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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

本当に?

BLハッピーエンド。1番悩むのがタイトルです。あらすじ書くのも苦手です。最後まで読んで頂けたらうれしいです。

 リオールとスチュアートは3歳差。初めて会ったのはスチュアートが3歳で、カルバナル家の奥様がリオールを出産した時だった。リオールは次男で4番目の子供。カルバナル家は長男、長女、次女、次男の順番で、リオールは末っ子になる。

 スチュアートは、カルバナル家の執事、セバスチャンの息子。10歳になったら、リオール付きの執事になる予定だ。



 リオールは、少し癖のある金髪で、ポヤポヤした子供だった。末っ子だからか、のんびりしていていつも目が離せない。

 スチュアートはサラサラの黒髪で、年齢の割にしっかりした子供。いつもリオールの面倒を見ている。自分が10歳になったら、リオール付きになり、本格的に執事の勉強が始まる事を知っていて、今からリオールの事を観察している。何なら、リオールを操縦出来るかも知れないと考えている。



*****



「え?西瓜の種、食べちゃったの?ダメだよ!お腹の中で芽が生えて、頭から西瓜の蔓が伸びちゃうよ!」 

「え、、、。ホント?」

リオールは両手で口を隠す。

「ホントだよ!」

「どうしよう。ぼく、あたまからめがはえちゃうの?」

(うん?俺の言った事とちょっと違うね。芽が生えるのはお腹の中で、頭からは蔓が伸びるんだよ、、、。まあ、いいけど、、、)

「リオール、頭から何か生えて来たら、すぐ教えるんだよ!」

「うん。わかった。いつぐらいにはえるかな?あした?あさって?」

「わからないよ!とにかく気をつけて!」

それからリオールは、毎日頭を撫でている。最初は泣きそうな顔をしながら、1日に何度も何度も撫でていた。1週間経った今では、思い出すと不安そうに頭を撫でる、、、。後ろ姿でしゃがみながら頭を撫でる姿は可愛いくて笑える。


 そろそろ可哀想だから

「あ!リオール!頭から!」

と言いながら、リオールの頭頂部の毛を数本思いっきり抜いた。

「いたっ!」

「危なかったー。今、リオールの頭から西瓜の芽が出てたから、、、」

リオールは両手をほっぺに当てて、涙をポロポロ流し始めた。俺はリオールを抱きしめて

「もう、大丈夫だよ。俺がちゃんと抜いといたからね」

「ホント?」

「ホント」

「ホントのホント?」

「ホントのホント、でも、お腹の中の根っこを殺さないといけないから、これを最後まで舐めて、、、」

スチュアートは、祖父からもらった、めちゃくちゃ不味い飴をリオールに食べさせた。リオールは泣きながら、スチュアートの言う事を信じて、最後まで舐めた。

(ホント、可愛いヤツ)


 

*****



 リオールは昔から市井に行けば、売れなくて困っているからと、どう見てもその金額の価値は無いだろうと言う様な物を買って来る。

 幸せになれる石コロとか、家の中に悪い物が入れなくなる置物とか、枕の下に置いておくと、夢の中で好きな人に会える謎の模様が描かれた紙とか、紙に好きな人の名前を買いて入れておくと、書いた名前の人に声を掛けて貰える箱とか、好きな人と結婚出来る指輪とか、変な物をよく買わされていた。、、、アイツ、誰か好きなヤツでもいるのか?

 

 そして今度は、リオールが1人の女性を連れて帰って来た。

「お帰りなさいませ、リオール様」

「スチュアート、この女性を来客室へご案内して」

スチュアートは、また始まったと思った。

 リオールの親切心を逆手に好き勝手する女性は、多い。リオールに一礼して、女性を案内する。

「こちらへどうぞ」

と声を掛けると、女性は静かに

「すみません、、、」

と頭を下げる。女性は儚げで、幸薄そうな感じがした。でも、出るところは出て、締まるところは締まっている、所謂男性が好きそうな体型だった。

 もしかして、コイツが夢の中に出て来て欲しい人なのか?


 彼女を来客室へ案内して、リオールの元へ戻る。

「彼女のお食事はどう致しますか?」

「僕と一緒に」

「お食事の内容で気に掛ける事は、ございますか?」

「貧しくて、ご飯も食べられないと言っていたから、身体に優しい物を」

(、、、リオ、お前また騙されてるだろ。あんなに肌艶が良くて、髪はツヤツヤさらさらなのに、食う物に困ってると思うか?)

「それでは、スープをメインに致しましょう。いきなりたくさん召し上がっては、身体に負担が掛かりますので、今日は少な目にして、少しづつ増やしていかれたらよろしいかと」 

「それでお願いするよ」


 夕食前、彼女に声を掛ける。

「イザベラ様、お食事の準備が整いました」

静かに

「ありがとうございます」

と席を立つイザベラ。スチュアートは小さく笑い

「ご案内致します」

ゆっくり先を歩く。

「あ、、、」

イザベラがスチュアートの前で、フラッと蹌踉ける。嘘くさい演技がスチュアートをイライラさせる。

「すみません、、、」 

力弱く、スチュアートの腕を掴むイザベラ。上目遣いで瞳を潤ませ、じっとスチュアートの瞳を見たかと思うと、恥じらうように下を向く。

(リオもこの手でやられたな、、、)

