タコとカメのぬいぐるみ(2023.5.29)
小さなカメのぬいぐるみをお迎えして、もうすぐ一年になる。
ポケットに入れて、どこへでも一緒。カフェでまったりしたりフードコートでごはんを食べたり、映画館で映画を観たり、すっかり仲良しだ。この前は専用のTシャツを買ってあげた。今日はそのTシャツを着せて、狭山茶カフェに来た。
「あら亀吉ちゃん、かわいいわねえ」
馴染みの店員さんに褒められて上機嫌なぬいぐるみ・亀吉。今日はこしあん団子が食べたいというので、僕はあんみつを、亀吉にはこしあん団子を注文した。もちろん水出しの狭山茶も忘れずに。先払いの会計をすませて席でのんびりしていたときのことだった。
「こんにちはー。おっ、亀吉ちゃんも来てたんだ!」
タコのぬいぐるみを抱えた、タコのようにツルリとしたスキンヘッドのお兄さんが来店した。爽やかな笑顔に僕の心臓は少しドキドキする。店内が混雑していたのと、顔見知りなのもあり僕たちは相席した。お兄さんがカウンターで注文と会計をしている間、僕はタコのぬいぐるみをじっと見つめた。
リアルでヌルヌルしていそうな見た目の、目がぱっちりとしたタコ。お兄さん曰く「セクシーな美女」のタコ・ルオシーちゃんは、亀吉と仲良くなりたいらしく、触手をにょろりと伸ばしてきた。亀吉もルオシーちゃんとお近づきになりたいらしく、なでなでしてもらっている。
「ルオシーちゃんは亀吉ちゃんのことがお気に入りみたいだねー」
会計を済ませたお兄さんが席に戻ってきて、ルオシーちゃんの頭を撫でた。しばらくして僕の注文したメニューと、お兄さんが注文した抹茶パフェと抹茶レモンソーダが運ばれてきて、二人でいただきますと手を合わせる。お兄さんが合掌すると優しげな僧侶のようで、絵になるなあと思う。
お兄さんともっと仲良くなりたいなあ。
僕は密かに思いながら、あんみつを口にするのだった。するとお兄さんの口から、思いがけない言葉が飛び出した。
「この後、一緒にごはん食べに行きませんか? うちの近所にぬいぐるみカフェが出来たんですよ」
思わず顔が赤くなる。
行きます、と即答した僕に亀吉が「顔が赤いぞー」と突っ込みを入れた。