断罪された王子さま。(後)
ようやく馬車がシャリエフ王国に入ると、ずっと機嫌が悪かったレベッカの表情がほんの少し和らいだ。
とはいえ、それは幼い頃から彼女を知っている者だけがわかる微妙な変化であったが。
「お嬢様。そのように眉間に皺を寄せていては、跡が残りますよ」
「いいのよ。そんなのは化粧でいくらでもごまかせるから」
またそんなことを、とイリヤは、しょうがないなという顔で溜息をついた。
馬車には真っ赤なドレスを着たレベッカと、白いシャツに上下黒のイリヤの二人だけが乗っていた。シャリエフ王国の王立学園についてきてくれたメイドのマイラの姿はない。
何故かというと、レガールの王宮にいたレベッカが、いきなり走り出して馬車に飛び乗ったからだ。幸い、レベッカの突飛な行動には慣れているイリヤだけが彼女に追いついた。
馬鹿をやらかしたのは王太子だが、それにしても王宮内を騒がせた一人がさっさと国からいなくなるというのはどうだろうか。
王や王妃には、ある程度の情報を前もって報告していたから、騒動を収めるのにそれほど長い時間はかからないと思うが。それでも関係者の一人であるレベッカの突然の出奔は問題になるだろう。
まあ、その辺の所は、ルカス様がなんとかするだろうが。
あの方は、そういうことに関しては信頼できるとイリヤは思っている。
「何?言いたいことがあるなら言えばいいでしょ」
「いえ。今考えれば、騒ぎの最中に国を出たのは良かったと思いますよ。騒ぎが落ち着いた頃になれば、簡単に国から出してもらえなかったでしょうから。ま、お嬢様のことですから、それを見越しての行動ではなかったんでしょうけど」
「単細胞とでも言いたいわけ?そもそも、ルカスがあんなこと言うからじゃない!」
ルカスは以前から、レベッカが留学するシャリエフ王国にも悪役令嬢がいて、やはり断罪イベントが行われると言っていた。
だから、マリアーナ侯爵令嬢が第二王子のエイリック殿下から、エレーネに対する虐めや嫌がらせを糾弾されるのを見て、それがルカスの言っていた断罪イベントだとレベッカは思ったのだ。
が、それが違うとわかったのは、弟のルカスが初めて悪役令嬢の名前を口にした時だ。
『え?悪役令嬢は、マリアーナ・レクトンじゃないけど?シャリエフ王国の悪役令嬢はアリステア・エヴァンスだよ』
あの時、拳を握りしめたレベッカのまわりは、怒りのオーラが渦巻いて、さすがに彼女に慣れているルカスでさえも顔を引きつらせ後ずさりしたくらいだった。
「ふざけてるわ!なんでセレーネが悪役令嬢なのよ!」
だいたい、うちの弟は、そんな重要なことを何故もっと早く言わないのだ!
「ルカス様に怒っても仕方ないですよ。ルカス様は、お嬢様のご友人の名前をセレーネだと思っていらしたのですから」
「わかってるわよ!」
弟に、初めて出来た親友のことを愛称でしか伝えていなかった己のミスだ。
だが、そんな事実があるなんて思わないではないか。
レベッカは、プイと顔をそむけ、馬車の窓から外を見た。
「遅いわね!まだ王都に着かないの!」
「‥‥‥‥‥」
イリヤは、イライラして御者に八つ当たりするレベッカに対し、もう何も言わなかった。
レガールを出て丸1日が過ぎる。それでもうシャリエフ王国に入るというのはかなり早いのだ。
普通は2日かかる。夜通し馬車を走らせるわけにはいかないので、途中の村で宿泊するためだが、今回は一刻も早くというレベッカの希望で、休むことなく三回馬車を乗り換えての強行軍となった結果、1日で目的地に着いた。
普通の貴族の令嬢なら、とても耐えられたものではない苦行だろう。
だが、夜会用のドレスを着たままの状況であるにも関わらず、レベッカはこの苦行をものともしていなかった。
驚異的な速さでシャリエフ王国に戻ってきたレベッカだが、既にアリステアがこの国にいないことを彼女はまだ知らない。
「マリアーナ様!」
夜会があった日より実家に戻っていたマリアーナの姿を学園の窓の外に認めた二人の少女が、急いで彼女の元へと駆けていく。
5歳の時、王宮で出会ってからこれまで、変わることなく友人としてマリアーナの側にいた彼女たちは泣いていた。
公の場で第二王子に断罪され婚約候補を外されたマリアーナのことを彼女たちはずっと心配し心を痛めていたのだ。
「ああ、お元気そうなご様子で安心致しました!」
「マリアーナ様に何かあったらと、本当に心配で‥‥‥」
マリアーナは子供の頃からそばにいてくれる彼女達に向けて優しく微笑んだ。
「心配してくれてありがとう。私は大丈夫です。それよりもアリステア様のことですわ」
