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流転の國 vol.4 〜エルフの里〜  作者: 川口冬至夜


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流転の國 エルフの里㉑

仲良しトリオ(仮)によるほのぼの回です。

「姫、ようやく落ち着いたというか、いつもの日常が戻ってきた感じですね」

今日は特に難しい議題もなく、早々に解散となった後の玉座の間。

ここに残っているのは、例によってマヤリィ、ジェイ、ルーリの三人。

「そうね。エルフ達を預かっている間は落ち着かなかったけれど、移住先が見つかって本当によかったわ」

「はい。その通りにございます、マヤリィ様」

マヤリィの言葉を聞いたルーリが頷く。

流転の城に保護されたエルフの民は、桜色の都の南部に位置するイミグ地方に土地を与えられ、移住した全員が都の国民として認められた。今、彼等は桜色の都の法律に守られつつ、自分達の力で村を治めている。つまり、現在の『エルフの村』は完全に流転の國の手を離れている。

「後は全て桜色の都がどうにかしてくれるでしょう。…もう、異文化交流は疲れた」

「姫、本当にお疲れ様でした。…シェルも然り、エルフ種は頑固なところがあるから扱いづらかったりするんですよね。やっぱり種族が違うと何考えてるんだか分からないっていうか…。あ、ルーリのことは人間だと思ってるよ」

普段の姿はどう見ても人間だが、ルーリは悪魔種である。

「とってつけたようにフォローしなくても、お前と私が違う種族であることくらい分かってるよ。気にするな」

そう言いつつ、マヤリィと違う種族なのは寂しいと思うルーリ。

しかし、マヤリィはそんな彼女を抱き寄せて言う。

「悪魔と人間なんて似たようなものよ。それに、私がルーリを愛していることに変わりはないわ。…ねぇ、そうでしょう?」

「はっ!私もマヤリィ様のことを愛しております…!有り難きお言葉を賜りまして、私は幸せにございます!!」

ルーリはそう言って嬉しそうに笑う。

その美しい笑顔を見て、マヤリィは甘えるような声で訊ねる。

「…ルーリ、今夜は貴女の部屋に行ってもいいかしら?」

「はっ!勿論でございます。ルーリの部屋はいつでもマヤリィ様をお待ち申し上げております!!」

「ふふ、決まりね♪」

と、そこへ、

「あの…ここには僕もいるんですけど、もしかして『忘却』されてます?」

ジェイが二人に呼びかける。

「…………?」

「えっ、本当に忘れられてた?」

「冗談よ。本気にしないで頂戴、ジェイ」

首を傾げていたマヤリィはそう言って微笑むと、

「では、そろそろ行きましょうか」

唐突に指を鳴らす。『転移』を発動させたのだ。


「それにしても、どうして歩いてこなかったんですか?」

ここは潮風の吹くカフェテラス。

先ほどの『転移』の目的地である。

「いきなり空間転移するとは思いませんでした」

ジェイは不思議そうな顔をするが、

「歩くのが面倒になったのよ。疲れちゃったし。でもコーヒー飲みたいし」

マヤリィが怠惰なだけだった。

「畏れながら、マヤリィ様。そろそろ…ということは最初からこちらに来る予定だったのでございますか?」

「ええ。久しぶりに貴方達とゆっくりしたいと思ったのよ。…ようやく、城も静かになったことだしね」

まもなく、メイドが三人分のコーヒーを持ってきた。

「クッキーも持ってきて頂戴。あと、マドレーヌとフィナンシェも。人数分よ」

「はっ!ご主人様直々にご注文を賜り、恐悦至極に存じます。すぐにご用意致しますので、お待ち下さいませ」

ミノリと同じメイド服を着た黒髪の娘が足早に去っていく。

「マヤリィ様、彼女は人間のようでございますね。ミノリに少し似ておりました」

普段はメイドの姿など気にもしないルーリだが、先ほどの種族の話を思い出したらしい。

「そうね。ミノリもそうだし、メイドは人間種が多いらしいわ。ミノリはあまり他種族が好きではないみたいだから、メイド志望のエルフの娘達がうまくやっているかどうか少し気になるわね」

それを聞いて、ルーリは西の森を探索した後のミノリとリスの会話を思い出す。

(確か、マヤリィ様がキノコアレルギーだと仰った時のことだったよな…)