「大丈夫でございますか?」


 スチュアートが、イザベラの前に音を立てずにスープを置く。具の殆ど入っていない、黄金色のスープ。野菜と肉を煮込んで出汁を取ってあるので、味が無いわけではない、但し、味付けは刺激を減らす為に薄くしてあった。そして、パンが一つ。焼きたてでまだ温かい、ふんわりと柔らかいパンだ。一口食べれば、ほんのり甘く、美味しいはずだった。しかし、イザベラはその食事を目の前にして、一瞬手が止まる。スチュアートは、それを見逃さない。

「イザベラさん、今まであまり食事を取れなかったと聞いたから、今日は少な目にしました。急にたくさん食べると、身体が過剰反応を起こしてしまうので、明日から、少しずつ増やしていきますね」

リオールが前菜を目の前にして言った。イザベラは少し引き攣りそうになりながら

「お気遣いありがとうございます」

と言葉にする。スープをスプーンで掬って一口頂く。

「美味しい、、、」

小さな声で呟いて微笑む。スチュアートは後ろでイザベラを観察する。イザベラはパンを小さく千切り口に運ぶ、必要以上にゆっくり、ゆっくり噛む。リオールはと言えば、イザベラの小さな一言や仕草に見惚れていた。



*****



 部屋に戻ったイザベラは、あんなに少ない量じゃすぐにお腹が空いてしまうとイライラして、枕に八つ当たりをした。スチュアートは少し開けた扉からそれを確認すると、音が立たないようにそっと閉めた。



*****



「で、あの子猫ちゃんはどこでどうして拾って来たの?」

「う、、、。スチュアート、怒ってる?」 

「いいえ、リオール様、怒ってなど決して、、、。ただ現状把握をしたいのでございます」

夜、2人きりの時に、やたら丁寧なスチュアートは怒っている証拠だった。

「街で、、、目の前でイザベラが倒れたんだ。具合が悪そうだったから、ベンチに座らせて休ませていたら、、、」



*****



「母が病気なんです。薬代を作りたくて、1人でこちらに来ました。私の住んでいた所より、ずっと都会で仕事もたくさんあると思ったんです。でもなかなか仕事は見つからないし、田舎に1人で残してきた母も心配で、、、」

リオールは心配になった、イザベラは儚げで、可憐で美しい。こんなに弱っていては、誰かに騙されてしまうかも知れない。

「僕の屋敷に来るかい?仕事が見つかるまで住むと良いよ、家賃を負担するのも大変でしょう」

「そんな、、、初めてお会いしたばかりの方に、ご迷惑をお掛け出来ません」 

すっと、俯いて涙を流す。

「良いんだよ。部屋もたくさんあるし、君1人くらい大丈夫。食事も準備するから、君の納得出来る仕事を探すと良い。もし、迷惑で無ければ、お母様もこちらに呼んでも構わないよ」 

「本当によろしいんですか?」

イザベラはリオールの手を取る。

「でも、、、」

悲しい顔をして俯いて

「母は重い病で、こちらに来る事が出来ません。もし、ご負担で無ければ、私だけお世話になっても、、、」

そう言うと、最後は上目遣いで瞳を潤ませる。

 リオールはイザベラに好意を持った。母親思いの優しい娘だ。華奢な指先は、ギュッと握ったら折れてしまいそうだ。それなのに、魅惑的な身体のライン。リオールは恋に落ちたかの様だった。


(うん、リオ、騙されてるね。この街では求人がたくさんあるし、選り好みしなければすぐに働けるよ。それに、そもそも病気の母を1人田舎に残してくるなんて、現実的ではないよ。どうして気づかないかな、、、)


 スチュアートは、どうしたもんかと考えた。

(イザベラの目的は何だ?金か?宝石か?それとも美術品、、、もしくは、リオと結婚して全てを手に入れるとか、、、?どちらにしても、騙されているのはわかる。俺以外の人間がリオを騙すのは腹立たしい。こいつを傷付けても良いのは、俺だけだからな、、、)

ふぅ、、、とため息をく。

「イザベラに惚れたの?」  

「惚れたなんて、そんな!綺麗だな、とは思ったけど、、、」

「じゃあ、これから惚れるんだ」

「ななななな、なんて事を!」

スチュアートはにっこり笑う。

「綺麗な女性を綺麗だと思っただけだよ!僕には他に好きな人がいるんだ!」

「ふぅ〜ん。リオ、好きな人がいるんだ、、、」

リオールは

(しまった!)

と思った。スチュアートに知られると馬鹿にされるから、今まで1度も話した事が無かったのに、失敗した。

「リオの好きな人って、だぁれ?」

「い、言わないよ?」

「言わないんだ、、、」

すっと、前に出る。リオールの肩がビクッと跳ねる。スチュアートが静かに移動して、リオールの横に座る。

「リオ?」

背もたれに手を掛けて、リオールに迫る。2人掛けのソファは大き目に作ってあり、リオールはわずかに後ろに下がった。

「リーオ、、、」

「言わないよ」

スチュアートがリオに寄る。

「言わないの?」

「言わない」

「俺とお前の仲なのに?」

「、、、」

リオールが涙目になって来た。可哀想だから、ここまでにするか。スッと身体を引く。

「わかった、もう聞かないよ、ごめんね?」

取り敢えず、今日はね。


 リオールはホッとした。



 スチュアートはリオールの部屋を出ると、イザベラの部屋へ向かった。廊下を誰かが歩いている。

(こんな時間に?)

