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5.通行人⑤

28歳のソフィア視点です!

5話完結のつもりが6話完結になりそうです!


私が19歳の誕生日を迎えた日、オリバーはいつも道り教会へと迎えに来てくれた。

そんなオリバーは「誕生日おめでとう。」と照れくさそうに私に伝えると、綺麗に包装されたプレゼントを渡してくれた。

私がずっと気になっていた白のレースのワンピース。

私がずっと欲しがっていたことに気づいてくれたんだね。

私は嬉しくて嬉しくてオリバーに思わず抱き着いた。

オリバーはそんな私を愛おしそうに抱きしめ返してくれたね。


私が20歳の誕生日を迎えた日、オリバーはディナーに誘ってくれた。

私より早く20歳を迎えていたオリバーだけど、初めてのお酒は私と飲みたいと言ってずっとお酒を飲むのを我慢してくれたね。

だからその日は2人とも初めてお酒を飲んだ。

意外にもオリバーはお酒が弱くて、酔った姿が可愛くて面白かったなあ。


私が21歳の誕生日を迎えた日、オリバーは苦手なサプライズをしてくれた。

オリバーが教会へ迎えに来てくれたと思ったら、遠いところに住んでいてなかなか会えていなかった私のお母さんお父さん、それからニイアまで!

あ、ニイアとは実は19歳の頃に色々あって、いつに間にか親友と呼べるほど仲良くなったんだ。

ムーアさんとアンさんにもサプライズすることを伝えていてくれたみたいで、みんなが盛大に私の誕生日を祝ってくれた。

本当に楽しくて、嬉しくて、オリバーにたくさん「ありがとう。」って伝えた。


私が22歳の誕生日を迎えた日、これまたオリバーが苦手なサプライズをしてくれた。

教会まで迎えに来てくれた帰り道にオリバーは「ソフィアを家まで送ると、遠回りなんだよな~。」と愚痴を言い始めた。

私は少しムッとしてしまって、「それならもう送ってくれなくていいよ。」と言ってしまった。

「うん、もう送らない。」とオリバーに言われたときは、心がズーンと重くなった。

そんな曇ってるどころか雨が降り始めてもおかしくない私の表情を見たオリバーが「一緒の家に帰るなら送る必要なんてないからね。」と言って、私の手のひらに冷たく固い小さな鍵をそっと優しく置いた。

「一緒に住もう、ソフィア。」そう言われて、私たちのワクワクドキドキな同棲生活が始まった。


私が23歳の誕生日を迎えた日、オリバーが私の大好物のハンバーグを作ってくれた。

普段からよく手料理を振舞ってくれるオリバー。

ハンバーグももちろん絶品で、私は心どころか胃袋でさえもオリバーに掴まれてしまったようだ。

極めつけには食後のケーキ!

ケーキはちゃっかり自分の大好物のチーズケーキを作っていて、シェフのおちゃめ加減も味も見た目も100点満点のチーズケーキだった。


私が24歳の誕生日を迎えた日、オリバーが旅行へ連れて行ってくれた。

私たちが住んでいる場所も決して田舎ではないけれど、初めて行った大都市には色々びっくりした。

大通りは溢れかえるほどの人達が歩いていて、綺麗で丈夫な建築物。

1番驚いたのは教会かな。本当に神様が住んでいそうな迫力ある建物に少し怖いとも思った。

人が多いからと私の手をずっと離さずにいてくれたオリバー。

ただ人ごみに慣れていないから、何度も人にぶつかりそうになって、何度も謝っていた。

頼もしくて可愛い私の自慢の彼氏。



私が25歳の誕生日を迎えた日、その日は私の人生で紛れもなく1番幸せで仕方がなかった日。


「絶対幸せにするから俺と結婚してほしい。」


私とオリバーが恋人になった思い出の場所で更に素敵な思い出を追加してくれた。

私は相変わらず涙でグチャグチャな顔で必死に頷いた。

そんな私を見て、オリバーも少し涙目になりながら、私の左手にダイヤモンドの婚約指輪をつけてくれたね。

オリバーが泣きそうになっているのを見たのは本当に初めてだった。

小さいころから一緒にいるけど、オリバーが泣いているところを見たことがない。

婚約指輪をつけてくれた後、オリバーは優しく私を抱きしめながらキスをしてくれた。

その時目を閉じていたけど、頬に感じた水滴はきっと私の涙ではなくて、オリバーの涙だったと思う。

オリバーが涙を流すほど私のことを想っていてくれたことが嬉しくて、私はまた泣いてしまった。

愛してるよ、オリバー。あなたは私を絶対に幸せにすると言ってくれたけど、もうこれ以上ないくらい幸せな場合はどうしたらいい?