ハッとしたように彼女たちはマリアーナを見た。
「ああ!お聞きになられていたんですね!ほんとに、なんて酷いことを!」
「そうですわ!国外追放なんて、酷すぎます!」
「国外追放?いったい誰がですの?」
三人だけと思っていた所、突然声をかけられた彼女たちはビクリと肩を揺らした。
声の方を見ると、赤いドレス姿のレベッカが立っていたので彼女たちはさらに驚いた。
「ま‥あ!レベッカ様!お帰りになられていたんですの?」
「たった今、帰ってきましたわ。それより、先程お話されていたことですけど。誰が国外追放になったのですか?」
レベッカに問われた二人の少女は、困ったようにマリアーナを見た。
マリアーナは、仕方ないというように小さく息を吐き出すと、アリステア様ですわと答えた。
途端に、目の前のレベッカの表情が険しくなり、彼女の周りからブリザードが吹き荒れた。
勿論、そう感じただけであったが、マリアーナの友人二人は短い悲鳴を上げて固まってしまった。
「どういうこと?私がいない間に何があったの?」
「お嬢様。事情をお聞きしたいのはわかりますが、その前にブリザードを静めて下さい」
「はぁあ?ブリザードってなんのことよ」
レベッカの背後にひっそりと控えていたイリヤが注意すると、彼の存在に初めて気づいたというようにマリアーナたちは目を瞬かせた。
「レベッカ様、そちらの方は?」
「ああ、彼は私付きの執事ですわ。メイドのマイラが出発に間に合わなくて代わりに連れてきましたの」
「イリヤと申します。お見知り置き頂けると幸いです」
イリヤは右手を胸に当て、令嬢たちに向け頭を下げた。
その綺麗な所作に、彼女たちは見惚れてほぉっと息を吐く。
イリヤが声をかけたことで、なんとか気を鎮めたレベッカに向けてマリアーナが微笑む。
「何があったかお話しますわ、レベッカ様。でも、その前にお着替えした方がよろしいわ。かなりの強行軍で帰っていらしたようですわね」
マリアーナに言われてレベッカは己の姿を顧みる。
確かに見苦しいほどではないと思うが、髪はやや乱れ、ドレスも埃がついて汚れていた。
「部屋へ行きましょう。メイドがいらっしゃらないのでしたら、私、お手伝いしますわ」
「え?」
「ええ!そうですわ!お風呂に入られた方がよろしいわ。私たちもお手伝いします」
レベッカはマリアーナ達にそう促され、寮の方へ足を向けた。
その後を、少し離れてイリヤが続く。
この日、マリアーナが学園に戻ってきたのは、エイリック殿下よりパーティーの招待を受けたからだった。
マリアーナがモーリス・グレマンより受け取った虐めの記録について説明をしたいと伝えると、何故か返ってきたのが招待状だったのだ。
先日の夜会が不本意に終わったので、休日の午後に立食パーティーを開催するということだった。主催はエイリック殿下だ。
不本意とは笑わせる。
夜会を断罪の場にして潰したのは、エイリック殿下本人ではないか。
「また公の場でマリアーナ様に恥をかかせるおつもりでしょうか」
友人の二人は心配そうにマリアーナを見る。
開始時間になってパーティーは始まったが、主催者であるエイリック殿下の姿はまだなかった。
学生たちはほぼ全員がホールに集まっている。今はまだ殿下とその友人達の姿がないので、彼らは用意された料理を口にし、のんびりと歓談していた。
彼らが気になるのは、先日の夜会で第二王子に断罪されたマリアーナの姿があったことだろう。また何かが起こるのではないかと心配している。
そして、もう一人。何故、今ここにいるのだろうと疑問に思う令嬢の姿があることが、余計彼らの不安を掻き立てていた。
彼らは、アリステア・エヴァンス伯爵令嬢がどうなったのかを知っていた。
いくら人目のない場所で断罪が行われたとしても、突然それまでいた伯爵令嬢の姿が学園から消えたとなれば当然噂になる。
しかも、その理由に心当たりがある学生もいるのだ。
だが、さすがにその話題をここで口にする者はいない。
学生たちは長いテーブルに置かれた料理をつまみながら、気になる話題を避け、たわいのない話をするしかなかった。できることなら、殿下が来る前に帰りたいと思っているだろう。
そんなことは出来はしないが。学生といえども、王族が関係していれば勝手な行動は許されない。そして、学園で得た情報は実家に持ち帰らねばならないのだ。
ようやくエイリック殿下がホールに姿を見せた時には、彼らの緊張はピークに近かった。
皆の視線が、ホールに入ってきたエイリック殿下たちに向けられる。
