話したいこと、話せないこと。
更新しようとしたら、失敗して文章全部消えてしまい書き直しする羽目に‥‥‥
なので二日遅れの更新となりました。
今回凄く緊張した。また消えたらと思うと──
いつか聞かれると思った。
マリーウェザーはセレスティーネより上の世代だから、どこまでかはわからないが、当然知っていると思っていた。
私の前世がセレスティーネ・バルドーだと告げた時、母マリーウェザーは驚きの表情を浮かべていたから。
何故あの時、聞いてこなかったのかは、わからないが。
「お母様は、どれだけのことをご存知なんですか?」
そうね、とマリーウェザーは少し考えるように視線を上に向けた。
「もう27年が経つのね───」
彼女は小さく呟いてから視線を下げ、まっすぐに私を見た。
「私が知っていることは少ないわ。バルドー公爵令嬢であるセレスティーネ様が王立学園の卒業パーティーで急死されたということだけ。あの頃私はもう卒業していて領地に戻っていたから、王都で起こったことを知った時には既にかなりの日にちがたっていたの。おかしいと感じたのは、バルドー公爵と夫人も同じ頃に亡くなっていて、ただ一人残った嫡男のアロイス様の行方がわからなくなっていると聞いた時。だっておかしいでしょう。バルドー家といえば、初代国王の頃から仕えている三つの公爵家の一つよ。歴史の教科書にだって載っているわ。そのバルドー公爵家が、いつのまにか国から消えていたのよ。異常だと思うのは当然でしょう」
私にその事を教えてくれた友人に聞いても詳しいことは知らないと言うし、王都でも問題にはなっていない様子。
いったいどういうことなのかと知人に尋ねまくったわ。でも誰も知らなかった。
誰も聞いてないということは、あの卒業パーティーに参加した学生や保護者たち、そして学園の関係者全員が口を噤んでいるってことでしょう。
「となれば、王族が関係してるとしか思えないじゃない。結局、父からも余計なことに首を突っ込むなと言われて諦めるしかなかったの」
「あの‥‥奥様」
「なぁに?ミリア」
「奥様が仰っている公爵令嬢というのは、お嬢様の前世の方ですよね。その方が亡くなられたのは事故じゃないんですか?」
マリーウェザーは目を細めた。
「‥‥そう。〝事故〟なのね」
「‥‥‥‥」
「セレスティーネ様は私が卒業した後に入学されたから、お会いしたことはないのだけど、アロイス様とは学園でご一緒だったわ。勿論、あの方は公爵子息で、うちは貧乏伯爵だからお声をかけることすらできなかったけど。ハンサムで頭が良くて優しくて、とても素敵な方だったわ。どうして居なくなってしまわれたのかしら」
黙って話を聞いていた私は、ふぅ‥とひとつ息を吐き、母マリーウェザーを見つめた。
「お母様は、乙女ゲームをご存知ですか?」
「は?なに?え?おと‥め‥ゲーム?」
突然脈絡もなしに私が想定外な単語を口にしたので、マリーウェザーはびっくりしたように目を瞬かせた。
「はい。乙女ゲームです」
「乙女ゲーム‥乙女ゲーム、ね──ええ、知ってるわ。私はやってないけど、高校生の姪がやっていたわね。私がやるゲームっていうとマリオやドラクエくらいなんだけど、姪はパソコンでやってたわ。姪は絶対面白いからって見せてくれたんだけど、よくわからなかったわね。絵はとても綺麗だったんだけど。一人のヒロインが、好感度を上げながら何人かの攻略対象の男の子をゲットしていくってゲームでしょ」
「ええ、そうです。私もやってました。ゲームには日本が舞台のもあるんですが、私がやっていたのは王様や王子様、貴族なんかが出てくる西洋風の架空の国が舞台でした」
「ああ、姪がやってたのもそんな感じだったわね。昔読んでた漫画で、フランス革命の話だったかしら、あんな、こうキラキラした感じの絵だったわ」
私はにっこりと微笑んだ。
「これからお話しすることは、キリアやミリアにも話してはいないことなんですけど」
私がそう言うと、キリアが心配そうに私を見た。
私は大丈夫だ、と頷いて見せる。
