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前世での侍女と再会した。

更新遅くなりました。今日はコ●ンの映画見に行ってたもので。キッドファンです。

初日初回は外せなかった‥‥‥

とりあえず私の社交界デビューは無事に終えた。

前世で社交界は慣れていてもやはり緊張はする。何だかんだと言っても身体は子供だ。

大人だった時の記憶を持っていても、精神はまだ成長途中なのだ。


あの日のサリオンの告白には驚いたが、一番驚いたのはダンスがうまかったことだろうか。

ダンスは淑女教育の一つで習ってはいたが、得意というほどではなかったから、助かったといえば助かったかも。

前世の時も苦手というほどではなかったが、得意でもなかったから、これはもう芹那の時からそうなのだろう。


芹那の時は、走るのが好きでよく市民マラソンとかに参加していた。

が、それ以外はといえば、体育の授業で身体を動かすくらいで何もしない。

どちらかといえば、私はインドアタイプだった。

本を読んだり、映画を見に行ったり。あと、ゲームが好きだった。


王立学園に入るまで後二年。

これが続編の乙女ゲームなら、開始は当然学園に入学してから。

ヒロインも学園に入って来るはず。

名前も姿もわからないヒロインだから注意して見た方がいいだろう。


攻略対象も前のゲーム設定と大きく変わることはないだろうから。

悪役令嬢の婚約者であるサリオンと、第二王子のエイリックは多分確定。

後は、目立つ人物をピックアップしておけばいいだろう。

とにかく、学園に入るまでは何も起こらないのだから悩んでも仕方ないか。




社交界デビューから一週間して、私は再びトワイライト侯爵家を訪れていた。

ドレスを贈ってくれたトワイライト夫人にお礼を言うためだ。

サリオンが言ってた通り、夫人は私をとても歓迎してくれた。


「なんだか、少し大人っぽくなりましたね、アリステア」


そうでしょうか?と首を傾げると、夫人は、まあ!と目を大きく見開いた。


ああ、本当に可愛いわ!と夫人は嬉しそうに私を抱きしめた。

少しふくよかな夫人に抱きしめられると、とても気持ちがいい。

暖かくて柔らかくて、そしていい匂いがする。

実の母親には最後まで抱きしめられた記憶がなかったから、今やっと母親というものを思い出した気がした。

芹那の時もセレスティーネの時も母というのは暖かくて安心できる存在だったのだ。


「うちの息子にはもったいないくらいだわ。でも、ちゃんとお嫁に来てね」


はい、と私が頷くと、夫人は優しく微笑んだ。

ついてきてくれたミリアもなんだか嬉しそうに笑っていた。

後で聞いたら、父親が決めた縁談には少し不安を感じていたそうだ。

まあ、あれだけ娘に無関心の父親が決めてきた縁談だから、娘の幸せなんて二の次のものだろうと思うのも仕方ない。


でも私がここにお嫁に来れるかは微妙かしら。

ヒロインがサリオンを攻略対象にしなければ、可能性はあるかもだけど。

あ、そういえばサリオンってば、初恋の子がいるって言ってたじゃない!

もし見つかったら婚約は破棄してサリオンはその子と結婚することになるわね。

残念だわあ、ここはとても居心地いいのに。


夫人はポーチにお茶の用意をしてくれた。

空は青く、優しい風が吹いていて心地いい。

庭の手入れも良くされていて、咲き誇る花々が美しかった。


「今日はね、アリステアが来るというから特別なお菓子を用意したのよ」


「特別な、ですか?」


「そうなの。街にね、昔からご夫婦がやってらしたカフェがあったのだけど、高齢で引退し、店で働いていた人に譲ったらしいのね。その人が時々作るお菓子がとても美味しくて評判なのよ。でもそのお菓子がいつ出るかわからなくてね。しかも、数は限定」


「それは大変ですね」


「使用人に毎日頼むわけにはいかないしねえ。でも昨日ダメ元で買いに行ってもらったら丁度あったのよ!」


トワイライト家の侍女が、テーブルの上に置いてある銀の器の蓋を開けた。

ふわっと香ったのは甘いチョコの香り。

侍女が器から小皿に取り分けたのは小さな花の形をしたケーキのようなお菓子だった。


どうぞ、と夫人に勧められ、私は小皿から一つお菓子を摘むと口に入れた。

口に広がるのは、チョコの甘さ。クッキーかと思ったが、生地はしっとりしている。

甘さもそんなに強くなく、上品な甘さだ。

噛むと、酸味も。オレンジピールが入っていたようだ。


「どう?美味しいでしょう」


「‥‥‥」


「アリステア?」


呼ばれて私はハッとした。


「あ、すみません!初めて食べる味と食感だったもので」


「そうでしょう。たくさん食べてね」


「はい。ありがとうございます。頂きます」


私はもう一つ口に入れた。懐かしい味だった。

昔食べたあれは、クッキーじゃなくて、少し固めのケーキだったが。


新しいお菓子を作っては持ってきてくれたのは誰だった?