彼らが驚いたのは、殿下たちに守られるように一緒に入ってきた少女の姿だった。
鮮やかな赤い髪の小柄な少女は、学園内では有名人と言って良い人物だ。
エイリック殿下とそのご友人達が大切にしているエレーネ・マーシュ伯爵令嬢。
確かに小柄で愛らしい顔立ちの彼女は、男達に守ってあげたいと思わせる所がある。
足を捻挫したということだったが、見る限り少し足を引きずる程度で、それほどひどくはないようだった。
「皆よく来てくれた。今日の料理は王宮の料理人に作らせたので最後まで楽しんでくれ」
エイリックの言葉に、彼らは感謝の礼で返した。
確かに料理は豪華で美味いが、はたして最後まで楽しめるかどうか。
実際、マリアーナが彼らの方へ歩み寄るのを見ると、のんびり料理を味わうどころではなかった。
「ご機嫌麗しく、殿下」
さすがは第二王子の婚約者第一候補とされた侯爵令嬢。完璧なカーテシーは目を見張るものがあった。
薄緑色のドレスは、派手さはないが、上品で大人びた色気をほんのり感じさせる。
まだ幼さの残る印象は在るものの、マリアーナ侯爵令嬢は間違いなく美人だった。
「マリアーナ嬢。送った資料は確認してくれたな」
「はい。全て目を通させて頂きましたわ、殿下」
「では、自分がやったことをちゃんと理解できたろう」
「確かに、書かれてあったことが事実だと確認は致しましたわ。ただ、それらを私がやったという事実はありませんが」
「なに?」
「どれもが覚えのないことでした。いったい殿下はなんの証拠があって、私がエレーネ・マーシュ伯爵令嬢を虐めたと判断されたのでしょうか?」
「 何言ってるの!エレーネに嫌がらせする人間は、あんたしかいないじゃない!」
レオナード・モンゴメリが顔をしかめてそう言ったが、マリアーナは、いいえと首を振った。
「私だけしかいないと決めつける理由がわかりませんわ。どんな根拠がございますの?エレーネ様ご自身が、私に虐められたとおっしゃったのですか?」
マリアーナが問うと、彼らはエレーネの方に顔を向けた。
彼女は彼らの視線を受け、怯えたようにビクッと震えた。
「怖がらなくていい。エレーネ、マリアーナ嬢からされたことを言ってくれないか」
「え、あの‥‥マリアーナ様は私に、殿下達とばかりいるのはどうかと思う、と責められました。それに安易に男性に近づくのははしたないことだと私に‥‥」
「間違ったことは言っておりませんわ。学園ではいろんな人と交流を持つことができる場所です。学園長も入学式の時におっしゃいましたわ。卒業までの間に多くの人と付き合えるようにしなさい、と。なのに、エレーネ様の交友関係は狭くかなり偏っていて、同性のご友人は一人もおられませんわ。それと、エレーネ様が親しくされる男性の中には既に婚約者がおられる方もいます。その婚約者が、この学園に一緒に通ってる方もおられますから、無闇に仲良くするのはどうかと思うとご忠告させて頂いたのです。それ以外のことは存じませんわ」
マリアーナの言うことは正論だ。だが、エイリック達が追求したいのはそういうことではない。
「エレーネの教科書が池の中にあったり、彼女の靴や大事にしていたブローチがなくなったことも、彼女が食べる料理に異物が入っていたことも、彼女の鞄に虫が入っていたこともなかったとでも言う気か?我々はちゃんとこの目で確認しているぞ」
「なかったとは申しませんわ。実際にエレーネ様がそのような嫌がらせを受けていたことは私もちゃんと調べて存じております」
「他人事みたいに言うんだな。全て貴女がやったことだろう」
マリアーナは、そう断言するモーリスに向けてニッコリと微笑んだ。
モーリスは向けられた彼女の笑みに嫌な予感を覚えた。
自分はもしかして、今、墓穴を掘ったのではないかと。
「ユリアン様、こちらへいらして下さいます?」
彼らから距離を置いて、じっと成り行きを見ている学生たちの方にマリアーナが声をかけると、一人の少女がおどおどした感じで歩み出てきた。
いつのまにか喋る声もなく、ホールの中がシンと静まり返っていることにエイリックたちはようやく気づいた。
まあ、そうなるのは当たり前だったが。
またもマリアーナ侯爵令嬢相手に断罪かと、彼らは息を飲んで見守っていたのだ。
栗色の髪の少女は、エイリックに 向けて淑女の礼をし、やや震える声で名乗った。
「ユリアン・カーティスでございます、殿下」
「カーティス子爵の令嬢か。で、彼女が何か?」
エイリックがマリアーナの方を見て問うと、突然目の前の子爵令嬢が深く頭を下げた。
「も‥申し訳ありません!エレーネ様に嫌がらせをしていたのは私です!」
は?