と思い、気付かれない様に後を追う。案の定、イザベラの部屋へ向かっている様だ。それは最近雇ったばかりのボーイだった。彼はワインと食べ物の入った籠を下げ、イザベラの部屋をノックした。中からイザベラが出て来て、熱い抱擁をした後、2人で部屋の中に入って行った。


 スチュアートは倉庫に行き、ワインの数を数えた、1本足りない。他にも足りないものが少しあり、数を控えておいた。明日の朝には、イザベラの部屋からシーツの洗濯が出るかもしれない。メイドに確認する様にしなくては、、、。



 翌日、洗濯メイドに確認をした。シーツ洗濯はイザベラの部屋からでは無く、ボーイの部屋から出ていた。朝、倉庫をもう一度確認した所、昨晩からの変化は無い。昨日のワインは一般的な物だが、中には高価なワインもある。ボーイとイザベラに好き勝手に触られたく無い。ボーイがワインを選んだ際、ラベルの向きを直さなかったのか、横を向いているラベルもあった。スチュアートは、1本1本向きを直し、整えていく。



 朝の食事の準備が整い、リオールとイザベラを呼びに行く。先にリオールの部屋に寄り、次にイザベラの部屋をノックする。イザベラは薄く化粧をしていた。食べ物に困る程金が無いと言っていたのに、化粧品を買う金はあるのかと内心毒付き

「イザベラ様、お食事の準備が整いました」

と声を掛ける。

「はい」

と、しおらしい声が聞こえて扉が開く。



*****



 ボーイとイザベラは毎晩逢瀬を重ねていた。その度に倉庫から何本かワインが無くなり、最近ではチーズやベーコン、ソーセージ、ツマミになるものまで数が合わなくなってきた、その上、イザベラは外出する事が無いので仕事も見つからないままだった。



*****



 リオールが仕事から戻ると、スチュアートから話しがあると声を掛けられた。

「イザベラを追い出した?大丈夫なの?」

「はい、イザベラ様は数ヶ月前に雇ったボーイと結婚しておりました」

リオールは現実味が無くて聞き返した。

「結婚?」 

「はい、そうでございます」

「へえ、、、」 

「数週間前、イザベラ様のお部屋にボーイが入って行くところをお見掛けしました。ボーイがノックをするとイザベラ様がお迎えして、熱い抱擁を重ねておりました。ボーイは籠に少しの食料とワインを入れていた様で、その晩すぐに在庫をチェック致しました。その日から毎日倉庫を確認した所、これだけの物が盗まれておりました」

と言ってリスト一覧を渡した。

「ワインの空き瓶や食料品のゴミ等がボーイの部屋からたくさん見つかりましたので、今朝、ボーイには辞めて頂きました」

「イザベラさんは?一緒に飲食したとは言え、病気のお母さんの事とか大丈夫なの」

「イザベラ様のご両親はすでに他界しておりました。ボーイと結婚していたので、そちらから調べる事が出来たのですが、田舎にいらっしゃると言うお話しは嘘でございます」

「、、、」

「イザベラ様とボーイは毎晩、夫婦の営みがあった様で、洗濯メイドからシーツの洗濯の報告と、掃除担当のメイドからも報告がありました。屋敷内の風紀上の問題から、イザベラ様にも退去して頂きました」

「そうですか、、、」 


 一緒に食事を取っていた時のイザベラからは想像出来なかった。恥ずかしそうに俯く姿は愛らしかった。休日に一緒に庭でお茶会をした時も、コロコロと笑い、少女の様だった。恋心が全く無いわけではなかった。リオの好きな人はスチュアートだったから、結婚は決して望めない。もし、縁があるなら、イザベラの様な女性もステキだと思った。



「はぁ、、、」

ため息が出る。

「わかりました。イザベラさんの部屋とボーイに与えていた部屋の掃除をお願いします。この一覧表の金額は彼等に請求したのですか?」

「もちろんでございます」

「彼等には払えないでしょう?こちらで僕の勉強代だと思えば、、、」

「リオ」

リオールはスチュアートの顔を見た。

「そんな優しさはいらないよ。彼等は犯罪行為を犯したんだ。罪は償わせないといけない」

「でも、、、」

「イザベラに病気のお母さんは居なかった」

「そうだったね、、、」

「仕事だって、街にはたくさん求人があるんだ。ちゃんと働けば、返せない額では無いよ」

「僕が屋敷に呼んだのがいけなかったのかな?」

スチュアートは、そっとリオールを両手を握った。

「そんな事無いよ」

と慰める。


 イザベラがいなくなった事が悲しいのか、イザベラに騙されたのが悲しいのかわからない。何が理由なのか、リオールには理解できなかった。ただ、自分が情けなかった。仕事もいつもスチュアートが助けてくれている。自分では頑張っているつもりでも、必ず見落としがあったり、ミスをする。スチュアートは、それにすぐ気付きフォローをしてくれる。

(僕はいつもダメだ、、、) 

