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第九話 殺人未遂騒動とその処置(2)

 ヴェルクスの発言を聞き、気が遠くなった。いくらなんでもやりすぎだ。いや、やりすぎなんて言葉で片付くものではない。


 なんとしてでも、お父さんを止めなくちゃ。


「…どこ行くの?安静にしててって言ったよね?」


ヴェルクスから、声がかかる。


「そんな場合じゃなくなったから。おかしいって!なんでそんな簡単に人を殺そうとするの?二人ともその話を聞いて、おかしいって思わなかったの?」


「でも、ルシアを先に殺そうとしたのはあっちだよ」


「私は、生きてるよ。

 ねえ、アルブレヒトお兄ちゃんだって、おかしいって思うよね?私、お父様に直談判してくる。ヴェルクスをお願い」


 アルブレヒトお兄ちゃんは、戸惑っているように見えた。


「……お兄ちゃん?」


「…俺が言ったところでどうにもならなかったよ。ルシアが何を言ったって無駄だよ。お母さんがいなきゃ、解決しない」


「…お母様?じゃあ、お母様を呼んでこよう!遠くってどこにいるの?」


「無理だルシア。それはできない…」


「間に合わないってこと?」


「…………、ああ」


「だからって、諦めるの?私は止めに行ってくるから」


 ヴェルクスに掴まれた腕を払いお父さんの部屋に駆け出す。声は聞こえるが、彼が追ってこないとこを見るともしかしたら、アルブレヒトお兄ちゃんが止めてくれたのかもしれない。


 深呼吸をし、扉の前にいる人に「お父様にお話があります。会わせていただけないでしょうか」と声をかける。


 その人が、中にいる人たちに声をかけ、入っていいと許可が降りた。


 中には、書類の山が作られている机を前に座っているお父さんと、その周りに控えている男が2人いた。


「お忙しい中、失礼します」


 お父さんは書類からこちらへ視線を移した。


「……、目が覚めたか」


「はい。お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした」


「…いい。それで、用事はなんだ」


「この一件について、処刑される人がいると聞きました。それを取りやめてもらうようお願いにきました」


「なら、話すことはない。部屋に戻れ」


 お父さんは、目線を書類に戻した。

 お兄ちゃんもこんな風に返されたのだろうか。でも、意見を変えてもらうまでここを動くわけにはいかない。


「いくらなんでも、処刑はやりすぎです」


「……戻れと言っているのが聞こえないのか」


 鋭い視線で睨まれ、少したじろぐ。


 私じゃやっぱり、状況を変えられないのかもしれない…。


 どうして、メイドたちの嫌がらせにうまく対応できなかったんだろう。ここまで悪化させない方法だってきっとあったはず。食事だって、途中で食べない選択肢だってあった。ここまでの事態には私にも非があった。

 それに私はアンナをはじめとしたメイドたちのことが嫌いなわけでも憎いわけでもないし、料理人たちなら尚更、そんな感情抱かなかった。ましてや、死んで欲しいなんて思ったこともない。

 ここでお父さんを止められなかったら、私はここで逃げ出したことを一生後悔するだろう。


 ここで下がっちゃだめだよ。自分を叱責する。


「それに関わってもない人までクビにするのはどうかと思います」


「……いいから、帰れと言っている」


「確かに、お父様の娘である私に毒を盛り、それに罰がないと示しがつかないのもわかります。それに、ここで示しておかないと、今度はお父様やお兄様方に盛っても罰が軽くなるだろうと言う人が出てくるという考えもわかりますし、罰をなくせと言うのではありません。

 でも、罪のない人まで捌くのは、過剰な罰を与えるのは、立場を悪くします。

 だから、」


お父さんは、私の言葉を遮り、そばに控えていた男に一言。


「…ルシアを摘み出せ」


男は、私を外に出そうとする。抵抗しようにも力では絶対叶わない。


「…お母様も、お父様のやり方に反対だったと思います」


 先ほどのお兄ちゃんの話を思い出し、告げた。以前に、お母さんの話は他の人にはしてはいけないと言われていたが、もしかしたら、何か変わるかもしれないと言う賭けだった。


 が、やっぱりお兄ちゃんの言うことは聞いておくべきだったかもしれない。空気が凍りついたのを感じ、思わず、ひぇっ…と、声が漏れた。



「……………………」


「……………………」


「…………、ダイアナが反対すると?」


「………は、い」


「…会ったことのないお前に何がわかる」


 お兄ちゃんから聞いたお母さんのエピソードや性格、そして、先ほどお母さんがいれば解決という言葉。そこから、お母さんは、お父さんが下した処刑の判断に反対すると思う。しかし、お兄ちゃんの名前を出して、お兄ちゃんの立場が悪くなってしまっても困る。何かないかと考えると、お父さんとの初対面の光景が思い浮かんだ。


「…お父様は、私と初めて会った際に、無謀さはお母様譲りとおっしゃいました。お母様のことをよく存じ上げておりませんが、もしかしたら、以前にお母様も似たような行動をしたことがあるのかもしれないと思いました。仮にそれが合ってれば、そのような行動をしたお母様は、お父様を止めるはずです」


「……ダイアナは、どういう処罰を与える?」


「わかりません。ただ処刑はしないと思います」


「……………………いいだろう。アンナの死刑は取りやめ、牢獄に入れることとしよう。それに、他のものは程度によって、解雇か謹慎処分を下す」


「ほんとですか…!?ありがとうございます!」


「…それと謹慎はお前もだ。2週間は部屋から出るな」

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