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レイハート公爵夫人の時戻し  作者: 風見ゆうみ


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29   王妃の考え ②

 ミティ様と話をした次の日の朝、馬車に揺られながら、私は昨日の話を思い出していた。

 王妃陛下や取り巻きの人間は『あなたのような下等な人間が、王太子妃など務まるわけがない』と言い続けているらしい。

 一時期はそう思って、婚約の解消を申し出たが、納得できる理由がなかったため、ラックス殿下は認めなかったそうだ。

 理由になる部分を伝えるなと言われているのだから、ミティ様にはどうしようもない。

 彼女が困ることくらい、考えなくてもわかるはずだが、相手のことなど考えないのでしょう。

 なぜ、婚約を解消させようとしているのか、考えられる理由として、今のところ考えられるのは二つ。

ミティ様としか結婚したくないラックス殿下が、王太子の座を捨てて、ミティ様のもとに走ること。

もう一つは、ミティ様が王妃陛下が認める女性ではないということ。

魔法使いを排除するために、リット殿下を応援したいところでしょうけど、全面的に彼の味方をするかはわからない。

王妃陛下の中に、ラックス殿下への愛があれば、自分の願いよりも息子の幸せを願うはずだからだ。


「ベェェー!」


 今日は雲一つない快晴で、ベェは窓から見える石畳の道に沿って出されている露店に興味津々だ。


「今は駄目よ。早く帰れたら寄るから我慢して」

「ベェ」


 ベェは返事をして、私の頭の上に飛んできた。人の往来が激しいため、馬車の動きは遅い。だから、私たちはゆっくりと通りの様子を眺めることができるが、賊が一般の人に紛れている可能性があるため、護衛にとっては嫌なスピードだろう。


「お姉様!」


 外からソレイユの声が聞こえた気がした。

 いやいや、そんなわけないわよね。姉のことをお姉様と呼ぶ人は貴族ではいくらでもいるし、平民の間でも育ちが良ければそう呼ぶでしょう。

 窓の外は見ないようにし、ベェを撫でて気持ちを落ち着かせる。しかし、その努力は無駄に終わる。

 ソレイユは私の予想以上にしつこかった。


「おい、近づくな!」

「うるさいわね! 私はお姉様に用事があるのよ!」


 護衛とソレイユの言い争う声が聞こえ、私は大きなため息を吐く。

 どうしてこんな所にいるのよ。もしかして、私が通るかもしれないと思って、ずっと待ち伏せしていたわけじゃないわよね?


「お姉様、聞きなさい! 私は強い味方を手に入れたわ! 絶対にイライアス殿下と結婚してみせるわ! お姉様は泣きをみるのっ、きゃあっ!」


 ソレイユが叫んでいる途中だったが、彼女を危険人物と認識した護衛に捕まえられたようだった。

 外を確認してみると、口を手で塞がれたソレイユの姿が見えた。

 彼女はピンクのドレスを着ていて、住む場所がなく、お金に困っているような人物には見えない。

誰かが、彼女を支援しているのだろうか。考えられるとしたら、リット殿下くらいだが、そこまで支援する理由は何なのかしら。

 考え事をしているうちに馬車は王城にたどり着いた。

 馬車を降りると、重厚な扉が内側から開き、出迎えのメイドたちが姿を現した。


「ソラリア様、お待ちしておりました」


 笑顔で出迎えてくれたメイドの背後にある大階段を、見計らったかのようなタイミングで下りてくる人物がいた。


「あら、ソラリアさん、いらっしゃい」


 金色の髪に青色の瞳を持つ王妃陛下は、スレンダー体型の気の強そうな美人だ。今までとは違い、浮かべている笑みが冷ややかに見えるのは、良くない話を聞いたからだろうか。


「王妃陛下にお会いできて光栄ですわ」


動揺を隠してカーテシーをすると、王妃陛下は、侍女たちを引き連れて、私の目の前にやってきた。


「少し、時間をもらえないかしら」

「王妃陛下とお話ししたいのは山々なのですが、申し訳ございません。国王陛下とのお約束があるのです」

「少しくらいいいじゃないの」


 王妃陛下が私の服の袖に触れようとした時、右手側の廊下から、イライアス殿下が現れた。


「母上、申し訳ございませんが、父上が待っていますので諦めてください」


 イライアス殿下は笑顔で王妃陛下にそう告げると、私に顔を向けて促す。


「案内するよ」

「ありがとうございます」


 イライアス殿下にうなずき、何も答えずに、ただイライアス殿下を見つめている王妃陛下に軽く一礼して歩き出した。


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