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第十話 2週間の謹慎、ルシアの思案

 お父さんに直談判しに行ったあとから、必要な用事を除いて、2週間、部屋の外へ出るのを禁じられた。


 理由はお父さんの言葉に反対したことだとされたが、実際はそれは表面上に過ぎないと思う。後から考えると、ディナーの約束をすっぽかしてしまった際にも初対面の時に対峙した際にも罰をもらったことはなかったのに、ここで受けるのも少し不自然に感じた。

 数回しか会ったことがないからかもしれないが、怖かったり、かといえば、思ったより優しかったり、よくわからない人だなぁと思う。そもそも何考えているのかもわからない。




 謹慎が始まってから1週間。私はヴェルクスとアルブレヒトお兄ちゃんとは、一度も会わなかったので、基本的に部屋に1人だった。部屋の外には、2人控えていたらしいが、

挨拶をする程度で、外に出れない私はお手洗いか風呂の時しか、彼らの顔を見なかった。


 アルブレヒトお兄ちゃんと会うのも2週間禁じられてしまったのだ。一方、ヴェルクスについては、お兄ちゃんのところに行ってくると言って部屋を出て行ってしまった。この前のことを怒っているのだろうか。てっきり一緒に過ごすと思っていたから、少し寂しい。まあ、お兄ちゃんなら、ヴェルクスのことを悪いようにはしないと思うのでそこは安心だと思う。



 

 誰もいない部屋で、最近気になったことをまとめたノートを開く。

 



〜〜〜〜〜


*夢について

 

・実際と異なる出来事について。

 夢だから、実際と異なっても不思議じゃないのは分かる。でも、どこか、夢と言って片付けてはいけない気がする。


 →実際にあったと、仮定してみる?

 思い出せないけど、何回か前の人生として経験してるのかもしれない。でも、1回目の人生と同じような人生を歩んだのは、夢の内容だけ。何か、法則とか理由があればいいのだけど…


・ギルベルトさんについて。

夢の中で私を殺したのはきっとギルベルトさん…、でも、どうして?1回目の時は村を出たあと一度も会っていないのに…




*もう1人の私が言ったこと


・もう1人の私について。

 声や外見は、私みたいだったけど、彼女は誰?

 それに、何か私が知らないことをたくさん知ってるみたい。


・エイオラの滅亡について。

 再びということは一回滅んでいるの?言い伝え通りに…?

 そして、そこにアルカイドが関係する?どんな風に?


・マリーテアについて。

 因縁の相手のマリーテア。この名前で思い出すのは、1回目の人生のギルベルトさんの奥さん。しかし、そんなに私とは関わりはなかったはず。因縁と言えるの?


・因縁の相手のもう一人。

 ここに無理矢理当てはめるとしたら、アルカイドか、ギルベルトさんが思い浮かぶけど、そんな単純なのかな?


・呪いについて。

 不完全ってどういうこと?

 確かに、お兄ちゃんの態度だったり、お父さんに反対しても殺されるどころか怪我もなかったり、今までとは少し違うのかもしれない。



*今世のこと


・アルカイドについて。

 今のところ情報なし。

 会えるとは言われたけど…、いつ?どこで?

 最終手段、黒魔術に手を出す?←使えるかわからない。それに、代償が大きすぎる



・言い伝えについて。

言い伝えの魔女にあたる人物が思い浮かばない…、言い伝えが広まっていく間に付け加わった存在なのかな?

言い伝えと違う部分も多いし(私のことも聡明とか可愛らしいとか心優しいとか盛られすぎだし…)登場人物が増えててもおかしくはない。だけど、どこか引っかかる気がする。


・謎の置物について。

 やっぱり、どこか惹かれる気がする。後でもう一回見に行こうかな?



・ディナーについて。

 あの味はなんだったのだろう?謹慎中に食べたご飯は美味しく、私、もしくはお父さんたち味覚が変だったわけではないらしいことがわかったそれに、料理人やアンナは、毒を入れただけで味をいじったわけではないらしい。毒を入れたから、味が変わったのかな?(聞いた毒の名前は、薬剤師時代に聞いたことがあった。そこまで味に影響を与えないはず)

 



〜〜〜〜〜



 他にもいくつか書き加えて、ノートを閉じた。


 …、よくわからないことだらけだなぁ。

 ついつい、ため息を溢す。何か動いていれば気も紛れるのだけど、こうも時間があると、焦りやら、不安やらが次々と浮かんでしまう。何かしなきゃいけないのに、何をすれば良いのかわからない。


 ぶんぶんと、頭を振った。焦ったって、不安がったって何も解決しない。今、できることを探そう。


 部屋の本棚から、地図を引っ張り出す。言い伝えで関係あった場所、1回目の人生で関係あった場所には、もう印がつけている。そこに、新たに夢に出てきた場所も付け加えた。

 