エイリックたちは、震えながら、それでも己を叱咤し前を見つめ謝罪を口にする子爵令嬢を、ポカンとした顔で見つめた。
「君がエレーネを?」
「そんなわけない!あんた、マリアーナ嬢に言わされてるんじゃないの!?」
マリアーナは侯爵家の人間だ。マリアーナにそう言えと言われれば、子爵令嬢である彼女が逆らえるわけはない。
疑うレオナードに、ユリアンは、いいえ!とはっきり否定した。
「私がやりました!」
「ユリアン様だけがやったのではありません!私も!」
そう同時に声を上げて二人の少女が進み出ると、ユリアンを支えるように彼女達は両脇に立った。
「私達もエレーネ様に嫌がらせをしました!ユリアン様がお可哀想で──何もせずにはいられなかったのです!」
「‥‥‥どういうことだ」
「ユリアン様には子供の頃に決められた婚約者がいたのですわ。親同士が決めた婚約でしたが、ユリアン様は幼馴染でもあるその方をとても愛しておられました。それなのに、その方はエレーネ様と親しくされ、ユリアン様は婚約者の方からダンスに誘われることもなくなり、無視されるようになったそうです。最近では、その方がユリアン様との婚約を解消したがっていると彼のご友人が言っていたそうですわ」
「なんと──その婚約者はここにいるのか?」
「いえ。彼は騎士見習いで、今日は演習に参加していておりませんわ」
そういえば、エイリックはサリオンもパーティーに呼ぼうとしたが、演習で王都にはいなかったことを思い出す。
「つまり、婚約者がエレーネに好意を持ったことが許せなかったというわけか。だが、悪いのは婚約者の方だろう。何故エレーネに嫌がらせをしたんだ」
殿下、とマリアーナは苦笑を浮かべてエイリックを見た。
「先ほども言いましたわ。婚約者のいる男性と安易に親しくするのは良くないことだと。こういう問題が起きているのは、ユリアン様だけではありませんのよ」
え?とエイリックがホールにいる学生たちの方に顔を向けると、思ったより多くの学生が目をそらした。
「‥‥‥‥‥」
エイリックは、マリアーナに指摘されて初めて気づいた事実に、なんとなく気不味げな表情を浮かべた。どう返せばいいのか迷っているようだが、すでに彼の判断は最初から間違っている。そのことに、彼も、友人達も気づいていなかった。
「エレーネに対する嫌がらせについてはわかった。すべてユリアン嬢とそこの令嬢達がやったことなのだな」
「ユリアン様たちだけではありませんわ。頂いた資料からユリアン様に一つ一つ確認を取りましたが、半分くらいは知らないそうです」
「なにっ!では他にも嫌がらせをしていた者がいたというのか!」
「そのようですわ。殿下は、エレーネ様のために誰がやったことか全て調べられますか?」
「勿論だ。理由はどうあれ、彼女にやったことは許せることではない」
エイリックの言葉に、ホール内はザワッとなった。
おそらく、彼は自分が言ったことがどういう影響を及ぼすのか理解していないだろう。
この国の第二王子は、王族としての自覚がまるで足りない。
彼の感覚は、普通の貴族の令息と変わらないように思えた。
エイリックの答えを聞いたマリアーナは、持っていた扇を広げ口元に当てた。
「まあ、そうですか。ご立派ですわ、殿下。では、エレーネ様が大事にされていたというブローチの行方も探してみられたらいかがですか」
「当然探す。あれはエレーネが亡くなった祖母から譲られたものだというからな」
「本当に大切なものなのですね」
はい、とエイリックの傍らにいるエレーネが愛らしい顔で頷いた。
「とても大事なものなんです」
「だそうですわよ、レオナード様。そろそろ返して差し上げたらどうです?」
レオナードはギョッとした顔になり、すぐさまマリアーナに噛み付いた。
「ハア!?いきなり何を言うんだ!いったいどういうつもり?僕がエレーネのブローチを持ってるとでも?」
「あら、持っていませんの?」
「持ってるわけないだろ!だいたい、自分は関係ないみたいな顔をしてるけど、結局嫌がらせの黒幕はあんたじゃないのかい!」
「まあ、逆ギレですの?小さな子供みたいですわね。まさか、既に処分なさった後ですか?」
「なんだってぇぇっ!僕を侮辱するのか!」
怒りで顔を赤くしたレオナードがマリアーナに掴みかかろうとした時、スッと彼女の持っていた扇が目の前を塞ぐように動いた。
レオナードは視界が塞がれたことで動きを止めたが、振り上げた右手はそのままだ。
「レオナード!」
モーリスが慌ててレオナードの腕を掴んで止めた。
こんな公の場で侯爵令嬢を殴ったとあれば、たとえ正当な理由があろうともこちらが罰を受ける。
そもそも、マリアーナのレクトン侯爵家は国王も一目置く家系なのだ。
だからこそ、マリアーナは第二王子であるエイリックの婚約者第一候補であった。
とにかく、レオナードがマリアーナに危害を加えなくて良かったとモーリスはホッとしたが、既に主導権がマリアーナの方に移っていることにはまだ気づいていない。
「落ち着け、レオナード」
エイリックが嗜めると、レオナードは悔しそうに唇を噛んだ。
モーリスは、嫌悪に顔をしかめてマリアーナを睨みつけた。
友人を貶されたことが許せないようだ。
だが、当のマリアーナは平然として、薄く笑みを浮かべている。
そんな彼女に怒ったのは、それまでお姫様のように守られていたエレーネ・マーシュだった。エレーネは、キッとマリアーナを睨みつけた。
