1話 明星の始まり
明けない夜はない。まさに言葉通り必ず朝は、光はやってくるものなのだ。
じゃあ逆に、夜の前には何があるのか?それは朝だ。このお話は夜の前にあるお話、絶望が訪れる前のお話である。これを明星記とする…これを後世に残すことを確約して欲しい 作者 南波 凛斗
「明星さま!」
その男子は甲高い声で起こされた。きっとお着きのものだったのだろう。色白で細身で高身長、だが決して力負けはしなさそうな見た目の彼は立野 明星。今年で20歳を迎える若き立野家の領主だ。
明星はこの国の四王家のひとつ(四王家とは中川家、佐賀家、中山家、八坂家)、佐賀家の領主で今の国のトップである帥帝、佐賀 陵水に仕えるいわば「武士」のような存在だ。
とはいっても立野家はもともと中山家の分家、それなりに地位も高い。
「明星様にお客様が来られています!」
正装に着替え、応接室で待っていると、男性とその子(9歳くらい)の2人がやってきた。
「明星殿にご挨拶申し上げます。私、中山家の中山 有と申します。本日はお忙しい中、お時間を作っていただき感謝申し上げます。」
「同じく中山家の奨真と申します。」
やはり四王家の中山家、子供への教育も行き渡っている。
「こちらこそ、遠方よりお越し頂き、感謝申し上げます。有様と奨真様に最大限のおもてなしを致します故、どうぞおくつろぎくださいませ。」
今日来るという話を聞いて準備をしっかりしてきたのだ。…誤った対応をしたら立野家が滅びかねない。
「本日は我が弟、春我と話でここまで来ました。」
有が普通の話し方に戻った。どうやら彼の弟、中山 春我がトラブルに巻き込まれているらしい。
「春我が副総代を務めている金代組で親子騒動が起き、まさに混沌とした状況になっているのです。どうか、総代の、喜郷様を守っては頂けないだろうか。」
…これはとんでもない大騒動に巻き込まれそうだ。