悲しみとレモンの果実
花は水を得て咲くそう。だから悲しみの向こうで花が咲くなんて言われるのだろうか。人間は植物じゃなくて脳があるから、悲しみの雨を浴び続けていると壊れて腐ってしまう。生きものだからまた生まれ直しても、もとの自分とは異なるし、その過程の実りも痛みでできた仄暗いレモンの果実。人間が植物になってコールドスリープしている間にも、他人という人間がその実を捥いでいってしまう。次の自分に繋がるべく隠れた種ごと。そして自分のからあげという人生に添えたり添えなかったり絞ったり絞らなかったりして、いいだの悪いだの感想ともにビールと泡沫に消えてゆく。悪酔いは祈りを捥いだはてのかすかな呪縛。
さあ今晩の食卓に、あなたはレモンを添えますか?