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第三十七話 長い誕生日前夜(1)

「アルブレヒトお兄ちゃん!お誕生日おめでとう〜!と言っても1週間もはやいんだけどね!」

 

 1週間後、アルブレヒトお兄ちゃんは16歳となり成人の扱いとなる。

 しかし、明日からの一週間は誕生日パーティーと成人の儀式があるらしい。貴族、しかも公爵の身分となれば成人するのも大変なのかもしれない。ただでさえ最近忙しそうにしていたので、倒れないか心配になってしまう。なんとなく疲れているような気がする。隈もすごいし。


「これ、誕生日プレゼントだよ!」


 パーティーにも儀式にも参加できないので、当日は会えないかもしれない。お祝いは今日のうちにめいっぱいしておこうと思う。

 誕生日プレゼントは、刺繍したハンカチと先程焼き上がったケーキだ。私が稼いだお金はないので、せめて手作りものも贈ってみたくて頑張った。



「お兄ちゃん…?」

 あんまり反応ないアルブレヒトお兄ちゃんにますます心配になってくる。

「疲れてる?明日からも忙しいし、今日はゆっくり休んだ方がいいかも」

「大丈夫だよ、ルシアのおかげで疲れなんて吹っ飛んじゃったよ!それよりプレゼントありがとう。開けてもいいかな?」

「どうぞ!」

 どういう反応するかな?とわくわくしながらお兄ちゃんを見つめる。

「わっ、ハンカチだ。この刺繍もしかして、ルシアが縫ったの?」

「うん!」

「上手にできてるよ、一生の宝物にするね!そうだ、父さんに頼んで家宝に登録してもらおうかな!」

「そこまでじゃないよ〜」

「いや!こんな嬉しいことはないよ!」

「もー大袈裟なんだから!」

 お兄ちゃんは、じーっとハンカチを見つめてから、私を勢いよく抱きしめた。

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!お手紙書いたの!読んでもいい?」

「えっ、手紙までくれるの?じゃあお願いするよ」


  ――――――――

 アルブレヒトお兄ちゃんへ

 


 お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!


 お兄ちゃんはいつも優しくて、かっこよくて、頼りになって、自慢のお兄ちゃんです!

 アルブレヒトお兄ちゃんが私のお兄ちゃんでよかったなぁって思います!

 いっつも優しくしてくれて、私のことを気にかけてくれてありがとうございます!

 


 あとは、今までしてもらって嬉しかったことを書こうと思います。

 

 お兄ちゃんに

 ぎゅーとしてもらうこと

 撫でてもらうこと

 名前を呼んでもらうこと

 近くにおいでと言ってもらえること

 遊びに連れてってもらえたこと

 お洋服を選んでもらったこと、買ってもらったこと

 可愛って言ってもらえたこと

 

 他にもいろいろ嬉しかったことはたくさんあります。

 いつもありがとうございます!


 お兄ちゃん大好きです!!


 いつもお兄ちゃんに助けてもらってばかりの私だけど、お兄ちゃんに何かがあったら今度は私が力になれるように頑張りたいです!その時は頼ってください!


 16歳としての一年、いや、これからずっとお兄ちゃんの人生が幸福に満たされていることを祈ってます!


 これからもよろしくお願いします!

 

           ルシアより

  ――――――――――


「ルシア…、」

          

 アルブレヒトお兄ちゃんから発せられた声は暗いものだった。もしかして、まずいことでも書いちゃったのかな、と不安になり手をおろおろさせる。


 ぎゅーとされている力が強くなった。


「ごめんね…、いいお兄ちゃんになれなくて、俺なんかが兄で…」


「えっ?お兄ちゃん、どうしたの?わたし、お兄ちゃんがお兄ちゃんでよかったんだよ!!いいお兄ちゃんだよ!!わたしが保証するから!!」


「違うんだよ、ルシア、違うんだ、ごめんな」


「違うの?じゃあ、違くても大丈夫だよ…!私からみたらいいお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんからしたら違うってことかな?でも、それでも、私はお兄ちゃんのこと大好きだから、気にしなくて大丈夫だよ!」


「ルシアにそう言ってもらえるような人じゃない……」


「プレッシャーになること言っちゃった?それはごめんなさい…、お兄ちゃんがどういう人だっていいよ!幸せになってくれれば嬉しいけど!あ、えっと、これもプレッシャーになるかな?えっと、じゃあ、生きてさえいてくれればOKだよ!」


「……、ルシア、愛してる、ごめん、それでもどうしてもお前が憎いんだよ」


 えっ?憎い……?

 お兄ちゃんの顔を見上げようと思ったが、それは叶わなかった。首筋に痛みが走り、私は気を失った。


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