「私と同じ日本にいた記憶があるお母様なら、わかるかもしれないけれど、キリアやミリアには、信じられない話かもしれないわね。それどころか、何を言ってるんだって怒られちゃうかしら」
「そんな!お嬢様のことを信じないなんて絶対にありません!」
「わ‥私も!あ‥‥大丈夫です‥多分‥‥‥」
ミリアは、私がかつて生きていたこの国の公爵令嬢の生まれ変わりだと言った時、すぐには信じることができなかったから心配なのだろう。それは仕方ない。
キリアでさえ、信じるのは難しいかもしれないと思えるし。
それどころか、同じ転生者である母マリーウェザーも納得できるかどうかと思うほど、これから私が言うことは荒唐無稽な話だろう。
いや、しかし母もわかっている筈。
この世界が、かつて生きていた日本がある世界とは全く違うものだということを。
「お母様。この世界が、日本の企業が作った乙女ゲームの世界だと言ったら信じます?」
は?とマリーウェザーはダークグリーンの己の瞳を大きく見開いた。
ポカン、と呆けたようなその顔を見ると、彼女が心底驚いているのがわかる。
きっと、予想もしていなかった話なのだろう。
「え、何?この世界が乙女ゲーム?冗談でなく?」
「嘘でも冗談でもありません。この世界は、私がハマっていた、ある乙女ゲームの世界なんです」
───────ーーー
「うっ‥そおぉぉぉぉ!ちょっと待って‥‥え?パラレルワールドとか並行世界とかじゃなく?」
「やっぱりわかってたんですね。まあ、似たようなものです。異世界なんですから。私やお母様みたいな境遇は、異世界転生と言うんですよ。私が乙女ゲームをやってる時、そういう話が人気で本やネットでもその手の話がたくさんありました。さすがに乙女ゲームの世界に転生するという話は読んでないんですけど」
あることは知っていたが。
「信じられないわ‥‥乙女ゲームの世界ですって?そんな、人が作ったような世界が本当にあるの?」
「私も自分がそういう世界に転生するなんて思ってもみませんでした。しかも二度も」
あ、ああ‥とマリーウェザーが私を見て頷いた。
「そうね。でも、本当にそんなことが───」
いやいや、とマリーウェザーは頭を左右に振る。
「私が前世を思い出したのは、突然婚約者から婚約破棄を言われた時なんだけど。頭に血が上っちゃってね、意識を失ってしまったの。気づいたら、前世を思い出していて、自分が生まれ変わっていたことを知ったわ。最初は混乱したわよ。王国で貴族でしょ?最初は中世ヨーロッパにでも生まれ変わったのかと思ったわ。でも、いろいろ知るうちに、ここが私の生きていた世界とは違う世界だとわかったの。異世界転生──ええ、そうね。異世界としか思えないわね。まあ、とにかく前世を思い出したおかげで、婚約破棄を引きずることなく生きてこれたのだけど」
「あのぅ、お嬢様‥‥乙女ゲームというのは、いったいなんですか?」
首を傾げながら質問してくるミリアに、私は微笑んだ。
わからないのは当然だ。この世界にはパソコンどころか、ゲーム自体がないのだから。
「え〜と。恋愛小説みたいなものと言ったらわかるかしら」
「恋愛小説ですか──はあ、わかります。お嬢様のお話では、この国は恋愛小説の舞台になっているということですよね」
「ええ。でも恋愛小説の舞台というよりは、私たちがその小説の中にいるといった方がいいかしら」
う〜ん、とマリーウェザーは、自分のこめかみに人差し指を当てて小さく唸った。
「アリスちゃんは、ゲームをやったことがあるのよね。だったら、ヒロインや攻略対象となっている人間も存在してるの?」
「はい。私がやっていたゲームのヒロインは、シルビア・ハートネルでした。攻略対象は、レトニス王太子と公爵家嫡男のハリオス・バーニア。次期宰相と言われていたダニエル・クリステラ。騎士団長の子息で騎士見習いのロナウド・カマー。そして、隠しキャラで、学園卒業後に商会を立ち上げたアレック・ドリアンです」
「はあ〜〜?!アレック・ドリアンですって!」
マリーウェザーの瞳が大きく見開かれた。
「お母様のご存知の方ですか?」
