第四話 俺と夏川二人の得た魔法
なんだ?支援魔法って。思ってもみなかった魔法の名前に俺は一瞬思考が止まった。それから色んな考えが思い浮かんできた。
まず、支援というからには俺の思ってたような火とか出せる攻撃系じゃないよな。じゃあ相手の攻撃を防ぐ系か?うん、そっちの方がまだしっくりくるか。いや待てよ、普通RPGゲームとかで支援魔法と言ったら回復魔法とかな気がするな。うーん、なんというかパッとしないなあ。もっと普通じゃないとんでもない、世界を揺るがしかねない魔法がよかったなあ。まあこれは俺の勝手な想像だし、もしかしたらこれから生きていくのに超便利な魔法かもしれない。
一人で試行錯誤しててもしょうがない。女神に説明してもらおう。
「おい女神、いったいどんな魔法なんだ?支援魔法って」
「ほかの人を支援する魔法よ」
「……………具体的にお願いします」
また喧嘩口調で突っかかるところをなんとか踏み留まって丁寧に対処することができた。いちいち突っかかるのも疲れるんだよな。
「えーっと、あなたの前に先に夏川さんから説明した方が便利ですね。その後にあなたの魔法を説明した方が手っ取り早いと思います」
「夏川の使える魔法となんか関係あるのか?」
「まあ、あるといえばありますね」
「その中途半端な感じ、なんかもやもやしてなんか嫌なんだけど………」
「別にいいじゃないのよ、どっちが先でも後でも。女神さまが私が先の方が良いって言ってんだから素直に従いなさいよねまったく」
喋れば必ず俺をムカつかせる夏川涼乃が横から口出ししてきた。
「へいへい、じゃ夏川の魔法はなんなんだ?」
「はい、夏川さんの魔法はズバリ、『時間』を操る魔法とでも言いましょうか」
「わかりました女神様!」
「ちょっと待てーーーーー!!!」
「なによ」
「なによじゃあねえよ、それいわゆる最強の魔法じゃねえか。時間を止めて自分だけ動けますーとかできるチートじゃねえかー!!」
「落ち着いてください冬霞さん」
「そうよ落ち着きなさいよ」
「これが落ち着けるか!俺のやつとこの差は一体何なんだよ。おかしいだろ?魔法の名前聞いただけで強さの差が明確に分かるぞ」
「とりあえず魔法の説明をさせてください。それを聞けば少しは冬霞さんが納得してくれると思います」
「………………わかった、とりあえず聞いてみる」
また興奮して突っかかってしまった。だってあまりにも俺に対する女神の仕打ちがひどすぎないか。いやがらせされている気がしてならない。
その後女神が夏川の魔法について説明してくれた。どうやら俺がさっき言ってたようなことはできないらしい。この世界の時間を止めることなどできるものじゃないと言っていた。また実際に過去や未来に行けるということもできない。じゃあ何ができるのかというと、人の思い出や昔の風景を見ることができることや少しだけ先の未来が見れるというものなど。時間を操るとか言ってもそんな大層なことではなく、過去や未来に関することで少し関与できる程度の魔法とのこと。未来に関しても、。まあまあ便利じゃないか?なにか忘れたこともその魔法を使って思い出すことができる。受験生が誰しもが欲しがる能力だろう。………やめよう、受験について思い出すのは。それだけでなんか気が滅入ってくる。
それにしても夏川のその時間を操る魔法っていうのが俺の魔法とどう関係するのか。なにをどう支援するというのだろう。やはり支援魔法というと何かのサブ感がしてしまいどうも気が乗らないな。もっとパッとした分かりやすい魔法がよかったな。
「じゃあ、冬霞さんの魔法について説明しますね」
「おう、頼むよ」
「簡単に言うと、人の魔法の力を強化する魔法です」
「………」