 アルカイドを探すのはここからかなぁ。地図を眺めつぶやく。


 探しに行くのは良いが、まずは日帰りで行ける距離からといってもトラブルに巻き込まれる可能性は、他の人たちより高いと思う。


 この前の頭痛がした時には、もう1人の私が今世でアルカイドと会えると言っていた。それを信じるとすれば、3歳の誕生日に立てた目標であるアルカイドを探し出す、それまで死なない、は大丈夫だと思う。


 ただ、まだ怪我はしてないが、今世でもすでに死にかけている。不完全だと言われていたが呪いがなくなったわけではないだろう。うっかり、手足を落としちゃったとか、目が見えなくなっちゃったとか笑えない状況が起こることもなくはない。どんな状態で再会するかは聞けなかったし…。


 うーん。捕まった時逃げたりするために催涙スプレーを作ってみるのもいいかもしれない。液体をアクセサリーに仕込んでも良いし、力を使わず、不利な場面でも相手にダメージを与えられるという圧倒的なメリットがあった。

 カプサイシンを含んでいる植物はないか頭の中で巡らせる。それに、蒸留酒とコショウも必要かなぁ。

 必要な材料や作り方を再び開いたノートに書き出していく。


 それに、ドライフルーツや乾燥野菜とか作って、非常食にするのはいいかもしれない。あと、お菓子は常に持ち歩いておこうかな。


 そういえば、この前閉じ込められた時、針金がなくて困ったんだっけ?極力お洋服にはブローチをつけておこう。


 短剣は、お父様に止められてしまったけど、ナイフくらいなら持ち歩けるかもしれない。


 何かあった時のため、といくつもの、計画を立てていく。


 一息ついた時には、いろいろおかしい装備の案を考えていた。まあ、備えあれば憂いなしっていうし、備えておいて悪いことはないよね。多分。


 ここまで考えたところで部屋にノックが響いた。


「はーい」


「ルシア様。

旦那様、アルブレヒト様、エドヴァルト様から、ルシア様へと預かり物がございます。

部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


 預かり物?と疑問を持ちながらもどうぞ、と言う言葉と共にドアを開けた。


 すると、部屋の中に運ばれたのは、ドレスやアクセサリー、花などであった。どうしていきなり、と混乱する。


「……??えっと?これらが、お父様やお兄様から私にですか?」


「はい。そのように伺っております」


そして、最後には剣が置かれた。


「えっと、こちらもですか?」


「はい。それとこちらも」

 

「あっ、はい。ありがとうございます」


「では、失礼いたします」


「届けてくださり、ありがとうございます」


 最後に手紙を渡し、メイドは部屋をさっていった。


 不思議に思いながらもまず手紙を開けてみる。差し出し人はアルブレヒトお兄ちゃんだった。誕生日おめでとうから始まる文で、最近慌ただしかったけど、そういえば、今日誕生日だったなぁと思い至った。


 じゃあ、これは、お誕生日プレゼント?

 入ってきた荷物を見て思う。今まで誕生日を祝ってもらったことがなかったので、急にこんなにプレゼントがもらえて驚いた。でも、嬉しい。誕生日を誰かに祝ってもらったのはどのくらいぶりだろうか。もしかしたら、アルカイドが最後だったかもしれない。


 さらに手紙にはいろいろなことが書かれていた。

 まず、プレゼントについて。その多くはお父さんからのようだった。でも、アルブレヒトお兄ちゃんからのプレゼントも多く、7つあった。お兄ちゃんによると、渡せなかったが毎年プレゼントを用意してくれていたらしい。剣についてだが、これはお母さんのお下がりらしい。お父さんはこの剣を渡そうとして、ディナーで剣を買わなくて良いと言ったらしいのだ。

 次にヴェルクスについて。お兄ちゃんは、ヴェルクスが身寄りがないと言っていたのを聞いて、お父さんに掛け合ってくれたらしい。それで先日、いくつかの条件をクリアしたら、お兄ちゃんの補佐としてこの家にいていいことになったらしい。それで、今はその手伝いが忙しいらしい。

 それと、この前の手紙の返事についても書いてあった。栞もすごく気に入ってくれたらしい。本に挟んで使うのではなく、飾ってあるということがただ一つ気になった。



 手紙とプレゼントを大切にしまう。今すぐに直接お礼を言いたいところだが、それは無理だ。お礼の手紙を書き、ごはんを運んできてくれるメイドに渡してもらおう。そして、お礼は謹慎が終わったら直接言おうと思う。


 

 それと、新たな疑問が思い浮かび、ノートに付け加える。


 

 もしかしたら、お父さんに好かれている…?会った時の印象は怖いことの方が多いが、なんだかんだ甘いのかもしれない。今までヴェルクスのこととかメイドたちのこととか私の意見を聞いてくれたし、誕生日プレゼントをたくさんもらったし、欲しがってた剣もくれし、嫌いな子にはやらないと思う。

 嫌われてるからか興味がないからここ6年あったことないのかと思ったけど…、好かれてたなら、なんでこれまで放任されてたのかな?




 そして、最後に16歳まで、残り9年。と書き、再びノートを閉じた。

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