リオールは自分が情け無くて涙が溢れた。廊下を歩きながら、涙を拭う。



「あの、スチュアート様」

メイドの1人が声を掛けて来た。

「はい」

「イザベラ様の事、、、やり過ぎではありませんか?」

「何故ですか?」

「先ほど、リオール様が」

廊下で涙を拭っていたのを見たそうだ。

「イザベラ様は、何をされたんですか?。リオール様はイザベラ様がいなくなって、寂しいのでは無いですか?」

(イザベラがいなくなって淋しい?イザベラの事が好きになったのか?私はやり過ぎてしまったのだろうか、、、)

スチュアートはメイドやボーイ達に、イザベラとあのボーイの関係については話さなかった。イザベラはリオールが連れて来た女性だったし、あのイメージからは程遠かった、しかも屋敷から居なくなる人間だ、敢えて話す必要は無いと判断したのだった。

(いや、リオールは他に好きな人がいると言っていた、、、。好きな相手はイザベラでは無いはずだ)



*****



 スチュアートは珍しく、リオールにココアを入れた。子供の頃によく2人で飲んでいた飲み物だった。

「ココアだ、、、。懐かしい」

「大丈夫でございますか?」

「、、、」

「イザベラ様がいらっしゃらなくなって、リオール様がお淋しそうだと、メイドが言っておりました」

「そうだね、少し淋しいかも、、、。女性が1人いると、場が華やかになるからね」

「涙の原因はイザベラ様ですか?」

「、、、違うよ。、、、ココアのお代わりを貰ってもいいかな?スチュアートも一緒に飲もう、、、」

「畏まりました、是非ご一緒に」



「どうぞ、リオール様」

スチュアートがココアのお代わりを置く。

「スチュアートも座って」

「ありがとうございます」

リオールがココアを一口飲む。先程のココアより少し甘くて、マシュマロが入っている。

「はぁ、美味しい」

スチュアートは微笑む。リオールは子供の頃、勉強で疲れたり、イヤな事があると少し甘味の強い、マシュマロ入りのココアを飲みたがっていた。

「僕は情けないね」

スチュアートは静かに聴いた。

「いつも君に助けられている。今回の事もそうだし、今までも色々助けて貰っている。なかなか一人前になれないんだ」

「リオール様のお手伝いをするのが私の仕事です」

「そうだね、、、」

ココアを見つめながら考える。

「僕って、必要かな?」

「?」

「君が居れば、全て上手く行く様な気がする」

「そんな事はございません。リオール様がいなければ困ります」

「ふふ、ありがとう。でも、僕はいつも失敗ばかりなんだ。きっと、僕がいなくても何も変わらない。むしろ、僕がいない方が、何もかもが順調に進むと思うよ」

「リオール様」

「僕、ここから出て行こうかな?」

「、、、リオ」

スチュアートが幼馴染に戻る。

「お前1人じゃ生きていけないだろ?」

「やってみないとわからないよ」

「好きな人の所に行くのか?彼女を呼んで結婚すれば良いじゃないか」

スチュアートは自分の言葉に傷付いた。

(リオが結婚して、この屋敷に住む、、、)

「好きな人はいるけど、どうにもならないんだ」

リオールが眉を寄せながら微笑む。

「相手が結婚しているのか?」

「違う」

「身分が違い過ぎる?」

「違う」

「小さな子供とか?」

「違う」

「じゃあ、妖精とか」

「違うよ」

クスリと笑う。

「その女性が病気で余命が短い?」

「、、、結婚しても、子供が出来ない、、、」

「病気なのか?」 

「違う」

「すごく、お年寄り、、、」

「違うよ。、、、はぁ、、、」

リオールはため息をく。

「この話しはもう、お終い。とにかく、僕は僕の必要価値がわからないって事だよ」

「リオ、、、」

「スチュアートは何でも出来る。僕は、君がいないと何も出来ない。ただそれだけ。だから、僕なんて必要無いのかな?って考えちゃうんだ」



*****



「おはようございます。リオール様」

リオールの部屋のドアをノックしながら、声を掛ける。

「、、、」

「リオール様?」

もう一度ノック。

返事が無い。

「失礼致します」

ノブを回し、ドアを開ける。窓に近づき、カーテンを開ける。振り向いてベッドの中を確認する。いない。

「リオ?」

部屋の中を見回す。変わった所は無い。ただ、リオールがいない。

(え?)

 スチュアートはリオールが部屋を出ると大抵気づく。スチュアートの部屋はリオールの隣だ。リオールが結婚すれば、もう少し離れた部屋になるだろうが、今は、何かあればすぐ駆け付けられる様に1番近い部屋になっている。

 リオールがドアを開ける音から始まり、ドアを静かに閉める音、歩き出す足音。リオールだけの音の大きさ、タイミング、早さ。必ずわかるのに、今日は気付かなかった。昨日の夜は珍しく、リオールの事を考えていたから、眠りに着いた時間が遅かった。だから、いつもより眠りが深かったのだろうか。取り敢えず、部屋を出る。食堂に行き、リオールが少し遅れる事を話す。廊下を歩きながら、窓の外を見る。リオールがいないか探しながら、早歩きになっていく。