「マリアーナ様、見損ないました!証拠もないのに人を陥れるようなことを言って楽しいですか!」
「あら、エレーネ様。意外なことを仰いますのね。私、証拠もないのに、殿下たちに断罪されましたわよ?」
顔をしかめるエイリックら三人に向けて、マリアーナはクスリと笑った。
手に持った扇で口元を隠して笑うマリアーナを、もしレベッカの弟であるルカスが見れば、悪役令嬢がもう一人いた!と驚いたろう。
「貴女なら、何をやっても証拠など残さないんじゃないか」
「名誉棄損ですわよ、モーリス様」
それに、とマリアーナはエイリックに視線を向けた。
「殿下が証拠をお望みでしたら、証人を出しますわ」
「証人?」
「レオナード様がエレーネ様のブローチを持っているのを目撃したという証人です」
「デタラメを言うな!そんな奴いるわけがないだろう!」
「そうです。レオナード様はそんな方ではありません!マリアーナ様は、どうしてもレオナード様を犯人にしたいのですか!」
「目撃した者に会ってもいないのに、最初から否定されるのですね」
「当たり前だ。私達はレオナードを信じている」
そうですか、とマリアーナは微笑んだ。
「私たちも、あの方を信じていますわ。ですから、それを証明させて頂きたいのですけど」
「は?なんのことだ?」
突然何を言い出す?と戸惑う彼らの前に、青いドレスを着た見覚えのある令嬢が現れた。
「レベッカ嬢?貴女は国に帰られたのではなかったか?」
「親友のことが気になって戻ってきましたわ」
間に合いませんでしたけど、とレベッカが悲しげに目を伏せると、彼らはようやくあることを思い出した。
彼らが断罪し学園から追い出した、あの伯爵令嬢が、隣国からの留学生であるレベッカ・オトゥールと親しくしていたことを。
レベッカは、女王のような優雅な歩みで彼らの前に立った。
いつのまにかマリアーナは、レベッカに場所を譲るように一歩下がっていた。
それを見て、これは偶然ではなく計画されたことだと彼らはようやくだが気がついた。
自分たちが場を作り、話し合いに持っていく筈であったのに、気づけばマリアーナとレベッカが主導権を握り、まるでこれから自分たちが彼女たちに問い詰められようとしていることに。
「エイリック殿下。私、戻ってきたばかりで詳しいことは知りませんの。なので、教えて頂けます?アリステアは、いったい何をして殿下の逆鱗に触れたのでしょう」
レベッカは彼らに向けてニッコリと微笑んでいる。
絹糸のような漆黒の髪に、白い肌。
吸い込まれそうなダークグリーンの瞳は美しいが、表情に反して笑っていないその瞳は彼らには悪魔のように見えた。
「アリステア・エヴァンスは、エレーネを階段から突き落としたんだ。幸い、足の捻挫ですんだが、下手をしたら死んでいたかもしれない」
「まあ、そうでしたか」
棒読みの答え。まだ笑みを崩さないレベッカに、彼らは冷や汗を流した。
袖口から覗く白い腕も、腰も細く華奢な令嬢であるのに、何故か恐ろしいと感じる。
気がついていないのは、エレーネ・マーシュだけだろう。
彼女は、レベッカが怒り狂っていることに全く気づいていないようで、彼女に向けて、まだ痛みがあって、歩き辛いのだと答えていた。
「そうですか。大変でしたわね。本当にアリステアが突き落としたんですの?」
「はい。皆がそう言うので、そうだと思います」
え?
無邪気な笑顔でレベッカの問いに答えるエレーネに、初めてエイリックらは違和感を覚えた。
「あら、じゃあエレーネ様は誰が突き落としたのかご存知ないのですね」
レベッカが問うと、今度はエレーネは曖昧な笑みを浮かべただけで答えなかった。
「目撃者がいるんですよ、レベッカ嬢」
レベッカは、ちらっとモーリスの方に視線を向けた。
「アリステアがエレーネ様を突き落とした所を見た方がいらっしゃるのですね。お会いできますか」
「会ってどうするんです?」
「勿論、本当に彼女がやったのかを確かめますわ。その時の状況も。殿下がご友人のことを信じているというなら、私もアリステアを信じていますわ。彼女は、人を傷つけるようなことは絶対にしません」
「私も信じてますわ。アリステア様はそんなことはなさいません」
彼女たちの、絶対に引かないだろう様子に、エイリックは少し考え、そしてわかったと頷いた。
「目撃したという方は、ここにおられます?」
「ああ。来ているはずだ」
エイリックが壁際近くまで下がっていた生徒たちの方に顔を向けた時、それまで静かだったそこから何やら揉めるような声がした。
しばらくして、見かけない黒髪の男が、赤茶けた髪の少年の腕を掴んで前に出てきた。
少年は生徒の一人で、なんとか逃れようと足掻いているが、黒髪の男の手からは抜け出せないようだった。
「目撃者というのは、この方でしょうか」
「あ、ああ、そうだが、君は誰だ?」
「私付きの執事ですわ。疲れのせいか少し体調がよくなかったものですから、付いてきてもらったんです」
レベッカがそう答えると、どこがだ、とあちらこちらで突っ込みが入った。
勿論、エイリックたちもレベッカの体調不良など信じられない。
「どうしたの?」
「この方が、ずっとソワソワしていた様子だったのですが、目撃者の話が出ると急に庭へ飛び出そうとされたので、とりあえず捕まえました」
「イリヤ様!やだ!本当にイリヤ様だわ!」
えっ?