「ご存知もなにも!アレック・ドリアンは、私に婚約破棄を突きつけたバカよ!何?あの男、ヒロインと結婚したかったわけ?!」
「いえ、お母様。アレック・ドリアン様とヒロインのシルビア 様は会ったことも接点もなかったようなので関係はないかと。隠しキャラは、ヒロインが表に出すイベントをこなさなければ出てきませんから」
「はあ?そうなの?乙女ゲームのことはよくわからなくて。しかし、本当に見事に実在の人物と重なっているわね。それに、乙女ゲームのキャラの設定ってだいたい、学生じゃなかった?ということは、乙女ゲームの舞台は27年前の王立学園───そうなのね?」
はい‥‥と私は頷いた。
「じゃあ、セレスティーネ・バルドー公爵令嬢も登場人物の一人なのね。どういう役どころだったの?」
「セレスティーネのゲームでの役どころは‥‥‥悪役令嬢でした」
「悪?お嬢様が悪だというのですか!そんな馬鹿なこと!」
幼い頃からから、ずっとセレスティーネの側にいて世話をしてきたキリアには、納得できずに憤るのはわかる。実際、私は悪役と呼ばれるようなことをやった覚えはなかった。
「悪役令嬢というのは知っているわ。姪がやっていたゲームにも出てきていたから。ヒロインが攻略対象に接近すると邪魔をしまくる存在だったわね。そして最期には断罪されて、ヒロインの前から消え去るという、いわばヒロインのライバル役かしら」
なるほどね、とマリーウェザーは納得した顔になった。
そういうことだったのか、と。
マリーウェザーは、疑問に思っていた卒業パーティーで何が起こったのか、朧げながらも理解したようだった。
「でも、ゲームだとしてもひどすぎないかしら?セレスティーネ様も、バルドー公爵夫妻も亡くなり、嫡男のアロイス様まで行方がわからなくなるなんて。そんな酷いことをされるようなことを悪役令嬢はしたの?それに、シルビア様がヒロイン?王妃にはなったけど、とても幸せだったとは思えないのだけど」
「ゲームの世界といっても、閉じられた狭い空間ではないし、時間も止まったりはしません。この世界は異世界ですが、私やお母様が生きていた日本と同じなんです」
「ああそうね。時間は止まらないわ。私もちゃんと年を取っているし、世界はこの国だけじゃない。ヒロインが望み通りに攻略対象と結婚してめでたしめでたしとなっても、そこで終わるわけじゃない。うまくいかなかったからってリセットできるわけでもない。つまりヒロインは結婚した後、うまくいかなかったのね」
「セレスティーネだった私が前世の記憶を思い出したのは死ぬ間際でした。だから、ゲーム開始の入学式から卒業まで、私は何も知らなかったんです。でも、ゲームであったようなヒロインに対するいじめや嫌がらせはした覚えがありません」
「それは、ゲームの悪役令嬢じゃなく、日本から転生したあなただったからじゃない?持って生まれた性格というのもあるし」
「私もそう思います。転生してきた私たちは、この世界では異分子、もしくは特異点のようなものじゃないのかと。だから、ゲーム通りにシナリオが進んでいくわけじゃない。でもゲームを知っている人間がいたら、ゲーム通りに進めようとしますよね。でもゲーム通りには動かない者もいる。それが歪みをもたらすことになるんじゃないかと」
「歪み?」
「私がやっていた、この世界の元になっているだろうゲームでは、セレスティーネは死なないんです。私は隠れキャラも出したし、ハッピーエンドもバッドエンドも全てやり込みました。でも、悪役令嬢であるセレスティーネが死ぬ話はないんです」
「え?どういうこと?」
「前世で死ぬ時に、日本にいたことやゲームのことを思い出しました。その記憶はセレスティーネの記憶と共に今の私、アリステアに受け継がれています。不思議でした。この世界が日本でやっていた乙女ゲームだというのは間違いないと思うのに、何故セレスティーネが死ぬのか」
「記憶に間違いないの?」
「間違いないです!だいたい、あのゲームの対象年齢は15歳。たとえ悪役でも殺されるようなことはない筈です」
「殺される?」
