レガール国貴族学院
一ヶ月振りの更新です。それでも、まだ10月だ!間に合って良かった^_^;
シャリエフ王国の南に位置するのがレガール国だ。
王都と一部を除いて広大な農地が広がる農業国であるシャリエフ王国に対し、レガール国は海に面した部分が多いので他国との交易が盛んな国だった。
シャリエフ王国の東に小さな港があって、そこではレガール国との交易が行われている。
入る船は大半が商船であるが、レガール国や島の観光に向かう客船も少ないがあった。
今回、レガール国へ向かうのに、レベッカのツテで商船に乗せてもらったが、もし機会があれば、観光船にも乗ってみたいと私は思っている。
レガール国は、商業や生産業を主な産業として他国と取り引きしているからか、かなり裕福な印象だった。シャリエフ王国ほどではないが、広大な農地もあるから自給率も高そうだ。
レガール国の中心ともいえる王都には、シャリエフ王国には見られない高い建物が多く、特に教会の塔は圧倒されるほどで、150メートル以上はあるのではないだろうかと思えた。
馬車から見ただけだが、教会の荘厳さは言葉を失うほどだった。
そして、私が留学することになったレガール国の貴族学院もまた、重厚な趣のある建物だった。
白亜の城のようなシャリエフの王立学園に対し、レガールの貴族学院は赤茶色のレンガ作りの、古い歴史を感じさせる建物だった。
広大な敷地の中に学舎と、実家が遠方なため通学できない学生のための寮がある。
学舎から少し離れているが、三階建ての白い建物が女子寮で、男子寮はさらに奥にあるらしい。
貴族学院に来て三日目の朝、私はミリアに手伝ってもらいながら、初めての授業を受けるための準備をしていた。
寮生は、片付けもあるので、入寮して二日は登校しなくていいことになっていた。
確かに、持ち込んだ荷物や、実家から届いた荷物を整理するだけでもかなり時間がかかる。
私のメイドとしてついてきてくれたミリアと、私の護衛をしてくれるアスラの三人で頑張っても一日で片付けられそうにない。
授業を終えたレベッカが、差し入れを持って来てくれたが、さすがに手伝ってもらうわけにもいかないので、休憩と称してみんなでお茶したら、余計に時間がなくなってしまった。
とにもかくにも、私たちは頑張って荷物を整理した。
寮は、学生の部屋と使用人の部屋がドアで繋がっている。
使用人が二人と伝えておいたので、ちゃんとベッドが二つあった。
使用人の部屋には、簡易キッチンもあるので、お茶の用意だけでなく、ちょっとした料理が作れそうだ。
シャリエフの王立学園には、少ないが平民の学生もいるのだが、レガールの貴族学院は貴族の子女だけのための学校なので貴族しかいない。
平民が通う学校はちゃんとあるようで、十歳から三年間、読み書きや計算を習うそうだ。
実は国民の識字率はシャリエフ王国よりレガール国の方が高いらしい。
そのレガール国より高度な教育システムをとっているのが、ガルネーダ帝国だが、何故かそのことはあまり知られていないようだ。
「とってもお似合いです、お嬢様!」
いつものように髪をセットしてくれたミリアが、姿見の前に立つ私を見て歓声を上げた。
髪は上半分を後ろで一つにまとめ、緑色のリボンで結んである。
リボンは、アスラがプレゼントしてくれたものだ。
シャリエフ王国にはなかったが、レガールの学校には制服があるので、今、私が着ているのはこの世界で初めて着る制服だ。
制服は白が基調のワンピースで、上着はロイヤルブルーというか、鮮やかな紺色のボレロだった。
鏡に映る、制服を着た私は、なんだか少し大人っぽくなったように見える。
そういえば、私ももう十六歳だ。前世の私……セレスティーネが亡くなった年に近くなった。この先、何も起こらなければ、私はセレスティーネの年を追い越して、結婚し──そうして、芹那もセレスティーネも持てなかった、自分の家族が持てるだろう。
ドアが開く音がして振り向いた私は、現れたアスラに目を瞬かせた。
ミリアもびっくりした顔で彼女を見ている。
「まあ、良かった。ぴったりね、アスラ。似合ってるわ」
私が笑みを浮かべて褒めると、アスラは、少し戸惑うような表情をした。
アスラが着ているのは、黒の執事服だ。
さすがに、学校内で傭兵の格好はないので、母マリーウェザーがアスラのために服を用意してくれていたのだが、女性の服では護衛は務まらないと拒否され、どうしようかと考えた所、レベッカが執事服を持って来てくれたのだ。
レベッカの執事のものだというから、イリヤのだろう。
五歳の時に一度だけ会ったイリヤは、三歳年上だったからアスラと同じ年の筈。
成長したイリヤを知らないが、男性と女性では体型が違うのではと思ったが、レベッカは、見た感じ問題ない、大丈夫だと言った。いや、それってどうなんだろう。
でも、こうして借りた執事服を着たアスラを見ると、違和感なく、レベッカの言った通りで問題ないように思えた。
「服が大きく感じたりしない?」
「ああ、大丈夫だ」
「本当に誂えたみたいにぴったり!格好いいですね、お嬢様」
「ええ、ほんとに素敵よ、アスラ」
「アリスも素敵だ」
「そう?制服があるって聞いた時から気になってたのだけど。似合ってるかしら?」
私が、スカート部分をちょっと摘んで聞くと、アスラは、うんと頷いた。
アスラの、少しだけ浮かんだ笑みが可愛らしいと思う。
ずっと硬い表情だったアスラが、笑ってくれるのが嬉しい。
「じゃあ、行きましょうか」
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
アスラがドアを開けると、ミリアが丁寧に頭を下げて見送ってくれた。
さあ、レガールの貴族学院での初登校だ。
アスラが、学舎までついてきてくれる。
期待と不安を胸に、私はアスラと共に寮を出ると、赤茶色のレンガの学舎へ向かって歩いた。
短くてすみません。できたら今月中にもう一話更新したいな。