静かな空間を破るように甲高い声がホール内に響き渡った。
それが、エレーネ・マーシュの声だとは、エイリックらもすぐにはわからなかった。
それほど意外だったのだろう。
愛らしくて、あまり大きな声で喋ることはなく、守ってあげたくなるか弱い印象のエレーネが、気づけば歓声を上げてイリヤに抱きついていた。
「ああ、本当にイリヤ様なのね!会いたかったわ。続編に隠れキャラとして出るってわかった時は絶対に会おうと思ってたの!」
「失礼。貴女は誰ですか?」
さすがに冷静沈着が売りのイリヤも、突然少女に抱きつかれては困惑する。
エイリックたちを怖がらせたレベッカも、キョトンとした表情でエレーネに抱きつかれたイリヤを見つめていた。
「エレーネ!いったい何をしているんだ!」
「何って‥‥イリヤ様がいたから」
「答えになってない!」
エイリックはエレーネをイリヤから引き離した。
「エレーネ!どうしたの、いったい!あの男を知ってるの?」
レオナードもモーリスも突然のエレーネの奇行に困惑しまくりだった。
エレーネはというと、イリヤから離されたことにムクれていた。
そんなエレーネの様子を見てから、エイリックはイリヤを睨みつけた。
「エレーネとおまえはどういう関係だ!?」
「初めて会った方です」
事務的なイリヤの答えにエイリックは眉をしかめた。
「そんなことより、この方をどうします?」
イリヤの右手は、いまだ捕まえた生徒の腕を掴んだままだった。
私が聞くわ、とレベッカはへたり込んでいる少年の方に腰を屈めた。
「エレーネ様が階段から突き落とされるのを見た方ね?どういう状況だったか教えて下さる?」
レベッカに見つめられた少年は、ヒィ‥!と声を上げた。
「み‥見てません!悲鳴を聞いて行った時には、もう彼女は階段の下で倒れていて。彼女が嫌がらせされていたことは噂になっていたので、誰かに突き落とされたのではないかと思って───そう思ったら、ここへ来る前に金髪が見えた気がしたので、てっきりアリステア嬢が突き落とした犯人だと」
目撃者だと言っていた少年の言葉に、エイリックらは衝撃を受け真っ青になった。
「ちょっと、どういうこと?アリステア嬢がエレーネを突き落としたってハッキリ言ったじゃないか!」
すみません、すみませんと少年は何度も床に額を擦り付けて謝った。
「てっきりそうに違いないと思ったんです。私がアリステア嬢に落とされたのか?と聞いた時、エレーネ嬢は否定しなかったので」
皆の視線が、レオナードとモーリスに挟まれているエレーネに向く。
「どういうことなんだ、エレーネ?本当は誰に突き落とされたんだ?」
誰にも、とエレーネは可愛らしく首をすくめた。
「階段を降りる途中、足を踏み外して落ちただけよ。その時、変に足を捻っちゃって。凄く痛かったわ」
「エレーネ!」
エイリックの口から悲鳴のような声が上がった。
エレーネが階段から突き落とされたということだけを信じていたエイリック、レオナード、モーリスにとって、彼女の言葉はあまりに残酷だった。
何故、そんなに平気な顔をしているんだ──何故!
「貴女が誰かに突き落とされたと彼らが思い込んでいることを知っていたわね。何故、誰にも落とされていないと言わなかったの?」
レベッカが聞くと、エレーネは、だってえ、とクスクス笑った。
「隠しキャラのイリヤ様と会うには、悪役令嬢のアリステア・エヴァンスが絶対に断罪されなきゃならなかったもの。どういう形で出てくるかわからなかったし。まさか、隣国から留学してきたレベッカ様の執事としてだなんて思わなかったわ」
ああ、でも執事姿のイリヤ様も素敵だわ。
初めて見た設定では、国を追われた王子様だったけど、とエレーネが呟くと、それを耳にしたイリヤの顔が不快そうに歪んだ。
「何を言っているのか、私にはさっぱり理解できませんわ。大丈夫ですの、彼女?」
「安心して下さい、マリアーナ様。私も全くわかりませんから。この手の話は、弟が得意なんですけど」
残念ながら、ルカスはレガールにいる。
「こっちに来るように言おうかしら」
「その必要はないわ。彼女とは私が話をするから」
そう言ったのは薄茶色の髪をアップにした柔らかな表情を浮かべた貴婦人だった。
彼女はレベッカを見て微笑んだ。
「貴女がレベッカ・オトゥール嬢ね。レガールの侯爵令嬢の。アリスちゃんから貴女のことはよく聞いていたわ。娘と仲良くしてくれてありがとう」
娘!
