしまった、あの場所を目指した。