とりあえず、私を幸せにしようだなんて思わなくていい。

ただ私の側にずっといるとそう誓ってくれれば。



私が26歳の誕生日を迎えた日、私とオリバーの結婚式をひらいた。

人生でこんなに幸せな日がいくつもあってもいいのかな?

病めるときも、健やかなるときも…そんな誓いを神様にしたけれど、そんな誓いはなんの意味も持たないと私は思う。全てを愛す必要も真心を尽くす必要もないわ。

辛いときは辛いと言って、逃げ出したいときは逃げて。

私を一生愛さなくてもいい、でも私が一生オリバーを愛することだけは許してほしい。


大切な人たちが嬉しそうに私たちの結婚を祝ってくれる、夢にもみたような光景だ。

ニイアにスピーチを頼んだのだけれど、見たことないくらい大号泣!

私が思わず抱きしめると、「綺麗よ、ソフィア…。本当におめでとう。」と言って、抱きしめ返してくれた。

結婚式で絶対泣かない!と心に誓っていたけど、思わず泣いちゃった。


私が27歳の誕生日を迎えた日、オリバーは私に手紙とプレゼントをくれた。

プレゼントはとっても可愛いエプロン。

仕事の時につけていたエプロンが汚れていることに気づいて、プレゼントしてくれたみたい。

こんな可愛いエプロン使うのがとてももったいなく感じる。

…まあ、有難く使わせてもらうんだけど!

そして、手紙。

なんだかんだ長い間一緒にいるけれど、オリバーから手紙を貰ったのは初めてだった。

読んだ瞬間、胸がいっぱいになって思わず泣いてしまった。

オリバーは何回私をうれし泣きさせれば、気が済むの?

何度も書き直した跡があるその手紙はどんな素敵なプレゼントよりも価値あるものに感じる。


そして私が28歳の誕生日を迎える前日、オリバーは死んだ。

殉職だった。

その日、いくら待ってもオリバーは教会へ迎えに来なかった。

もう日が完全に沈んだころ、ボロボロになったニイアが涙を流しながら教会へと訪れた。

「ソフィア……オリバー先輩が魔族に…魔族に殺された…。」

そう言ってその場に蹲り、声を上げて泣きだすニイア。

私を心配して退勤時間になっても一緒にいてくれたムーアさんとアンさんは、口に手を当てて、静かに涙を流した。


私は………………。


「嫌…いやいやいやいや!!!!!!!!!!!!!!!」


教会に響きわたる声でそう叫んだのは覚えている。

そこからどうやって家まで帰ったのかは覚えていない。

いつの間にか私はオリバーと一緒に住む家で、ただ茫然と立ち尽くしていた。

オリバーがいないととても広く感じる部屋に怒りがわいてきた。

私は棚に置いてあったもの全てを怒りに任せて、床へと落とす。

その時、箱に入っていた1通の手紙に目がとまった。

去年の誕生日にオリバーがくれた手紙だ。

私はその手紙を急いで拾い上げ、優しく抱きしめる。


「ごめん…ごめんねオリバー。」


乱暴に扱ったことを心から謝罪し、その場に座り込む。

何度も何度も読み返したオリバーからの手紙。

私は手紙を開き、小さな声で読み上げた。


_____________________________________________

愛する妻ソフィアへ


誕生日おめでとう。

ソフィアの誕生日が近くなると、俺は毎年ソワソワする。

大好きなソフィアを喜ばせる絶好のチャンスだから。

ずっと前にソフィアがどうすれば喜んでくれるか分かるって言ったの覚えてる?

あれは嘘でもなければ、誇張でもないよ。

これからもソフィアは何十回とある誕生日を俺と一緒に過ごすことになるだろう。

俺はその度にソフィアを喜ばせようと夢中になる。


文字にすると少し照れくさいから手紙は苦手なんだ。

でもソフィアはきっと喜んでくれると思ったら、書かずにはいられなかった。

愛してるよ、ソフィア。


自慢の夫オリバーより


_____________________________________________


「オリバー…、私の誕生日がきちゃうよ…!!あながいないのに…!!誕生日が来ちゃうよ…!」


私はその後、声を出して泣き続けた。

泣いても泣いても悲しみが消えることはなく、ただ空しく私の泣き声が部屋に響くだけだった。


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