EP③ コトリと千代
「ついにコトリも召喚士かぁーー!頑張ったね!」
「ありがとう!やっとだよー!千代には一番に報告したくて、、」
「そんなに急がなく良かったのに、、」
厳密にいえば二番目なのだけれど、、
契約を終えた私は家に帰ってまずお母さんに報告した。『あら!よかった!素敵素敵!』とお母さんに言われたが、まだこの感動を誰かと共有したくて、唯一の親友、宮尾千代の家に来ていた。唯一と言っても、他に同年代の子がいない訳ではない。他人と関わるのが苦手な私が、唯一心を許して話せる相手が千代しかいないというだけの話しだ。
「契約っていうからもっと難しそうなイメージだったけど、案外サックリと終わったよ」
「干支神だもんね!いいなぁー!私の家は土竜を祀ってる家系だから、、モグラだよ、、」
「モグラ可愛いじゃん!千代も契約したの?」
「それはね、、私も16歳だし、、」
召喚士が暮らすこのサマニエ村では、16歳になると神様と契約ができる。できるというと任意的なことかと思うが、それは半ば強制的に16歳になったら契約をすることが義務付けられている。いつ魔王に襲われ、滅びるかわからないので、契約の秘伝を守る観点から、16歳になったら、それぞれの家で祀っている神様と契約することになっている。それぞれの家系で祀っている神様が違うので、契約の仕方もそれぞれ違う。契約の話をすると千代は恥ずかしそうに、置かれている飲み物の入ったグラスをクルクルとまわし、モジモジしている。
「契約の仕方…どんなのだった?」
「守秘義務があるのでノーコメントで!」
「えぇーーー!いいじゃん!!、、私達親友でしょ⁉」
「親友でもダメなものはダメ!!絶対に教えません!!!」
「もーー!千代は頑固だなぁー!」
「コトリが軽率なんだよ!」
頑なに教えてくれない千代をこれ以上攻めても意味がなさそうなので、話題を変えることにした。
「じゃあさ!お互いの神様を召喚して見せ合いっこしない?」
「シール交換ぐらいの軽いノリで言わないでよ」
「でもでもさ!これから共闘したりすることもあるだろうし、そこで初めましてってするよりは今顔合わせしてた方が何かと良くない?」
私は千代の顔にぐっと近づき、澄んだ瞳(自称)で千代の顔を覗き込む。心底めんどくさいという表情をした千代が、持っていたグラスのお茶を一口飲み、溜め息まじりにつぶやく。
「顔合わせって、、お見合いじゃないんだから、、」
「ダメ、、かな?」
千代は悩んだ顔を浮かべたが、少しして、小さくうなずく。
「はぁ…わかったよ」
まさかの承諾!嬉しすぎる!私は気持ちを抑えきれず思わず千代に抱き着いた。
「やったぁー!ありがとう!!」
「召喚してもいいけど、、あとで後悔しないでよ!」
「しないよしないよ!、、、え?、なんか問題あるの?」
抱き着いた私の肩を千代がかかえて私と距離を取る。神妙な面持ちで千代が語る。
「私のモグラは、、ちょっと癖があるから、、コトリの寅さんはどうなの?」
「うーん。。正直まだ良く知らない」
「、、それでよく見せ合いっことか言えたね。それ寅さんに怒られないの?」
「たぶん寅は怒らないと思う、、ます」
「思うます?…本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!」
多分大丈夫だよね?でも虎の姿で召喚されたらどうしよう、、家の中じゃまずいよね、、
「ねぇ千代!もしかしら寅が虎で召喚されることもあるから外でトライしてもいい?」
「トラトラうるさいな、、いいよ!じゃあ村の外まで行こうか」
「了解!」
私達は、村外れの森まで行くことにした。