夕焼け小焼け
学校帰りの帰り道、二人の女子高生が帰路に就いた。特にいつもと変わらない何気ない帰り道、二人は談笑しつつ通学路の商店街を抜けた。
「夕日ってさ、時々悲しそうに見えない?」
ちょうど川沿いの堤防に差し掛かった時に沈みゆく夕日を見た、ショートカットの女子高生が突然話題を振った。話を振られたツインテールの女子高生は、少し顎に手をつけて考えてから、
「私には悲しい、と言うよりは悔しそうに見えるんだけどな」
と返した。
「えー?!」
と大きな声で驚嘆の声を上げたショートカットの学生は、続けて説得するような勢いで相手に言い寄った。
「だって夕日が沈むと夜が来るんだよ?みんなが自分の事を忘れるのが怖くてギリギリまで顔を出して『行きたくない』って言ってるみたいに見えるんだけど」
「そうかな?それならどちらかと言うとあの夕日はいつまでもここを照らしていたくて、ギリギリまで『行きたくない』って言ってるように見えるけどね」
ツインテールの学生の言い分を噛分けるように、うーんと唸った。そしてまた説得するように、ツインテールの学生の肩に手を当て、夕日の方を指さして言った。
「見て、地面に着いた夕日。これより下に行きたくなくて、若干下の方が膨らんで見えるじゃん。あれはできるだけ自分の存在を見せようと頑張ってるんだよ」
この言い分を聞いたツインテールの学生はハァっと一つ息を吐き、
「何か嫌な事でもあったの?よかったら相談乗るよ」
どこか根負けしたようにそう言った。ショートカットの女の子は顔をパァっと輝かせた。
「なんでわかったの?!」
その声色はすべて計算通りと言ったようだった。
「まぁ長い付き合いだしね」
ツインテールの学生は実際言いたかった事を噛み締めるようにそう言った。ただその様子は特に嫌と言うわけではなさそうだった。
どのような悩みだったのか、あえてここで書く必要もないだろう。家へと再び歩き出した二人を見送るように夕日は地面の下へと降りて行った。
「今日はいい夜だ」
誰かがそういったように感じる。
絵・猫の下僕