49 元婚約者の末路 ①
ロガンは自分から私にアピールすれば、イライアス様に何をされるかわからないと怯えていた。
こういう場合、普通の人なら、すんなり諦めるはずなのだが、彼はしつこかった。
『ソラリアは僕のものです。彼女は可哀想な人なんです。イライアス様に洗脳されてしまったに決まっています。助け出せば真実の愛に気づいてくれるはずですよ』
ロガンはオウガ侯爵代理にこんなことを言っていたそうだ。
リット殿下にも同じことを言っているのだろうか。そう思い、国王陛下からもさりげなく聞いてもらった。
すると、オウガ侯爵代理が聞いた話とはまったく違う答えだった。
『彼は諦めるつもりでいるらしいですよ。ですから、僕はその後押しをしているんです』
こんなことを言うと、自意識過剰だと言われるかもしれないが、ロガンが私を諦めようとしているとは思えない。
リット殿下は自分の都合が悪くなった時のことを考えて、真実を聞いていないふりをしているのではないかと思った。
ロガンに私から連絡をする気はまったくない。このまま無視を続けようと思っていた頃、リット殿下から私宛に手紙が届いた。
【ロガンはとても反省していて、君に謝りたいと言っている。話くらい聞いてやるよな? 嫌とは言わせない。これは第二王子からの命令だと思え】
高圧的な文章の下には、日時と場所が書かれてあり、十日後の昼過ぎ、人目につきやすい場所にある大きなレストランに来るようにとのことだった。
「ベェ!」
何と書いてあるのか尋ねられ、内容を簡単に話してみた。
「ベェ! ベェ!」
なんてことを言うんだと言わんばかりに、ベェはどこか怒った様子で鳴いた。
ベェとのコミュニケーションもだいぶ取れるようになってきたのは嬉しい。
「後でもいいのかもしれないけど、一応、イライアス様に今から伝えに行くわ」
「ベェ」
返事をしたベェは扉に向かって、ふわふわと飛んでいった。
執務室で仕事をしていたイライアス様に報告しに行くと、心配そうな目を向けてきた。
「僕も一緒に行くよ」
「お気持ちは大変ありがたいのですが、お仕事がお忙しいでしょう? 無理はなさらないようにしてくださいませ」
「妻が他の男と会おうとしているんだから、急ぎの仕事以外は後回しにしてもいいだろう?」
「行くなとは言わないのですね」
そんなつもりはないが、少し拗ねた様子で言ってみた。すると、イライアス様は苦笑する。
「リット兄さんが絡んでいるから断れないだろう? 僕が言っても、リット兄さんは聞かないし、行くなと言っても君は、彼との縁を切るために行かざるを得ないだろう? 君のことを信用はしているけど、相手は君よりも力は強い。何かあったら大変だから一緒に行くよ。彼には知らせないけどね」
イライアス様が来ると分かれば、ロガンも警戒するものね。
ロガンの目的は、レストランで二人きりで会っている所を他の人に見せて、私が浮気しているように見せかけるつもりなのではないかと考えた。
それで疑心暗鬼になったイライアス様との仲がこじれて、私たちが破局するとでも思っているのでしょう。
そんな馬鹿なことが実現すると思うくらいに、ロガンは私とイライアス様の仲を疑っている。 一緒にいる所を見せつける手もあるが、ロガンには意味がない気がした。
もう彼に気持ちなんて一欠片もない。しつこく付きまとうのなら、付きまとえないようにしてあげましょう。




