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第八話 殺人未遂騒動とその処置(1)

 眩しい光が差し込み、目を開く。普段は綺麗だと思うが、天井のシャンデリアが妙にギラギラしている気がした。


 しかし、目を開けたはいいものの、視界も頭もぼんやりとしていて、今の状況を理解することができなかった。


「……!…………!!」

 

 ぼんやりと先程みた夢の内容を思い出した。違和感を感じる。1回目の人生と似ているのに、ところどころ記憶が異なっているのだ。

 例えば、1回目の人生で村を出たタイミングだったり、理由だったり。

 例えば、旅の途中に巻き込まれたトラブルだったり。

 例えば、アルカイドとの会話の内容や彼の態度だったり。


「………!!……シア!!!」


 そして、違和感を大きく感じたのは死に際についてだ。

 私は刺し殺されたのではなく、ギルベルトさんと同じような症状で死んでいったはずだ。それと、私はアルカイドの好意を受け取れなかった。好きって伝えられたが、もうすぐ死ぬって決まっているのに、応えられるはずがない。だから、一緒に生きるという約束はできなかったし、愛しているという言葉も言っているはずがない。

 

 それでも、さっきの夢の出来事は、本当に体験したのではないか、と思えてくる。


「……ルシア!」


 名前を呼ばれた気がして、そちらに目線を向けるとぼんやりと銀髪が映り込む。


「……アル…?、……あ、ごめん、なさい。間違えちゃった、みたい」

 

 先程まで見ていた光景に釣られてしまった。しかし、目の前にいたのは、アルカイドじゃなくてヴェルクスだった。


「……いいよ、それより身体は大丈夫?」


 言われてみたら、なんとなくだるい気がする。それに、頭も痛いような……


「…っ!?」


 突然、頭がかち割れそうな痛みに切り替わる。


 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い


 痛みに頭を抑えながら耐えていると、視界が切り替わった。


ーーーーーーーーーー

 白い空間に私とぽっんと人が一人。

 しかし、不思議なことにその人は私の姿をしていた。なので、正確には、白い空間に、私が二人いた。


 もう一人の私が口を開く。



 ルシア。

 今世でアルカイドと会うことは叶います。


 しかし、もし、アルカイドが、ーーーーーーで、ーーーーーならば、再び、エイオラは滅ぶことになります。今世は、ーーーーー。

それを阻止するにはーーーをーーーーーーーーーーのです。


 忠告しましょう。

 前世からの因縁のある相手には、気をつけなさい。特にーーーーーー、と、マリーテア。



 そして、ふぅ。と彼女が息をつくと、私の頭を撫でた。

 すると、先程までの頭痛が鳴り止む。


 でも、躍起になりすぎて今世を蔑ろにしてはダメよ。ルシア・シュバルヴォルフとしての人生を、それを通しての縁を大切にね。


 それと、呪いのことだけど。

 今回はちょっと不完全みたい。絶対、完成させてはダメよ。


 そう言い終わると、もう一人の私は光り輝き消えていった。


 そして、見ている景色も元へと戻った。


ーーーーーーーーーー


「………はぁ、……はぁ。」


何度か深呼吸をし、やっと、落ち着いて呼吸ができた気がする。夢のことに先程の光景のこと、考えることはたくさんある。しかし、まずは、目の前のヴェルクスが最優先だ。心配そうに狼狽えていたヴェルクスに声をかける。


「…もー、大丈夫、だから。心配かけて、ごめんね。」


「…ほんとに、ほんとにもう大丈夫?無理はしてない?」


「してない、してない。どこも、痛いところはないよ」


「なら、いいんだけど」


そうは言ってもまだ心配そうな表情をしていた。元気付けようと、


「ほんとに大丈夫よ?なんなら、今からこの家の庭を走り回ることだって」


 できるよ!と、言おうとしたら、食い気味で怒られてしまった。


「そんなの、絶対だめだからね。大人しく安静にしててよ。

 ちゃんとわかってるの?まだ完全に解毒できたわけじゃないし、死にかけたんだから」


 そして、医者が、ルシアが起きる可能性はほとんどないって、そのまま息を引き取るだろうって、言ってて…、とヴェルクスは、目に涙を溜めた。


「えっ!?あ、ちょ、な、泣かないで〜、ごめんね、ごめんなさい!私が軽率だった!ほら、私は生きてるよ!」


 ほら、暖かいでしょ?とヴェルクスの手を取る。

 体調を崩して倒れただけだと思っていたので、解毒とか、死にかけたとか、色々聞きたいことはあるけど、聞ける状態ではないと思う。それは、後にしよう。



 そこで、とんとんと、ノックが鳴り響いた。


「俺が見てくるよ」


 ヴェルクスがドアを開けて、見えたのはアルブレヒトお兄ちゃんだった。


 こちらを見て、「よかった…!目が覚めたんだね!」と駆け寄ってきた。


「…どこか辛いところはないかい?」


「ううん、平気!心配かけちゃってごめんなさい」


 そう答えた私に不満気にヴェルクスが付け加えた。


「平気って言ったって、全然大丈夫そうには見えないんだけど。さっきだって、すごく苦しそうだった…」


「確かにまだ顔色が良くないね。

それに、ルシア。心配はかけていいんだよ。俺はルシアのお兄ちゃんだし、ヴェルクスは友達なんでしょ?心配する権利はあるよ。ルシアが無理する方がダメだからね」


「…はーい」


 そこまで無理してないんだけどなと思いながらも、渋々返事をすると、お兄ちゃんは、よくできました。と頭をぽんぽんしてくれた。


 それから、どうして私が倒れるに至ったのか、二人は説明してくれた。


 お父さんたちとのディナーの際に私の食事だけ含まれていたようだった。その後に倒れたのだから、そこが理由で納得できる。そして、首謀者は、メイドのアンナ。犯行に至ったきっかけについては、家族に興味を持たれてないはずの私がお父さんからディナーに誘ってもらったことと、私を閉じ込めたことによってアルブレヒトお兄ちゃんに謹慎処分を出されたことが気に食わなかったと話していたらしい。


 それから、ヴェルクスから、信じられない発言が出た。アルブレヒトお兄ちゃんは、私に言うつもりはなかったらしく、ヴェルクスの発言を止めようとしたが。


 私の周りにいたメイドと執事、料理人達は明日の昼に処刑されること、そして、お父さんが信頼できる何人かを除きこの家で働いている人を追い出すことを、お父さんが決めたらしい。

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