第三話 異世界について
女神が言うには簡単に次のことらしい。
まず最初にここは異世界だ。地球とは異なる惑星、という話ではなく、存在する次元そのものが全く違う場所だ。この世界では魔法が存在する。俺のいた世界にも、勉強が得意な奴やスポーツができる人がいたのと同じように、こっちの世界にも魔法が優れている人とそうではない人がいる。特に魔法が優れている人は賢者だの魔女だのと呼ばれるらしい。そういう女神はというと、賢者や魔女が泣いて黙るほど強さのレベルが桁外れにずばぬけているみたいだ。ほんとかよ。この世界の人からは文字通り神として崇め奉られている存在らしいのだが、一度でいいからこいつに直接会って本性を知ってもらいたいところだ。
そして、俺がここにいる理由だが、驚くことになんと俺は一度死んだらしい。あまりにも若いうちに死んでしまった人や事故等で突然死してしまった人は、女神の力でこの異世界に転生されて第二の人生を送らせてもらえるとのこと。俺が死んだ理由は、目の前にいるこの残念な女神とは違う女神さまによってそのときの記憶を消されたため分からないが、特に病気はしてなかったから、多分事故とかで死んだのではと思っている。自分の死因を考えるなんて……なんて変な話だ。まあざっくり言えば新しい環境でもう一度人生をやり直せるってことだ。というわけで、
「よーし、俺の第二の人生スタートーーーー!!、、、、って言うかーー!」
「ちょっとあなた、大きな声を出さないでよ。あとその自分で自分につっこむやつなんなの?友達いなかったの?」
涼乃が初めて会ったときと同じ仏頂面で俺に喧嘩を売ってきた。
「お前なあ、俺につっこむ前にこの事態につっこめよな。」
「まだそんなこと言っているの?いい加減現実に目を向けなさいよね。それに女神さまの言葉を聞いてなかったの?女神さまのおかげでこうしてあなたの残念な顔やだらしない体がが未だに起動しているのだから感謝してもいいくらいじゃない。」
あれ、事態がも見込めずパニックになったって言ってなかったかこいつ。それになんか俺の外見に対して誹謗中傷な言葉が聞こえた気がするが、いちいちつっこんでいたら話が進まない気がするからここは一旦スルーすることにしよう。俺は温厚だからな。そんなことより涼乃の中の美化された女神のイメージを正さなければ。
「こんな女神じゃなければな?いいかまず俺たちをここへ呼んでくれたのはコイツじゃなくて違う女神なんだよ。そしてこいつは見習い女神みたいな感じで、全然しっかりしてないダメダメ女神なんだよ」
「ちょっと女神さまのこと悪く言わないでよね!」
「いいんですよ、涼乃さん。私にも至らないところがありますので」
「も」ってなんだよ。俺の何が至らなかったんだよ。女神がいかにも悪いのは俺の方だというニュアンスを含みつつ涼乃をなだめた。
「とりあえず、これからあなたたちはまだ見ぬこの世界に飛び立ち、新たな人生を歩んでもらうわけですが、それにあたってまずは魔法を授けようと思います」
「はい女神様!」
あーだめだこりゃ。涼乃のやつ一度死んだ自分を生き返らせてくれたということですっかり女神信者の仲間入りをしてしまったいる。なんだその目は。飼い主の帰りを待つ子犬のように目を輝かせて女神を見つめている。もういいや、こいつがこの先どうなろうが知ったこっちゃないしな。
「それで?どんな魔法を授けてくれるというんでしょうかね女神さま?」
俺がほんとに魔法なんて使えるようになるのか信じられず、またこの女神にそんなことができるのか怪しく感じ、少し嫌味交じりに聞いてみた。
「安心してください。女神は誰に対しても常に平等の立場でいます。中でも私は平等であることを最も大切なことだと考えています」
ほう、まあまあいいことじゃないか。本当の平等なんて存在しないがそれを目指そうとするのはいいことだ。こいつにそんな信念みたいなものがあるとは驚きだが、少し見直してやってもいいかもな。
「というわけで、今まではどんな魔法を使いたいのか本人の希望を聞いていたみたいですが、私はランダムで授けようと思います」
「いやちょっと待て」
「はい、女神様!」
「涼乃もちょっと待て」
「なによ、女神さまが授けてくれる魔法ならなんでもいいじゃない」
「そういうことじゃない、この女神のことだ。絶対自分で魔法を選んで授けることができないだけに決まっているだろ」
俺は必死に涼乃を説得しようと試みた。しかし何を言ってもこいつは「女神様!女神様!」状態で話をまともに聞こうとしない。女神の方を向いてみると図星だったのか少しバツが悪いって顔をしている。
「……ええと………それじゃあさっそく……魔法を授けるので目をつぶっててください」
「絶対そうだよ!俺の予想当たってるぞおい。どうすんだよゴキブリに変身できるとかいう魔法だったら!第二の人生もあったもんじゃないぞ!」
「うるさい!静かに目をつぶってなさいよ!」
「……わかったよ」
言われた通り目をつぶった。くそ、しょうがねえな。でも冷静になって考えてみれば、もし変な魔法をもらったとしても使わなければいいことだしな。できることなら空とか飛んでみたいなとか考えた俺がみじめになってくる。
「それではいきます………………はああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
数秒間女神の叫び声が響き渡った。そして静かになったのでもう終わったのかと思い目を開けてみる。
「終わったのか?」
「ええ、無事に済みましたわ」
「……特に変わったところはないな」
自分の手や腕、足など見回してみるがなにも変わった様子がない。涼乃の方も見ても、やっぱり変化したところは感じられない。
「本当に魔法使えるようになったのか?全然そんな感じがしないんだけど」
半信半疑、いや一信九疑くらいな感じで聞いてみる。
「いいえ、ちゃんと魔法は授けることに成功しましたよ」
「そうか、じゃあ俺はどんな魔法を使えるようになったんだ?」
「ええーとですね、、あなたは、、、、、超支援魔法が使えるようになりましたね」
「…………………………なにそれ」