 昨日、あんな話をしたからイヤな予感がする。どうにもならない恋をしている様だった。自分に自信を無くしていた。ここから出て行こうと考えていた。リオールが消えた、、、。

 スチュアートがリオールより優秀なのは仕方が無い事だ。幼い頃からリオールの執事になる為に勉強をして来た。リオールが困らない様に、どんな事にも対応出来る様に。その為には、リオール以上にこの屋敷の事に詳しくなりたいと思っていたし、リオールの仕事の事に関しても同じだ。それが、リオールを傷付けたのか、、、。

 リオールの事なら何でも知っていると思っていたが、好きな女性がいる事は知らなかった。一体いつ、どこで出会った女性だろう。相手がわかれば、今すぐにでもリオールの存在を確認しに行けるのに、、、。

 それにしても切ない。結婚しても子供が出来ないとは、彼女には重い病の経験があるのだろうか、、、。

 いや、もし本当にそうであっても、本人同士に結婚の意思があれば、結婚すれば良いと思う。何年も子供が出来ない家庭はあるのだ。リオールは次男で4番目の子供だ。万が一子供が出来なくても、、、。でも、結婚したら、やはり愛する相手の子供は欲しくなるのだろう、、、。スチュアートはリオールの部屋の中で立ち尽くしていた。



*****



 夢を見ている。自分でもはっきり夢だとわかった。夢の中で、リオールは妊娠していた。お腹の中にスチュアートの子供がいる。春の温かい日差しの中で、少し膨らんだお腹を摩る。スチュアートはいない。夢の中でスチュアートがここに居ればいいのにと思う。夢の中なら、何を思っても自由だ。



*****



コト、、、ン



 どこかで音がした。スチュアートは静かに足を前に運ぶ。大きな備え付けのウォーキングクローゼットを開けるとリオールがいた。薄手の布団を持ち込み、丸くなって、布団にくるまっている。スチュアートはその場に膝を着き、リオールの頬を撫でる。

「スチュアート、おかえり、、、僕達の赤ちゃん、、(が)、、、」

リオールは寝言を言って再び眠りに着いた。



(んんんんん?)

スチュアートは混乱した。

(今、リオはなんて言った?「おかえり、僕達の赤ちゃん」?、「おかえり、僕の赤ちゃん」?一体どんな夢を見ているんだ!)

真っ赤になりながら、リオールを抱き上げる。そのまま、ベッドに連れて行き、そっと寝かせる。リオールの目尻に涙が乾いた跡があった。

 リオールはスチュアートに抱き上げられた瞬間目が覚めた。しかし、タイミングを失ったまま目を開ける事が出来ない。夢の事を思い出し、じわじわ顔が赤くなっていく。


「リオ、起きてるんだろ?」

いつもより、少し低い声のスチュアート。

「、、、はい」

「何でクローゼットで寝てたの?」

「子供の頃、よく2人でクローゼットで寝てたなぁって思い出したら、入りたくなっちゃって、、、」

「赤ちゃんって何?」

「う、、、」

(僕、寝言言いました、、、)

「夢です」

「え?俺達の赤ちゃんが欲しいの?」

「そっちの夢じゃないよ!今、見てた夢で、スチュアートの赤ちゃんを妊娠してたんだよ!」

リオールは両手で顔を隠し俯いた。

「ふーん、俺の赤ちゃんが欲しいのかと思った」

スチュアートは意地悪くニヤリと笑った。リオールは揶揄われているのがわかった。どーせ、スチュアートに僕の気持ちはわからない。

「そうだよ。スチュアートの赤ちゃんが欲しいくらい、スチュアートが好きなんだよ、、、。だから、あんな夢を見ちゃったんだ、きっと」

スチュアートのふざけた顔が少し真剣な顔になる。

(だから、「子供が出来ない」なのか、、、)

「スチュアートの赤ちゃんが欲しいって考えた事は無かったけど、赤ちゃんが出来ない事は考えたよ。だから、僕のどうにもならない好きな人は、スチュアートなんだ」

スチュアートは言葉が出なかった。リオールはスチュアートの気持ちに気づいていた。こんな事を言われても、スチュアートは困るだろう。

「ごめんね、もう忘れていいよ。朝食を食べに行こう、、、」

リオールは上手く笑えていればいいなと思う。


*****



 それから、リオールは2度とその話しをしなかった。まるで、何事も無かったかの様に、動揺とか淋しさとかを隠して今まで通りに過ごした。


 変わったのはスチュアートの方だった。何度も何度も自問した。子供の頃からリオールだけだったし、何をしてもリオールの為を考えて行動していた。リオールに何かあればすぐ、駆けつけたし、誰かに傷付けられたら、後で、必ずやり返した。今までは、自分の仕える主人だからだと思っていた。本当にそれだけだろうか、、、。


 リオールが見た夢。俺の子供を妊娠した夢だと言った。ただの夢の話しなのに、想像しただけで顔が赤くなる。リオールが

「スチュアート、僕、スチュアートの子供が出来たんだ、、、」

と、告白する所を想像する。ヤバい、、、全然平気だ、、、。むしろ嬉しい位、、、。

(え?待って?俺、リオールの事好きだったの?)