マリーウェザーの眉がひそめられるのを見て、私はハッとなって口を閉じた。
失言だった。セレスティーネの死因だけは言いたくなかったのだが。
「セレスティーネ公爵令嬢は、殺されたの?いったい誰に!?」
「‥‥‥‥」
「お嬢様を殺したのは‥‥」
「キリア、駄目!」
名前を言おうとしたキリアを私は止めた。
「お嬢様!あの男はお嬢様を死なせたのに、なんの罪も問われなかったのですよ!お嬢様を無実の罪で責め立てたあいつらは───今ものうのうと生きているんです!」
「でも、シルビア様は修道院に幽閉されているのでしょう?」
「そんなこと───!」
「ああ、そうよね。乙女ゲームのヒロインが幽閉っていうのもおかしな話だわ。そういうのもあるのかもしれないけど。アリスちゃんが言いたくなければ言わなくてもいいのよ。女子会する前に言ったでしょ。話したくないことは話さなくていいって」
「すみません、お母様‥‥‥」
「いいのよ、アリスちゃん。それより、ほんとに乙女ゲームの世界なのねぇ」
マリーウェザーは、疲れたように溜息をついた。
「ゲームの世界といっても、先程言ったように普通に歴史も人の営みもある世界で、ゲームと言えるのは、開始の学園入学から、話の終了である卒業式あたりまでの3年ほどです」
「その間は設定通りに物事が動いているのよね」
「だいたいは、です」
「私はゲームの登場人物の 中にはいないのよね?」
「はい。お母様の名前はありませんでした」
マリーウェザーは、はぁぁぁぁぁ‥と深く息を吐き出した。
「そうでしょうねえ。貧乏伯爵家の人間で、目立ったことがあるわけでもなし。でも、その3年間、関わりがなくても、ゲームの設定の中にいたかと思うと、なんか吐きそうになるわ」
「お母様‥‥‥」
「でも、もうそのゲームは終わったのよね」
あ、いえ、と私は困ったような顔をした。どうしよう、これは言うべきなのか。
「何?何かあるの?まさか、その乙女ゲーム、まだ続いてるんじゃないでしょうね!そういえば、27年前の関係者、まだ生きてたわね」
「そのゲーム──実は続編があるんです」
「続編!いったいどんな!?」
「わかりません。続編が出る前に、日本にいた私は死んだので。それも、企画があるというだけの情報で、話の 内容も登場人物も全くわからないんです。ただ、ゲーム情報誌には悪役令嬢の名前とイラストだけが書かれてありました」
「なんで悪役令嬢?ヒロインじゃないの?」
「そうですよね。でもなんかその頃、悪役令嬢というキャラに人気があったみたいなんです」
「そうなの?わからないものね。まあ、ライバル役の方に人気が出るというのも確かにあるにはあるけど。それで?続編の悪役令嬢の名前はなんていうの?」
「アリステア・エヴァンスです」
マリーウェザーの両の拳が勢いよくテーブルを叩きつけた。
もう完全に彼女は自分が伯爵夫人だということを忘れている行動だった。
さすがに奥様大好きなミリアも顔が引きつり身体が引いている。
キリアはというとさすがで、衝撃で倒れかけたポットを支えていた。
「どういうこと、それ?偶然とは思えないんですけど」
「ええ。私も知った時は本気で悪意を感じました。私が前世のセレスティーネのことを思い出したのは5歳の時です。そして、自分が続編の悪役令嬢だと知ったのは社交界デビューの日でした」
「社交界デビューって、12歳じゃない!思い出したばかりなの?」
そうですね、と私は笑った。
「笑い事じゃないわよ。前回はあんな酷いことになったのに、今度もなんて」
マリーウェザーは頭を抱えた。
「私、はっきり言って怖いです。あのゲームの内容は間違いなく人の死に関わるものはなく、断罪された悪役令嬢でも退学か一番重くて国外追放くらいで、死ぬようなことはなかったんです。なのに前世のセレスティーネは───」
セレスティーネだけではない。私を愛してくれていたお父様お母様が亡くなり、お兄様もいなくなった。
どうして?何故、そんなことになったのだろう。どんなに考えてもわからない。
悪役令嬢が転生者だったから?
