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ダンジョン

作者: ネモネモ。

暗いダンジョンの中、俺はひたすらに走っていた。背後から響く怪物の咆哮が空気を震わせる。逃げるしかない。ボロボロの体を引きずって岩陰に身を潜めると、足音が遠ざかっていくのを聞き、ようやく安堵の息をついた。


ここはダンジョンの57階。仲間とは、26階で一つ目の巨人との戦闘中に転移トラップにかかってはぐれた。リーダーの強気な戦士、いい加減だけど頼れる斥候、気弱だが腕の立つ僧侶の少女。俺を含めた4人パーティーだった。


こんな深層まで来たのは初めてだ。俺は攻撃魔法を扱う魔術師だが、この階層の敵には魔法の効果も薄い。魔力の残数はあと5回分。荷物の中身は、回復薬が3本、状態異常回復薬が1本、非常食が少し、水も心もとない。そして魔力石が2個。心底、絶望的な状況だと思った。


とにかく、下の階層を目指そう。仲間の安否も気になる。俺がいなくなった時、敵は追い詰められていたが、あのまま無事だったかはわからない。このダンジョンは100階あると言われているが、今まで30階が限界だった。57階なんて、完全に未知の領域だ。


少し休んでから、光源代わりの魔力石を杖に取り付け、歩き出す。怪物との遭遇は即死を意味する。神経を尖らせながら進んでいると、大きな扉の前に出た。扉の前には竜のような怪物が睨みを利かせている。あの奥には宝があるのだろう。だが、命には代えられない。引き返して別の道を探す。


その時、3匹の狼型の怪物に出くわした。即座に火炎魔法を放つがかわされ、炎の壁も無視して突っ込んでくる。最終手段として魔力石に魔力を込め、緊急脱出のテレポートを発動。最初に隠れていた岩陰に戻った。


肩で息をしながら、無駄に魔法と魔力石を使ったことを悔やむ。リーダーがいれば、もっと冷静な判断ができたはずだ。強気で暑苦しい彼だが、やはり頼れる存在だったと痛感する。


足音がまた近づいてくる。身を潜め、怪物が通り過ぎるのを待った。静寂を確認し、別の道を探して進む。最後の魔力石を杖に装着し、慎重に歩を進めるが、疲労は限界に近い。


「ふぅ」とため息をついた瞬間、カチッと音がして床が崩れた。気づいた時には穴に落ちていた。


激しい衝撃と共に地面に叩きつけられ、呻く。暗闇の中で杖を探し、手探りで拾う。足に激痛が走った。どうやら負傷したらしい。回復薬を飲みなんとか動けるようにはなるが、完全には癒えない。


仲間の僧侶なら、この程度の怪我ならすぐに直してくれただろう。彼女も無事でいてくれればいい。

そもそも斥候のあいつがいてくれたらこんな落とし穴にはかからなかっただろう。


杖を握り、岩陰に腰を下ろす。状況は最悪。だが、まだ終わりではない。俺は、まだ死んでいない。



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