ボーマンとトリスタン③
◯ボーマン
ボーマンは目の前で項垂れる少年を見て、初めて自分が今までしてきたことを恥じた。
なぜなら彼は、少年達に暴力を振るい、利用し、少年達の気持ちを踏みにじってきた。
今まさに、目の前にいる少年は、そうして国王軍にぼろぼろにされた完成形であった。
今まで傷つけた人間の気持ちなんて考えたことがあっただろうか。
いや、なかった。
そんなこと考えていたら、俺は誰も傷つけられなくなる、騙せなくなる、踏みにじれなくなる、力で従わすことができなくなる。
今、自分がひどい目にあっていることでやっとわかったんだ。
「弱い人間の気持ちなんて誰も考えてくれない」
ボーマンはそうつぶやいていた。
それを聞いたトリスタンは目を見開いて怒鳴った。
「なんだと!お前」
「だから!」
ボーマンが怒鳴った。
「お前は、強い奴らの気持ちなんて考えなくていい」
◯トリスタン
「ま、そういうことだよ。早くお前らのアジトに連れて行け」
そう言うとボーマンは何事もなかった様にトリスタンの横を通り過ぎて行った。
トリスタンはぽかんと口を開けてその後ろ姿を見つめていたが、はっと我に返った。
「おい!待てよ!」
ボーマンが振り返る。
「さっきのはどういう」
「お前は強い奴を傷つけてもいいってことだよ」
「え?」
「その代わり、あいつらとは違うやり方でな」
あっけにとられているトリスタンにボーマンは言葉を続ける。
「お前は、忘れるなよ。弱い奴の気持ちを」
ボーマンは前を向いて歩き出した。
トリスタンはしばらく考えていた。
俺は、あいつらに国王軍に何かしてやろうと思ったことがあっただろうか。
いや、考えたこともなかった。
ずっと怖かったから。
怖くてびくびくしながら生きていたんだ。
トリスタンはボーマンの背中に向かって叫んだ。
「おい!待てよ!お前道知らないだろ!?」