セレスティーネの死が原因なのか。家族がもういないことを知って、私は涙が枯れるほど泣いた。なのに、やはり家族のことを考えると涙が出そうになる。
「お嬢様‥‥」
キリアの手が私の背を労わるように撫でてくれた。
キリアも、またあの悲惨な場所にいて怒りと悲しみに涙を零し続けたのだ。
「続編の始まりもやっぱり学園の入学式から?」
「そうだと思います。あのゲーム会社が出すのは殆ど学園が舞台になるものですから」
「アリスちゃんの入学まであと一年余りかぁ。それまで何も出来ないのが悔しいわね。まあ、貴族の情報くらいは仕入れられるかしら。ヒロインはわからないけれど、攻略対象の目星くらいはつけられるでしょ。そういえば、第二王子がアリスちゃんと同じ年だったわね」
マリーウェザーの第二王子という言葉で私は昔のことを思い出す。
そういえば。
「あまり覚えてないんですが、第二王子とは5歳の時にパーティーで会ったことがあるんです。ご両親に似てないので、教えてもらうまで全然気がつかなかったんですけど」
「第二王子はクローディアが生んだ王子じゃないからね」
「えっ、そうなんですか?」
「王太子を生む時、かなりの難産だったみたいで。無事に生まれたけれど、クローディアはもう二度と子供を産めない身体になったの。第二王子は側妃になった侯爵家の令嬢が生んだ王子よ。顔立ちも母親にそっくりで、国王さまに似た所はないわ。王太子は、アリスちゃんより10歳年が上だったわね。クローディア似の金茶の瞳に、国王レトニス様と同じ金髪の美男子よ。卒業してしばらくは王宮で仕事をしていたようだけど、今はガルネーダ帝国に留学中だったかしら。年齢差はあるし、婚約者ももういるから攻略対象からは外れるわね」
「そうですね。私も王太子にお会いしたことはないので、攻略対象は第二王子ではないかと」
「後は、アリスちゃんの婚約者あたりかしら。侯爵家の嫡男だから、ありえそう」
「──はい。私もそうじゃないかと思ってます」
「私はまだ会ってないけど、アリスちゃんは婚約者のこと好きなの?」
「よくわからないです。弟みたいで可愛いとは思うんですけど」
「ああ、そういう感じなのね。そうか。まだ12歳だったわね。じゃあ、あと考えられる候補を何人か調べておくわ」
「すみません、お母様」
「いいのよ。私、こういう仕事は大得意よ。任せておいて」
「私もお手伝いします、奥様」
「そうね。あなたもこういうこと得意そうね、キリアさん」
顔を見合わせてニッコリ笑う二人は、ほんとに頼もしそうだ。
「私はお側にいてお嬢様を守ります!」
まだよく話が理解できていないようなミリアが、これだけは譲らないとばかりに大きな声で宣言した。頼もしい。
また悪役令嬢に生まれ変わった自分の不運に嘆いたりもしたが、やっぱり私は恵まれているのかもしれない。
芹那の時もセレスティーネの時も、そしてアリステアに生まれ変わった今も、こんなに人に恵まれている。
一人じゃない自分はとても幸せだ。
次からいよいよ学園生活の始まりですvレベッカも登場v