プロローグ
異世界ものです。もし良かったら読んでください。
「………ウカ………カ………トウ……………カ」
冷たい土にの上に俺は体を横にして倒れている。雨が降った後のように土が湿っていて、嫌なにおいがする。おそらくだが、この辺りには最近雨が降っていないだろう。なぜなら、俺の周り以外は全然湿っている感じがしないからだ。なぜ俺の周りだけ湿っているのか、それは簡単だ。俺自身が土を湿らせている元凶だからだ。そう、俺の身体から今もなお流れ続け出てくる血のせいで。もう痛いという感覚がどういうものであるのかさえ分からなくなってきた。腹のちょうど真ん中くらいには直径10センチほどの空洞ができていて、血を抑えようと手でふさいでいたが心臓の鼓動に合わせて血が勢いよく出てくるのは止めようがなく、もう意味がないと諦め目をつぶりただ横になって死が近づいてくるのを感じている。
ふと声が聞こえた。すずめの鳴き声のようなか細い声が。重くもう二度と開かないつもりだったまぶたを開け、声がした方を目だけ動かして見た。その先には歳が俺とほとんど変わらない一人の少女がうつぶせになって倒れており、顔をなんとか上げ俺の方を見ている。正面からその少女の顔を見ると目をそむけたくなった。彼女の片方の目がつぶされており赤い液体、血が流れているのだ。
「もういいだろ、俺たち本当はもう…………一度死んでいるんだからさ………」
俺はなんとか踏ん張りそれだけ言った。すると少女は何も言わずに左腕を俺の方へと伸ばしてきた。はあ、まったく、分かったよ。やればいいんだろ?俺も右腕を伸ばして少女の手を握る。
(安心しろよ、俺が上手くやってくるから)と意思表示のために手をつかんだまま少女の顔を見つめた。少女はとてもきれいな、なんともいえないような笑顔を俺に向けた。次の瞬間つないだままの俺の右手と少女の左手が光り輝いた。これ以上痛い思いはしたくないなあ。なんてことを考えながら俺は静かに目を閉じた。
その瞬間冬霞の意識は消えた。そして再び目を開けると、冬霞の視界には別の光景が現れた。どこか異国風の街並みが。そこに冬霞は一人突っ立ているのだ。しかも驚くべきことに先ほどまであった体の傷はなくなっている。そして冬霞は一人こう呟いた。
「んーーと、ここどのへんだ?」
読んで頂きありがとうございました。