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4話 怒

 だが、だんだんと積み上がっていくのは、ダブルに対しての『思い』だ。


 彼女はひとつひとつ感情データを照らし合わせ、それが何に近い現象なのかを検索していく……


 数十分をかけ、彼女はその感情が何かを理解すると、ダブルの元へ走り出した。


 彼が植物の剪定を行っているのを見つけると、もはや森のようになった一角へと急ぐ。


 鬱蒼と茂る木々だが、剪定は間違いないようで、適度な大きさを保ち、かつ、背の低い植物にも光が当たるように調整されている。

 ただそれは木々にとって過ごしやすいだけで、アンドロイドには動きづらい。


 ゼロは動きのある場所まで木々を折り、蹴散らして歩く。

 小枝が折れ、葉っぱがちぎれ、枯れ葉を踏み鳴らすのは、

この気持ちを体現するためだ。


 ようやく辿り着いた時には、彼女の皮膚は裂け、青色の筋繊維が見えるところすらあるが、痛覚のないアンドロイドにとって、これくらいの傷は故障でもない。この程度の修理など、寝てる間に終わってしまうだろう。


「……ゼロ、どうしたんですか」


 あまりに傷まみれのゼロに、眉がピクリと揺れる。

 昨日までのダブルなら、もっと大袈裟に驚いただろうが、もう感情の残りが少ないせいだ。


 ゼロは改めてダブルの心の状況を想像し、彼と向き直った。


「私はあなたに言いたいことがある!」

「はい、なんでしょう」


 ゼロは胸をそらし、大きく息を吸い込んだ。


「ダブルのバカヤロー! 私は()()()()()! あなたのせいで気分が落ち込み、未来が怖くなり、私もあなたのようになるんだと、記憶を渡せば、自分の記憶が消えるのだと怯えてなければならなくなった! だけどー! 私はー! あなたの笑顔が好きだし、あなたとの残りの時間は楽しく過ごしたい! バカヤロー!」


 前代未聞である。

 アンドロイドが、アンドロイドを罵ったのだ。


 これはゼロが相手を侮辱する言葉、としてデータから引き出したにすぎないのだが、使い所は合っている。


 罵られたであろう本人は、ただポカンとゼロを見る。

 怒り、とい感情が読み取れないからだ。


「……スッキリした」


 程よく笑うゼロに、ダブルはもう一度首を傾げる。


「怒りは叫ぶとおさまるんですね」


 それにはゼロは、はいも、いいえも、こたえない。

 少しだけ、寂しそうに笑ってみせるだけだ。

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