第一話 女神さまと初対面
朝だ。起きようと体を起こして辺りを見渡してみると見慣れない景色がそこにはあった。
「どこだここ?」
「異世界よ」
「うお!びっくりしたー」
俺の独り言でポツリとつぶやいたことに思わぬ返答が返ってきて一瞬驚いてしまった。声のした方を振り向いてみると、全身真っ白のドレスのような衣服を身にまとい頭にはどこかの国の王女様がつけているようなティアラを身に着けている一人の女性が立っていた。とても美人な方だった。肌も白くて透き通っているかのようで、すらりとした体形に加え、顔には整った目と鼻と口がついていた。あまりの美貌に見とれて固まっていると、
「あのー、そんなにずーっと見つめられるとさすがに照れてしまうのですが……」
少し頬を赤らめて顔を下げて恥ずかしそうにそう言った。あ、しまった。目覚めていきなり美人の女性を目の前にして一瞬魂がぬけてしまっていた。俺も恥ずかしさをごまかすために頭の後頭部を右手でかきながら弁解しようとした。
「あはは、すいません。あなたがこの世の人とは思えないほどあまりにもきれいでつい見とれてしまいまして………」
何言ってんだ俺!正直に思ったことをはっきりそのまま言ってしまった。くそ、これも美人な女性を前にした童貞男子の生態なのか?ドキドキして思考が全然まとまらない。でも、これでまた照れて顔を赤くしてくれるんじゃないか?などと思っていると、思わぬ返答が返ってきた。
「はい、私この世の人ではないですよ?というよりも、どの世の人でもありません。女神ですからね」
最後にとびっきりの笑顔をされてまたまたどきっとしてしまった。なるほど、日本人離れしている容姿だとは思ったけど、なんだそもそも人間じゃないのか。女神様だったかー、納得、納得……………………
「するかーーーーーーーー!!!女神ってなんだよ?そんなRPGゲームとかだけのはなしでしょうが!。現実にあるわけないでしょうーーー!!」
あまりにも予想外なことを言われ、突然大きな声で叫んでしまった。すぐに一言謝ろうとしたがそんな俺の様子を見ながら女神様は申し訳なさそうな顔をしてこう言ってくれた。
「すいません、突然こんなことを言っても戸惑うし、理解できませんよね。私最近地球の人を異世界へ導く役割を担ったばかりで、全然上手に説明できなくて…………」
「いやいや、女神様が謝ることはないですよ?僕も大きな声を出してすみませんでした」
え、なんだ?異世界へ導く役割って。そういえばさっき異世界とか何とか言ってたような…………。ね心の中で色々疑問に思いつつも女神さまこう続けた、
「ありがとうございます。あなた様が優しいお方で安心しましたわ。先ほどこちらに導かれた方は事態が呑み込めずパニックになってしまわれまして…………」
「いや、申し訳ないですけど僕も全然現状を呑み込めてないですよ?なんですか、異世界に導くって?」
「ああ、すみませんすみません。今から一からご説明いたしますね……」
「はい、よろしくお願いします」
一度咳払いをし、落ち着いた様子で説明をはじめてくれた。
「まず私は女神です。人生を終了されられた地球の方を異世界へと導く役割を担っておりま…………
「はいストップ。そこです。そこを詳しく聞きたいんですけど。え、僕は死んだんですか?」
「え、そこからですか?」
「いや、僕に聞かれても知らないんですけど、、」
「あ、もしかしたら前任の女神様が死ぬ寸前の記憶は消してくれているのかもしれません。私が記憶を消すことを忘れると踏んで最後にやってくれたのかもしれませんね。とても配慮が利いていた方ですから。事故等で亡くなられた方は死ぬ寸前のことを思い出すと辛くなってこの先の旅をやっていけなくなる方もいらっしゃるようなので」
「あーそうですか。じゃあ配慮が利いていない女神様、とりあえず僕は死んだってことなんですね?」
「ちょっと、なんですかその修飾語は。必要ないでしょ。」
「あ、すみません。どの女神様のことを言っているのか分かりやすくしようと思って。僕配慮が利いているので」
「それは配慮が利いているのではなくて、ただひねくれているだけです。」
「とにかくまあどっちにしても僕は死んで、これからどうしたらいいんですか?」
「え?あーはいはい。コホン。あなたはこれから地球とは別の世界、異世界にて新たな人生を歩んでいってもらいます」
「……」
「ちょっと!無反応っておかしいでしょう!」
「いやだってそんな偉そうに威厳ありげに言われても。」
「いいでしょ!こういうのに憧れていたんだから!さっきも言ったけど、あなたの前にここに来た子は全く私の話なんて聞かないで泣き叫ぶもんだから、落ち着かせるために私の魔法で眠らせるしかなかったのよ!」
コイツ、最初の清楚で落ち着いた感じのは演じていたのかよ。露骨に態度変えてきやがって。これがこいつの素なのか。
「わかったわかった。つまり一度死んだ人間を別の世界でもう一回生かしてやろうってことだな?」
「そうよ。物分かりいいじゃないの」
「くそ、あんたが女じゃなかったらとっくに殴っているからな?」
「ふん。私に手を上げようとしてもその前に魔法で眠らすわよ。」
「く、魔法なんて卑怯な。そんなことで女神の特権を見せびらかしてんじゃねーよ」
「ちょっと、誰が女神の特権なんて言ったのよ。あなたにも使えるわよ。」
「え、まじで?」
「そうよ、だからまずは大人しく私の話を聞きなさい。」
「わ、わかりました。」
「全くこれだからせっかちな男は嫌われるのよ。」
なぜだろう、殺戮系の魔法を覚えたいと思ってしまうのは。
「まあいいわ、そうねえ。どうせならまとめて説明したほうが楽よね。まってて、さっき言った眠らしてる子を連れてくるから」
そう言って女神は奥の方へと姿を消していった。
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