スチュアートは考えれば考える程、自分の気持ちがわからなくなった。



*****



「私にお見合いですか?」

「うん、相手のお嬢さんがスチュアートを気に入ってね。是非、お見合いだけでもとお話があったんだ」

「いつですか?」

「明後日のお昼過ぎにね」

「わかりました。必ずお伺い致します」

「、、僕も、お見合いしようかな、、、」

リオールは今まで結婚に興味が無かった。まだ若いし、仕事も半人前だったから、家族を持つ自信が無かった。でも、スチュアートもお見合いする事になったし、スチュアートを諦める為にもお見合いをした方が良いかも知れない。



*****



 スチュアートはお見合い相手を見て

(綺麗な人だな)

と思った。しかし、トキメキはない。お見合いだから、そんなもんかと思いながら相手を観察する。

(この人と、一生一緒に過ごす。子供を作って、育てる。2人で歳を取って行く、、、。ピンと来ないな)

スチュアートは試しにリオールで想像する、、、。自然に口元が上がる。



*****



結局、スチュアートは結婚を断った。お見合い後、一度も相手の事を思い出さなかったからだ。リオールに

「お相手に返事をするから、スチュアートの気持ちを聞かせて」

と言われてから、漸くお見合いした事を思い出した程だった。リオールは、内心安堵した。



*****



「僕のお見合い相手、、、」

つい、口に出ていた。スチュアートの眉毛がピクリと上がる。リオールはそっと指先で口を隠す。

「リオール様のお見合いがどうされたんですか?」にっこり笑いながら、食後の紅茶を出す。リオールは視線だけをスチュアートに向けて、ため息をく。

「僕のお見合い相手、全然見つからないんだ、、、」

スチュアートは、ブフッと笑った。

「ひどい、、、」

「失礼致しました」

(すまない、リオ。俺の所為だ)

スチュアートは執事仲間に、好きな相手を諦める為に、リオールがお見合い相手を探していると話した。何人かに話しただけだか、それは軽い噂になり、もちろん執事達の旦那様の耳にも入っていた。令嬢達に身上書を送っても、色良い返事が無いのはそう言う事だった。

「僕、やっぱりダメなんだな、、、」

リオールが落ち込み始めた。

「どうしよう。このまま、お見合い相手が見つからなかったら、僕、一生独り身で、誰にも頼る事が出来ないのかな?独りぼっちで死ぬのかな?そんなのイヤだ、、、。ずっと独りぼっちなんて、淋し過ぎるよ。誰かいないかな、誰でも良いから、僕と結婚しても良いって言う人。、、、お金?お金で買う?お金払ってお見合いして貰おうかな、、、」

「リオ」

(リオが負のループに入り込んでる、、、オモシロ、、。独り言、全部聞こえてるんだけど、、、)

「僕が不細工だからかな?それとも背が足りない?性格、、、性格がダメかな?頼りなさ過ぎるとか、、、)

「リオ、、、。リオール」

不意にリオールがスチュアートの顔を見る。

「スチュアート、僕、人間としてダメみたい、、、」

(リオ、涙目になって可愛い)

「スチュアート、、、笑ってる、、、僕のこと、馬鹿にしてる?」

リオールは、急に椅子から立ち上がり、ナフキンを投げるとずんずん歩き出した。

「リオ?」

スチュアートは、リオールを追いかける。リオールは自室に戻ると、ベッドから薄い布団を引っ張り出し、胸に抱えてクローゼットの扉を思いっきり開けた。

「入って来ないでよっ!」

スチュアートはクローゼットの扉に手を掛けて閉めさせない。

「スチュアートは何でも出来るから、僕の事馬鹿にしてるんでしょっ?仕事も完璧だし、女性にもモテるし、僕よりずっとすごいから!僕なんてつまらない男だと思ってるんでしょっ?」

