近所の公園マダコぬいぐるみ(2023.5.27)
落ち葉を踏みしめればサク、サク、乾いた音が鳴る。
近所の公園は今日も子連れで賑わっていて、ベンチには談笑するお年寄りの姿もあった。僕は空いていたベンチに腰を下ろし、リュックからぬいぐるみを取り出した。
有名な魚類学者プロデュースの、マダコのぬいぐるみ。ほぼ実物大のそれはとてもリアルで、体の模様も吸盤のプリントもぬるぬるしていそうなほどだった。目はぱっちりとしていて可愛らしい。吸盤の並びから、この子はメスだと分かったので、ルオシーちゃんと名前を付けていた。
ルオシーちゃんをベンチに置いてポーズを取ってもらって、写真を撮る。気分はグラビアカメラマンだ。くるんとカールした触手がとっても可愛くてセクシーなルオシーちゃんはノリノリで撮影に応じてくれて、僕は夢中でミラーレス一眼のシャッターボタンを押した。
次に移動したのはブランコだった。ちょうど空いたそこにルオシーちゃんを座らせて、触手を持ち手チェーンに絡ませる。しっかりカールした触手はチェーンによく絡みついて、まるで本当に遊んでいるみたいだ。僕がカメラのシャッターボタンを押している間、タコだー! と元気な子供の声がした。
熱が入って暑くなってきたので少し休憩することにした。ルオシーちゃんを抱っこしてベンチに戻り、リュックからお茶のペットボトルを取り出す。秋に飲みたくなる凍頂烏龍茶だ。キャップを開けて口にすれば、香ばしいナッツのような香りとほんのりとした甘さがたまらなかった。
ふと、風が吹いた。
落ち葉がパラ、パラ、と舞う。その様子になんだかセンチメンタルな気分になって、ルオシーちゃんをぎゅっと抱っこした。ルオシーちゃんはぬいぐるみなんだからしゃべるわけがないのだけど、大丈夫よ、と言ってもらっている気分になる。触手を握って指に絡ませるとルオシーちゃんがうふふっと笑った。まるでお姉ちゃんみたいに。
そういえば、小さい頃はお姉ちゃんが欲しいって思っていたっけなあ。
もうひとくち凍頂烏龍茶を飲んだ僕は公園の風景を眺めた。
兄弟や姉妹だろう子供たちが、遊んでいるのが見えた。