いつも側にいてくれて、明るく笑ってくれていたのは。


「あの‥‥これを売っているお店はどこですか?」



夫人にお店の場所を聞いた私は、帰りに寄ってみたいとミリアに頼んだ。

快く教えてくれた夫人は、限定のお菓子はないだろうから、と残っていたクッキーを全部紙の袋に入れて持たせてくれた。

優しい方だ。サリオンが羨ましい。


貴族の馬車は目立つので、街の入り口で馬車を降りミリアと一緒に教わった道を歩いた。

店はさほど迷うことなく見つかった。

赤いレンガ造りの、年代を感じる小さなカフェだった。

オープンカフェにもなっているらしく、店の外にも三つほど椅子とテーブルがあり、若い男女や、老夫婦がお茶を飲みながら会話を楽しんでいた。


「感じのいい店ですね、お嬢様」


ミリアも初めてなのか珍しげに店の中を見ている。

ミリアは田舎から出てきたので、街のカフェは初めてなのだろう。

アリステアも生まれて初めてだが、前世では侍女と一緒に街に買い物に来たことは何度かあった。二人でアクセサリーを見たり、本屋で本を選んだり。

帰りにお母様たちのお土産にケーキを買ったりした。


店は本当に小さくて、テーブルが五つ、あと厨房の前のワゴンにお菓子が入ってるらしい袋が並べて置いてあった。


「紅茶のいい香りがするわ」


「あ、そういえば、コック長のタリスさんが欲しがっていた紅茶の店があるのがこの街だったかと」


「あら。店の名前はわかる?」


「はい。覚えてます」


「一人で行けそう?」


「人に尋ねれば多分──有名な店らしいので」


「じゃあ、買ってきて。私も飲んでみたいし」


「えっ、でも、お嬢様は」


「ここでお茶を飲みながら待ってるわ。大丈夫。店からは一歩も出ないから」


「本当ですね?ちゃんと待っててくれますね?約束ですよ」


「心配性ね、ミリアは」


私はクスクス笑って右手を上げて宣誓する。


「アリステアは、この店でミリアをちゃんと待ってます」


「わかりました。行ってきます」


ミリアは頷くと、最後にもう一度念押しして店を出て行った。


私が奥の席につくと、やや年配の女性が注文を聞きにきた。


「何にするかね、お嬢ちゃん」


「あのね、キリアに会いたいんだけど、いるかしら」


女性は、おや?という顔で私を見た。


「キリアの知り合いかい?」


私はこくんと頷く。


「キリアは今買い物に出てるんだけど。そうだね、二階で待ってるかい?これから客が増えてくるし、さっきのメイドを待ってるんだろ?上の部屋で待ってる方がゆっくりもできるし」


「ありがとう。じゃあ、紅茶とケーキをお願い」


「あいよ」


人の良さそうな女性に案内されて、私は店の休憩室だという部屋に入った。

部屋には古ぼけた二人用のソファがある。

私はそれに座って待ち人を待った。


ああ、やっぱりキリアなんだ。

トワイライト家で食べたクッキーの味。あれはセレスティーネの時に侍女のキリアが作ってくれた味に似てた。

キリアだと確信したわけではない。

あれから、30年近くがたつ。ずっとバルドー家で働いてるかどうかわからない。

結婚したかもしれない。

前世を思い出してから色々考えた。家族のこと、キリアのこと。


違うかもしれない。でも、試しに聞くだけ聞いてみようと思った。

そうしたら、キリアがいるという。


でも会ってみたら別人ってこともあり得るわね。

それはそれでもいいのだけど。


ノックの音がして、先ほどの女性と同じくらいの年代の女性がトレイに紅茶とケーキをのせて入ってきた。


私は、ポカンとその顔を見つめた。

年を取っていた。あれから30年近い。それでも、白髪は混じっているものの、茶色い髪も、鳶色の瞳も、いつも明るく笑っていたその顔も紛れもなくキリアだと思った。

キリアはテーブルの上に運んできた紅茶とケーキを置いた。

そして、言葉を失っている私の方に顔を 向けた。


「私に会いたいというのはお嬢さん?」


「ええ‥‥そうよ、キリア」


「私はキリアだけど、どこかで会いました?」

キリアは覚えがないというように首を傾げた。


「‥‥‥」


ああ、どうしよう。会いたいとは思ったけど、会ったらどうしようとか考えてなかった。

ほんとのことを言う?

でも、信じてくれないかもしれない。いえ、信じるわけない。あり得ないもの。

けど──


私はソファから立ち上がるとキリアと向き合った。


「キリア。私よ。セレスティーネよ」


キリアの表情が変わる。驚いた顔をし、私から一歩後ずさった。


「な‥にを──何を言ってるの!セレスティーネ‥って、あなた‥‥誰!」


「生まれ変わったの。信じてくれなくてもいい。ただ、あなたに会いたかった」


戸惑うキリアの表情が、次第に怒りの色を浮かべるのをみて、私はふっと目を伏せた。


「ごめんなさい」


私が謝ると、キリアの顔から怒りの色が消える。

だが、警戒心は残ったままだろう。

ごめんなさいと、私はもう一度謝った。

あの時、キリアはホールにはいなかったが、間違いなく近くにいたのだ。もしかしたら、死んだ私を最初に見たのはキリアかもしれないと、今更に思い至った。


私は顔を上げて、キリアの顔をまっすぐ見上げた。


「ごめんなさい。あなたはきっと見たのよね‥‥私を‥‥セレスティーネを」


「なにを──なんで‥‥」


きっと見た。キリアは、剣で殺された私の亡骸を。

キリアはきっと嘆いた。悲しんだ。だって、約束してたから。


「パーティーが終わったら、家に帰ってずっとお喋りしようって──ケーキを作ってるからって‥‥新作だから‥‥絶対気に入るって」


「‥‥‥‥」


「ごめんなさい‥‥約束‥‥してたのに‥‥‥ごめん、キリー」


キリアは、ハッとして青ざめた顔で口を両手で覆った。

ああ!!


キリアは震える両手を伸ばすと私の身体をきつく抱きしめた。


「あ・あああぁぁぁ!お嬢様!お嬢さまぁぁぁぁっ!!」


書きためていた分がなくなったので、更新は間があくかも。

次回は、セレスティーネが死んだ後の展開を書きます。

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