なんて反応すればいいのか、、、。それって俺一人じゃなにもできなくないか?さっき夏川の魔法と関係あるって言ってたのはこのことか。うん、たしかに女神がどこか煮え切らない回答をしたのに納得がいく。夏川の魔法がどうこうというわけではなくて、魔法が使える人っていうことだだいじだったってことか。どういう魔法なのか詳細を言われ、ただ人のサポートしかできない事実に落胆していると女神が意外なことを言ってきた
「なにか不満そうな顔をしてますね。そうがっかりしないでくださいよ。これかなり珍しい魔法ですよ?」
「え、マジで?」
「ええ、普通支援魔法って言ったら、身体能力を高めたり、けがを治癒したりする魔法なんです。人の魔法の力自体を強化するなんて支援魔法滅多にありません。」
「そ、そうなのか。俺の珍しいのか」
やはりなんでも特別とか珍しいとか言われるのは普通とか平凡って言われるよりいいよな。とか思っていると、
「はい、自分自身には一切関与できないっていう点も珍しいです」
「ちょい待て、どういう意味だ?」
「身体強化や回復魔法は自分にもかけられるんですよ。でも冬霞さんの場合魔法の力を強化するっていう魔法ですから……………自分自身にはその魔法をかけることができません」
「じゃあ俺はこれからどう生きて行けっていうんですか?誰かと一緒にいないと魔法が使えないなんて、そんなことありますか?」
「じゃあそちらの夏川さんとしばらく一緒に過ごしてみてはいかがでしょうか?夏川さんもこれから生きていくのに一人では心もとないですし、慣れるまでだけでも二人で新生活を楽しんでください」
その言い方だと新婚さんにでもなった気分だな。こいつとはお断りだが。でもまじで一人では何もできないからなあ、俺の魔法は。しょうがないこんなやつでも誰もいないよりはましか。夏川のやつ俺と一緒に過ごすと良いと言われて速攻嫌がると思ったが、女神に言われたのでは逆らう気が起きなかったのだろう。一瞬なにか言おうとしたが踏み留まり、一拍おいてから一言「わかりました」と言った。
ここで気になることがもう一つ。
「なあ魔法はどうやって使うんだ?」
「あ、私もそれを聞いときたいです」
魔法の力を得たとしても使い方を知らなければ無意味になってしまう。数学の公式を覚えてもその使い方や仕組みを知らなければ使いこなせないのと同じだ。だからすぐ受験勉強のことをだすのをやめなさい俺。俺の質問にかぶせて夏川も女神に聞いた。
「夏川さんの場合は過去や未来を見たい物体に触れて意識を集中させれば見えてくると思います。風景や景色を見たい場合はその場で目を閉じ集中することにより魔法が使えます。冬霞さんも同じく強化させたい相手に触れて念じることで、その相手が強化された魔法を使うことができます。」
なるほどそんな簡単なことでいいのか。夏川の魔法を強化してみるとどうなるのか試してみたいな。例えばなんだろう、さっき夏川の魔法の説明で少し先の未来を見れるって言ってたから、かなり先の未来が見えるとかだろうか。早く俺の魔法の力を使ってみたいところだが、まずは夏川の魔法がどの程度なものなのか把握しとかないと、俺の魔法がどう働いたのかがわからない。ということでまずは、
「なあ夏川、試しに今魔法使ってみてくれないか?それから俺の魔法をかけてみてお互いの能力を確認しようじゃないか」
「いいわ、じゃあちょっと大人しくしててね」
そう言って素直に従ったと思ったら突然夏川が右手を俺の額に当ててきた。そうか!こいつの魔法は過去とか未来を見るものだった。俺の今までの生活をこいつに見られるのは嫌だ!急いで夏川の右手首を左手でつかみ夏川の右の手の平を額から離した。すると俺の左手が突然白く光りだし、その光は夏川の身体全体にかかっていった。すると、さっきまで目の前にいた夏川と女神の姿が見えなくなった。いや、それだけではない。なにも見えなくった。目は閉じたつもりはないのに目の前が漆黒の闇でいっぱいになった。