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見栄っ張り(千鶴)

作者: 狼花

 12月下旬。

正月も目前となった今日この頃。

私はパソコンの表計算ソフトを見ていた。

「えーと、甥の子が2人で・・・」

考えているのは親戚の集まりで配るお年玉である。

子供の頃は嬉しかったのに大人になると忌々しくなるこの日本の伝統。


 額が大きければ家計に影響が出るし、かと言って少なすぎるのも気がひける。

私も子供の頃、ポチ袋をもらってはいくら入ってるか期待していた。

今となってはそんな感動も記憶の彼方に行ったけど…

大人には出費、されど子供にとっては貴重な収入。


 私の親戚は20人くらい、そのうち子供が8人。

1人に千円でも8人で8千円。

3千円だと2万4千円。

2万4千円あれば、美味しいものも気に入った服も買えると言うのに。


 「さて。だいたい決まったし、あとは桃花にお年玉を渡して・・」

私はパソコンを閉じ、次女の部屋に向かった。


ーーー


 「桃花、これ預けるわよ」

娘は珍しく机に座って勉強をしていた。


 「え、お年玉こんなにくれるの!!」

「馬鹿。袋に名前書いてるでしょ」

「あ、ホントだ…なんだ、期待させないでよ」

「勝手に勘違いしたんでしょ」

少なくともあんたに渡すお年玉はない。


 「あれ、私に預けるって。お母さんはいかないの?」

「いかないじゃなくていけないの」

「あ、コロナか。大変だね」

「本当はあんたを1人で行かせるのも気がひけるんだけど」

「大丈夫、大丈夫感染しないから」

娘は適当に相槌を打ちながら、勉強を続け・・・・ん?

「それ、何書いてるの?」


 「今年のお年玉を誰がどれだけくれるかを考えてノートにまとめているの」

勉強してると思ったら…

「あのね、そう言うことは失礼だからやめなさい」

「失礼じゃないよ、子供にとって元旦は最高の稼ぎどきなんだから、ちなみにお母さんはBランク」

非常に失礼な子に育ってしまった。さらにランク付けまでされるなんて・・・

「そんなことするの、あんただけよ嘆かわしい」

今後のこの子の教育方針を修正したほうが良さそうだ。


「いやいや、親戚の子みんなと電話して出た答えだよ」

「・・・・・・」

「え、お母さん?」

私の子供の頃はそう言うことしてなかったんだけど、

娘が他の子供に悪影響を与えそうで、コロナとは別の意味で行かせたくなくなった。


「Aランクはいくらなの」

「5千円」


  ー お年玉回収 ー



ーーー

  元旦前日。実家に向かう桃花を駅まで見送る。



 「じゃ、行ってくるね。お年玉の増額ありがとうございました。

親戚の子供代表でお礼を言うね」


 「さっさと行きなさい」




 正月早々、見栄を張って無駄な支出を増やすのだった。


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