「そんな事無いよ」

リオールはスチュアートを睨む。

「嘘ばっかり、、、。僕の執事じゃなければ、君だって一家の主人あるじになれるのに!」

「リオール」

リオールは、はっとして自分言葉に冷静になった。

「、、、ごめんなさい。言い過ぎた。、、、1人になりたいから、出てってくれる?」

「1人はイヤだって言ってた」

「うん?」

「ずっと独りぼっちなんて、淋し過ぎるって、さっき、、、」

「うん」

「俺も一緒に入っていい?」

「、、、い、、いいけど?」

スチュアートは一度その場を離れ、リオールの部屋の鍵を閉めて戻って来た。

クローゼットの中で、リオールはもう一度謝った。

「スチュアート、ごめんね。八つ当たりしちゃった」

クローゼットの中は暗い。隙間から少し明かりが入って来る。リオールは膝を抱えて落ち込む。

「やっぱり、僕はダメだ、、、。自分の感情も抑えられないし、人の気持ちを考えられない、、、」

スチュアートはリオの横に座る。2人で薄い布団を掛けて、小さな声で話しをする。

「落ち着いた?」

「うん。ありがとう」

「リオは1人じゃないよ。俺はずっとリオの執事だし、メイドやボーイ達もいるじゃないか。リオの兄弟だっている」

「そうだけど、僕の家族が欲しいよ。執事は本当の家族じゃないでしょ?」

「本当の家族?」

「相手の事を考えて、大切にして、行動する。守るべき人達、、、かな?僕の中ではそれが家族」

「俺は、リオの事、考えて、大切にして、行動しているし、守っていると思うけど、、、」

「、、、本当だ、、、。でも、手を繋いだり、キ、キスしたりとかは、、、しないでしょ?」

「した事無い」

「愛し合ってたら、手を繋ぎたいとか、抱きしめたいって気持ちもあると思うし」

「リオは、俺と手を繋いだり、抱きしめたいの?」

「、、、好きだからね」

リオは困った顔をして答えた。

「ごめんね。スチュアートはイヤでしょ?」

「別に、イヤじゃ無い」

「え?」 

ちゅっとほっぺたにキスをする。

「うん、イヤじゃ無い」

「スチュアート、好きでも無い人にそんな事すると、誤解されるよ」

「うん」

スチュアートがリオの手を握る。その手を自分の頬に寄せる。リオールは自分の心臓が早くなって行くのがわかる。スチュアートがウットリと、そして考える様に目を閉じる。リオールは恥ずかしくなって、手を引く。スチュアートはリオールが離れて行くのが淋しくて、もう一度引き寄せた。リオールの身体に腕を回し、抱きしめる。身体中にリオールの体温と匂いが流れ込む。

「ああ、、、。そうだね、執事はこんな事しないかも、、、。こんな気持ちにはならないね」

「こんな気持ち?」

「ずっとこうしていたい、、、って気持ち」

リオールは、今、この時間を大切にしようと思った。主人と執事では、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけだ。恋人にもなれないし、結婚も出来ない。今だけ、こうして、、、後は、元に戻らないといけないから。



*****



「リオール様」

廊下で簡単な打ち合わせが終わって、書類に目を通していると名前を呼ばれた。顔を上げると、スチュアートがほっぺたにキスをする。

「な、何してるの???」

頬を抑えながら、真っ赤になる。

「誰もいないから、つい」

「誰かに見られてたらどーするの?!」

「え?交際宣言する」

「ダメでしょ?」

リオールは怒りながら、次の仕事へ向かう。

(主人と執事の関係で交際宣言って何なの?無理でしょ!最近のスチュアートはちょっとおかしいよ。今まで、一度もそんな事しなかったのに。一体どうしたんだよ)

廊下を歩きながらブツブツ呟くリオール。



*****



1日の仕事が終わり、軽く食事を摂った後、リオールは翌日に備えてベッドに入ろうと思っていた。ノックが鳴り

「リオ」

と、呼ばれる。ドアまで歩きノブを回す。そっと扉を開けるとスチュアートが立っていた。

「入っても?」

「どうぞ」


ソファに掛けるように勧め

「何か飲む?」

と聞く

「俺が作るよ。何がいい?。温かい飲みもの?ジュース、それともアルコール?」

「じゃあ、ココアとラム酒でお願い」

スチュアートは一度部屋を出て、2人分のラム酒入りのココアを持って来た。

「熱いから気をつけて」

「ありがとう」

2人でゆっくり、ココアを飲んだ。

「話しがあるんでしょ?」

「昼間の交際宣言の件」

リオールはココアを飲みながらスチュアートを見た。

「どうして、交際宣言したらいけないのか考えてた」

「、、、その前に交際してないよね?」

「、、、お互い好きだから、付き合うべきじゃないか?」

「えっ、、、と、僕達、主人と執事の関係だよね。それなのに、付き合うなんて、、、」

(出来るわけない、、、)

「どうしてダメなんだ?」

「え?、、、」

(改めて聞かれると、僕だってわからないよ、、、)

「上司と部下だから?」

「仕事をしていたら、誰とだって上司と部下だよ」

「周りの風紀を見出すから?」

「それから?」

「それがルールだから?」

「他には?」

「主人と執事が付き合うなんて、聞いた事が無いから、、、」

「後は?」

「もう!そんなの僕にはわからないよ!」

「俺も、、、。俺もどうして付き合ったらいけないのかわからない。だから、ずっと考えて答えが出ない。それで、リオに聞きに来た」

「、、、」

「リオは俺が好きだろ?」

「うん」

「俺も好きだよ」

「、、、」

「それなのに、離れ離れでいるの?」

「だって、だって、、、」

スチュアートがリオールの手を握る。リオールの身体がピクリと反応して手を引いた。スチュアートの手が宙に浮き、行き場を無くす。

「ごめん、俺が悪かった」

もう何もしないと言うように、両手を上げて謝る。

「俺、執事辞めようかな」

パッとリオールがスチュアートを見る。

(そんな事言わないで、、、)

リオールの瞳が、そう言ってるみたいだった。

「俺が執事辞めたら、付き合ってくれる?」

「そんなの良くないよ。今まで執事になる為にたくさん勉強して来たんでしょ?ずっと頑張って来て、みんなスチュアートの事頼りにしてるのに」

「でも、執事だとリオと付き合えない」

「、、、」

リオールは何を考えたらいいのかわからなくなり、ただ視線を落とした。

「やっぱり、この間お見合いした人と結婚すれば良かったかな?」

リオールがスチュアートの顔を見る。

「それで、子供を作ってリオの子供の執事に育てるの、どうかな?」

「イヤだ、、、そんなのイヤだよ!」

リオールの顔が歪む。

「スチュアートは意地悪だ!何でそんな事言うの!」

リオールの瞳から涙が溢れそうになり、ソファから立ち上がる。

「リオ?」

ベッドに向かい、枕で涙を拭く、その枕を思い切り振り回しベッドに叩きつける。感情が爆発してどうしたらいいかわからない。どんどん涙が溢れて止まらない。リオールは枕に顔を押し付け泣いた。