「あ、では貴女がマリーウェザー様?アリステアのお継母さまの」
マリーウェザーは笑みを浮かべながら頷いた。
マリーウェザーの背後では、誰かがパンパンと手を叩いていた。見ると背の高い30代後半くらいの女性教師がテーブルの所に固まるように立っていた生徒たちに指示を出していた。
「さあ、今日はこれでおしまいです。皆さんは部屋に戻りなさい。明日の授業は午後からですから間違えないで下さいね」
五年前にこの学園の教師となった彼女は、現在の学園長の娘だった。
10代の頃から氷の令嬢と呼ばれていた彼女は、常に表情が固定され笑う所を見たことがないとまで言われていた。
かつてこの学園に通っていた彼女は非常に優秀で、卒業するまでの3年間成績は常にトップだったという。
生徒たちは女性教師の指示に従って、ゾロゾロとホールから出て行く。
女性教師は、エイリックらの前でへたり込んでいる男子生徒にも出て行くように言った。
「貴方への罰は後ほど言い渡します。自分の部屋に戻って反省していなさい」
はい‥‥と彼は小さく答え、しょんぼりと俯きながらホールを出て行った。
残ったのはエイリックら四人とレベッカとイリヤ、マリアーナと友人の二人、そしてマリーウェザーと女性教師だけになった。
マリーウェザーは茫然としているエイリック殿下を無視して、エレーネ・マーシュに話しかけた。
エレーネは、自分が彼らの信頼を壊しただけでなく、彼らを取り返しのできない状況に追い込んだことに気づいているのだろうか。
彼女の視線はずっと、会いたかったというレベッカの執事イリヤに向けられている。
頰を染め、幸せそうなその表情を見ると、何故か責める気にはなれない。
隠れキャラ‥‥ね。
「エレーネ様ね。私はマリーウェザー。貴女はどこのお生まれかしら。私は横浜で生まれたのだけど、大学からはずっと東京だったわ」
エレーネは目を丸く見開いた。
「ええー!マリーウェザーさんも夢の旅人なんですか!びっくりです!あ、私、実家は京都なんです。今は東京にいます」
マリーウェザーはニコニコ笑っている。
「貴女とゆっくりお話したいわ。二人だけでお茶でもしませんか」
「はい!私もお話したいです!私、翔ぶのは8回目なんです。まさかここで同じ夢の旅人に会えるなんて思いませんでした。嬉しいです」
「そう?良かったわ、貴女に会えて」
マリーウェザーは、女性教師にエレーネを学園のサロンに連れて行くよう頼んだ。
「少し彼らと話をしてから行くので待っていてね」
はい、と笑顔で頷いたエレーネは、最後に爆弾を一つ落として行った。
「あ、レオナード様!ブローチは後でこっそりでいいので返してくださいね!私としてはそのまま持っていてもらってもいいんですけど、後のことを考えると、マズイかな、と思うから」
「エ‥エレーネ?」
真っ青になったレオナードは、まるで見捨てられた子供のような顔で彼女を見たが、エレーネはというと笑顔をそのままにホールから姿を消した。
「あの子、ほんと凄いわ。悪気が全くないというか。爆弾落としたことも気づいてないわね」
「学園の男性方は、あの無邪気で天真爛漫な所がいいと言っていましたわ」
マリーウェザーはマリアーナの方に顔を向けた。
「あら、そう?私はとんでもなくはた迷惑だと思うけれど」
「同感ですわ。初めまして。マリアーナ・レクトンです」
マリアーナに続いて、彼女の友人二人もマリーウェザーに名乗った。
そして、改めてレベッカとイリヤもマリーウェザーに自己紹介した。
それじゃ始めましょうか、とマリーウェザーはエイリック殿下とレオナード、モーリスの方に向き直った。
三人は、ビクリと身体を震わせた。顔からは血の気がなくなり、表情は引きつっている。
ようやく、自分たちが何をやらかしたのか自覚したのだろう。既に遅すぎるが。
「初めまして、殿下。マリーウェザー・エヴァンスと申します。貴方と直接お話してもよいとの許可を頂いておりますので、遠慮なく言わせて頂きますね」
「きょ‥許可?誰にだ?」
「王妃クローディア様ですわ。クローディア様と私は従姉妹同士ですの」
「‥‥‥‥!」
「そして、殿下が断罪して追い出したアリステア・エヴァンスは、私の娘ですわ」
エイリックは震えた。
「す‥すまなかった!私はとんでもないことをしてしまった!アリステア嬢に謝りたい!」
「ああ、残念ですわ、殿下。アリステアはもうこの国にはおりませんの」