ルーリは回想する。vol.1参照。

「畏れながら、ご主人様。物を知らぬ愚かな私にお教え下さいませ。あれるぎー…とはどのようなものなのでしょうか?」

リスが不思議そうな顔で聞くと、主の横に控えていたミノリが顔をしかめて言う。

「エルフはアレルギーという言葉も知らないほど健康的な種族なの?知らない言葉を恥ずかしげもなくご主人様にお訊ねするなど言語道断。ミノリが代わりに答えるわ。…いい?アレルギーというのはね…」

主が何も言わないうちにミノリが説明する。

「……これで、物を知らない愚かな貴女にもアレルギーの恐ろしさが分かったかしら?万が一、ご主人様がアナフィラキシーショックを起こされたらと考えるだけでミノリは胸が痛いわ。とにかく、キノコは駄目。絶対に採っては駄目!分かった!?」

ジェイがいない為、いつにも増して側近としての責任を重く感じているミノリは、厳しい言葉をリスに浴びせた。

「も、申し訳ございません!アレルギーとは、それほどまでに恐ろしいものなのですね…!ご主人様、無知な私をお許し下さいませ!ミノリ様、教えて頂き感謝致します!」

回想終わり。

(あの時のミノリは怖かったな…。いや、あの時だけに限らないか)

そういえば、『エルフの民保護作戦』序盤でシャドーレの手伝いをしたバイオ(元天使)に対しても、ミノリは厳しく接していた。バイオは罪人なので、相応の態度を取られても仕方ないと言えば仕方ないのだが。

「…それにしても、姫。今日は随分と注文が多いですね。マドレーヌとか、普段召し上がらないですよね?」

姫がお菓子を持ってくるよう命じたことをジェイは不思議に思っていた。

「ええ。今日は夕方までここで過ごすつもりだから。当然、付き合ってくれるわよね?」

「はっ!勿論にございます、マヤリィ様。貴女様とこうしてカフェテラスで過ごせますこと、本当に嬉しく思います」

間髪を入れずルーリが答える。

「…ところで、マヤリィ様。まどれーぬとは、一体どのような物にございましょうか?」

ルーリには時々通じない言葉がある。

「もうすぐあのメイドが持ってきてくれるわ。きっとおいしいから、食べてご覧なさい」

「はっ!とても楽しみにございます…!」

マヤリィに対するルーリ…↑見ての通り。絶対の忠誠を誓ったご主人様。そして愛する御方。

ジェイに対するルーリ…仲間だし相棒だけど常に上から目線。うっかりしてると遊ばれる。

(ルーリのキャラ変が目まぐるしくてついていけない…)

またもや置いてけぼりにされたジェイは、黙って二人の会話を聞いていた。


「これがマドレーヌ…。とても可愛らしい形にございますね、マヤリィ様」

「ええ。私も流転の國で食べるのは初めてよ」

「僕もです、姫」

三人は並んでマドレーヌを食べ、次はクッキーに取り掛かる。

これって任務でしたっけ?

「ジェイが好きなのはどれだったかしら」

綺麗に並べられたクッキーを見てマヤリィが言う。

「姫、先に自分のを選んで下さいよ」

「だって私、優柔不断だから。なかなか決められないのよ」

マヤリィはそう言って微笑むと、二人のカップを見る。

「そろそろ、コーヒーのおかわりが必要かしら」

「はっ。すぐに持ってこさせましょう。…お姉さーん!ブレンド三つ!おかわり!」

いつものように皆の分も頼むルーリ。その声を聞いて、メイドがすぐに運んでくる。

「…ジェイって、いつも砂糖入れるよな」

「だって、苦いじゃん」

ジェイは運ばれてきたコーヒーにミルクとシュガーを入れてかき混ぜている。

「ルーリだって、ミルクは入れるだろう?」

「ああ。私はネクロと違ってブラック派じゃないからな」

そう言いながらルーリはフィナンシェに手を伸ばす。

「…とても良い香りにございますね、マヤリィ様」

「ええ、本当ね」

初めてのお菓子に興味津々のルーリを見て、マヤリィは微笑む。

「お菓子のおかわりも必要になりそうですね」

そう言いながらジェイはクッキーに手を伸ばす。

「好きな物を好きなだけ頼みなさい。私も…もう少し頂くわね」

今日は、マヤリィを挟んで久々のカフェタイム。

三人の会話は途切れることなく、午後の穏やかな時間はゆっくりと流れていくのだった。

エルフ達に関する一連の作戦とその後の移住計画ですっかり疲れちゃったマヤリィ様。

潮風の吹くカフェテラスで休憩する彼女の傍に寄り添うのは、いつだってジェイとルーリです。


世界も種族も身分も超えた仲良しトリオ。

彼等の穏やかな日常はこれからも続きます。

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