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第64話 ベルンハルトのお土産

「えーっと……その、どれがお土産なのかしら?」


 ベルンハルトの指示で、部屋の中に大量の箱が運ばれてきた。あまりの多さに、広いはずの部屋が狭く見えてしまう。


 それにこの量を運ぶのって、すごく大変よね?

 馬車の荷台に乗せて運んだんでしょうけど、きっとかなりのスペースを要したはずだわ。


 領民たち用の馬車を購入したことで、馬車自体の金額や、運用にかかる金額のことが以前より分かった。

 だからこそ、これほどの荷物を遠方から運ぶのがどれだけ大変だったかを想像してしまう。


「全てに決まっているだろう」

「……全て!?」

「ああ。ここにある全部が、ドロシーへの土産だ。開けてくれ」


 ベルンハルトに指示されたメイドたちが、恭しく箱を開ける。中に入っているのは高級そうな衣服であったり、アクセサリーであったり、小物類であったりと様々だ。

 そしてそのどれもが、とても高価な品に見える。


「……ベルンハルト様、これって」


 その中でも一際目立っているのは、真っ白のコートだ。ふわふわで、とても手触りがいい。


「もしかして、本物の毛皮?」

「ああ。温かいし、これからの季節にはいいだろう。それにドロシーには白がよく似合う」


 コートを手に取り、羽織ってみる。しっかりとした作りのコートは重さもあり、かなり温かい。

 それに加え、本物の毛皮は華やかだ。


 毛皮を使ったコートというのは、それだけで十分珍しい。それに加えて真っ白の毛皮というのは、かなり高価な品である。


「気に入ってくれたか?」


 不安げな顔でベルンハルトに見つめられる。これほどの品を受け取って、気に入らない人なんていないだろうに。


「もちろんだわ。すごく温かいもの」

「よかった。それに合う首飾りもあるんだ」


 ベルンハルトが箱の中から、大きな紅玉のついた首飾りを手にとった。紅い宝石は、白いコートによく映える。

 しかも首飾りは紅玉が華やかなだけでなく、繊細な金のチェーンも美しい。


「これと揃いのデザインの髪飾り、耳飾りも用意してある」


 特気な顔でベルンハルトが次々と土産を披露してくれたが、そのどれもが、あまりにも高価な物ばかりだ。

 もちろん、ドロシーにとって高価過ぎる、というわけではない。


「ドロシー? どうかしたか? なにか別の物がよかったか? なにか欲しい物があるなら、すぐに取り寄せよう」


 ドロシー、と心配そうな顔で見つめてくるベルンハルトは可愛くて愛おしい。これほどたくさんの物を贈ってもらえた、ということだって、当然嬉しい。


 だけどこの予算って、どこから出たのかしら!?


 子爵家の経営は、領地からの税収とベルンハルトが魔法騎士として得た報奨金から成り立っている。

 年度ごとにマンフレートが案を作り、予算を決めているわけだが、もちろん当主であるベルンハルトは自由に金を使えるはずだ。

 しかし本来その金は他のことに使う予定だったり、貯蓄分のはず。

 もちろんベルンハルトが自由に使う娯楽費もあるだろうが、それにしても、一度にこれほどの量を買うのは使い過ぎだろう。


「ドロシー?」


 でも、せっかくもらったのに、無駄遣いだわ! なんて言えないわ。

 ベルンハルト様は、わたくしが喜ぶことを期待しているはずだもの。


 妻として、夫の期待を裏切るわけにはいかない。

 それに、ドロシーが今ここでベルンハルトを責めたとしても、お金が戻ってくるわけではないのだ。


「すっごく嬉しいわ! わたくし、こんなにお土産をもらったのは初めて!」


 飛び跳ねて喜び、勢いよくベルンハルトに抱き着く。ベルンハルトも微笑んで、ドロシーの頭を優しく撫でてくれた。


「……よかった。土産を買うのは初めてだったから、いろいろと悩んでな。たくさん買えば、どれかは気に入ると思ったんだ」

「旦那様。わたくし、旦那様が用意してくれた物なら、なんだって嬉しいわ」


 どれだけ安価な物だろうと、ベルンハルトが用意してくれたというだけで嬉しい。

 心の底からそう思っているのに、ベルンハルトには上手く伝わらないのだろうか。


「……だが、ドロシーにみすぼらしい物をあげるわけにはいかない。ただでさえ、俺みたいな男と結婚して可哀想だ、なんて世間からは思われているだろう」

「わたくしはそんなこと思っていませんわ!」


 分かっている、と頬を撫でられる。真剣な眼差しに射抜かれて、何も言えなくなってしまった。


「だが俺は、周りからお前がそう思われるだけで耐えられないんだ。ドロシーの旦那として、情けない真似はできない」


 周りからの目とか、情けないだとか、わたくしにとってはそんなもの、銅貨一枚の価値すらないのに。


 なんとなくもやもやしてしまう。


「……それと、ドロシー。今回はドロシーに合わせて、自分の物も買ったんだ。俺には派手過ぎると思ったが、デトルフにすすめられてな……」

「ベルンハルト様の!?」


 口ぶりから察するに、おそらくベルンハルト用の衣服や装飾品も購入したのだろう。日頃、そういった物には関心がないのに。


 デトルフさんのおかげかしら!?

 着飾ったベルンハルト様なんて、見たいに決まってるじゃない!


「早く着替えてくださいませ! ほら! 早く! わたくし、着飾ったベルンハルト様を早く見たいわ!」

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