「え?」
「え?ってなんでしょう。エイリック殿下が国外追放にしたのでしょう?」
レベッカがそう言うと、エイリック達は驚いた顔になった。
「国外追放?違う!私は学園から出て行くことと、王都には足を踏み入れるなとだけしか言っていない!」
「私が国外に出しましたわ。王族から断罪されたとなれば、あの子の身が危ないですもの」
エイリックは、ハッとしたように水色の瞳を大きく見開きマリーウェザーを見つめた。
「貴女は──30年前のことを知っているんですか?」
あら、と彼女は意外そうにエイリックを見た。
レオナードとモーリスは知らないらしく、何のことだという顔をしている。
「どなたからお聞きになりました?」
「父上に。聞いたのは最近だが」
「既に手遅れだったわけですね。もっと早く話してくれていればと思っていますか?」
あ‥ああ、とエイリックは頷く。硬く握り締めた拳が震えていた。
「愚かですわねえ。陛下もエイリック殿下も」
マリーウェザーは深い溜息をついた。
王族に対して不敬ともいえる言葉だったが、誰も何も咎めなかった。
そもそも、マリーウェザーは王妃の許可を得てこの場にいるのだから。
「あの‥‥30年前の事件というのは、セレスティーネ・バルドー公爵令嬢のことでしょうか」
マリアーナの友人の一人が、恐る恐る聞いてきた。
「知っているの?」
「詳しくは──私、生まれてすぐ子供のいなかった伯母の所に養女になったんですけど、その伯母が亡くなる少し前に話してくれたんです。これは誰にも言ってはいけないことだけど、いつの日か真実を公にしなければならないことだから、私に覚えておいて、と」
「‥‥‥‥‥そう。貴女の伯母様は、現場にいて見ていたのね」
何のことだ、と事情を知らないレベッカやマリアーナが首を傾げるが、マリーウェザーは笑みを浮かべて首を振った。彼女の伯母が言ったように、いつか公になる日がくると思うから、それまで待ちなさい、と。
「では、あなた方の処分ですが」
「処分‥‥‥」
ハッとしたようにエイリックと二人が顔を上げる。
その表情は自信をなくし、ひどく情けない。
まだ14・5の子供。だが、いずれは国の中枢を担う家系に生まれたからには、子供だからと許されることはない。
「とりあえず、部屋に戻って謹慎かしら。私が判断することではないので」
「‥‥‥‥‥」
「このパーティは殿下が主催ですね。こうなるかもしれないと思っていました?」
エイリックは小さく首を振った。
「父上から昔のことを聞いた時、もし、とも考えた。でも、エレーネが大事で、信じていたから、そんなことは絶対あり得ないと」
そう、とマリーウェザーはふっと息を吐く。
「あなた方に言う必要はないのだけど、アリステアは大丈夫だから。あの子は、あなた方とは比べものにならないほど強い子なの」
三人は黙り込んだ。
マリーウェザーはレオナードに向けて手を出した。
「ブローチを出して。持っているのでしょう?私が返しておきます」
青い顔をしたレオナードは、もう反論する元気もなくなったのだろう、上着の内ポケットからブローチを出してマリーウェザーの手の上にのせた。
エイリックもモーリスもそれを見て何か言うことはなかった。
ホールを出て行く三人の後ろ姿は、まるで幽霊のように力無く見えた。
だが、哀れだと同情する気はない。
「残念だわ。最後にトドメをさしてやりたかったのに」
「トドメ、ですか、お嬢様?」
「そうよ。あのバカ王子の勘違いを指摘してやれば、きっと死にたくなると思うわ」
絶対に、とレベッカは言う。
「それは楽しそうね。そのうち教えてもらえるかしら」
マリーウェザーが言うとレベッカは、はい喜んで、と答えた。
「では、近いうちにお茶会にお誘いするわ。マリアーナ様たちもいらしてね」
はい、是非とマリアーナが頷くと、マリーウェザーはにこりと微笑んだ。
「じゃあ、私はあの子と話してくるわ。あなた方も気をつけて部屋に戻りなさいね」
マリーウェザーの背を見送った彼女たちは、一気に力を抜いた。
「イリヤ、疲れたわ。お茶入れて」
「はい、お嬢様」
「マリアーナ様もご一緒に、お茶をどうです?」
「そうですね。お邪魔させて頂きますわ」
少女たちは連れ立ってホールを出て行き、最後に出たイリヤはホールの扉を閉めた。
次回は2組のお茶会話です。
マリーウェザーとエレーネ。レベッカとマリアーナとご友人二人+イリヤ