スチュアートはベッドに乗る。

「こんなに、俺の事が好きなのに、俺を捨てるの?」

リオールは頭を振る。

「リオ」

頭を撫でる。

「リオ」

手を引いて、抱き寄せる。ベッドの上で2人で横になる。リオールはスチュアートの心臓の音を聞いて、少し落ち着いて来た。呼吸がゆっくりになり、目を瞑るとウトウトしそうになる。スチュアートの胸の中は落ち着く。

「リオ、、、落ち着いた?」

「うん」

「もう、付き合ってって言わない」

「、、、ごめんね、、、」

リオールは自分の気持ちもわからず謝った。

「執事が必要なら、誰か探すよ、、、」

リオールがスチュアートの服を握る。

「優秀な執事ならたくさんいるよ。俺が交渉して、来てもらってもいい」

リオールの手に力が入る。

(スチュアートがいなくなるのはイヤだ)

「でもさ、俺と結婚して、妻として執事の仕事をこなすって言うのはどうかな?」

リオールはポカンとした。

「それでも執事が必要なら、誰か探すけど?」

「え?、、、っと、ごめん。もう一度わかりやすく言ってくれる?」

「俺が執事を辞めて、リオと結婚して、妻としてリオをサポートするの。対外的に執事が必要なら誰か探すけど、俺、優秀だから執事いらないと思うけど」

「そんな事出来るの?」

「出来るよ」

スチュアートだって、本当の所わからない。でも、リオールが承諾してくれれば、どんな事をしても実現させようと思う。嘘でも実現すれば本当になる。

「、、、そうなんだ。出来るんだ、、、」

リオールはそのまま、スチュアートの胸の中でゆっくり考える。くふふっと笑うと安心して眠れた。



*****



 それからスチュアートはまず、屋敷内の人間を懐柔した。まぁ、今までの日々の努力のお陰で大きな問題は無かった。

「え!スチュアート様はリオール様がお好きだったんですか?」

「今までは、みんなに隠していたんだけどね、やっぱりリオを誰にも取られたくないんだ」

「きゃー!応援します!何でも相談して下さい」


「え!リオール様と結婚したい?賛成です。リオール様は人が良過ぎて、いつ、詐欺に遭うか心配していたんです。スチュアート様と結婚するなら、安泰です。執事を辞めて、リオール様のサポート?仕事の内容に変化は無い?最高じゃ無いですか!」


「え?リオール様とスチュアート様の結婚についてどう思うかですか?、、、(リオール様の枕の下に、謎のお守りが入ってるのよね、、、しかも、スチュアート様の名前が書いてあったから、、、)スチュアート様はリオール様がお好きなんですか?大好き?それなら問題ないと思いますけど。反対する人?いないわけでは無いと思いますが、私は賛成ですよ。リオール様は放って置けないけど、優しいし、スチュアート様は尊敬してますから」


 中にはもちろん難色を示す者もいる。しかし、屋敷で働く大半のメイドやボーイは賛成していた為、空気は悪くない。最初は反対していたメイドやボーイも、リオールとスチュアートが2人でいる姿を見てるうちに、考え方を変えてくれた。それでも納得がいかない、ほんの一握りの人達は辞めていった。


 スチュアートの実家では、父親も母親も反対しなかった。説得するのが大変かと思っていたが、意外と信頼されていたらしく、2人で決めたならと賛成してくれた。


 問題はリオールの両親かと思いきや、大賛成された。リオールは少し頼りないから、スチュアートが何時迄も側にいてくれるなら安心だと両手で握手までされ、涙も流された。えぇっと、逆にちょっと心配になる位なんだけど、、、。


 色々と根回しをして、リオールの両親を説得した夜。スチュアートはリオールの部屋に行く。

「みんなを説得したよ」

「え?」

シャンパンを開けながら

「時間は掛かったけど、リオの心配事は解消したよ」

グラスにシャンパンを注ぐ。炭酸の泡を見ながら

「結婚しよう、リオ」

リオールは、スチュアートからグラスを受け取り固まった。

「嘘でしょ?」

スチュアートはリオの顔を見る。結婚したくないのか?

「スチュアート、みんなを説得したの?」

「屋敷内の人間も、俺とリオの両親もみんな賛成してくれた」

「ホントに?」

「ホントに」

「ホントにホント?」

スチュアートはくすりと笑う。

「ホントにホント」

「結婚式まではこれを」

スチュアートはポケットから、昔リオールが市井で買った、"好きな人と結婚出来る指輪"をリオールの小指に嵌める。

「うわぁ!懐かしい」

「今度の休みに、一緒に結婚指輪を選びに行こう」

「スチュアート、ありがとう」

リオールはスチュアートに抱きつき、頬にキスした。

「出来れば、こっちにして」

と言って、スチュアートが唇に触れる。

リオールは顔を真っ赤にして唇にキスをする。




ハッピーエンドになりました。2人が幸せな結婚生活を送れます様に、、、

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