ボーマンの留守番③
「待ちやがれ!」
ボーマンはすかさず立ち上がった。
「兄ちゃん、どうした!?」
「おじさん、さっきのガキが戻ってきやがった。店の片付けちょっと待っててくれ!」
ボーマンは、急いで店を出て、少年の後を追った。
黒い髪、あの背丈、間違いない。
さっき王子の財布を盗んだ奴だ。
後ろ姿しか見ていないが、俺は、ガキをこき使っていただけあってガキの特徴は忘れねえ。
「おい。待ちやが」
「待て。トリスタン」
ボーマンは驚いて横を見た。
いつの間にか金髪の少年がそこに立っていたからだ。
金髪の少年は横にいるボーマンに見向きもせず、ただまっすぐ前を向いていた。
その視線の先で、黒髪の少年が立ち止まってこちらを見ていた。
黒髪の少年からちっと舌打ちの音が聞こえた。
金髪の少年は、黒髪の少年の元へ歩み寄って話しかける。
「お前、財布を盗んだな?」
黒髪の少年は何も答えない。
金髪の少年は、顔を上げて、ボーマンを見つめた。
こいつ、いつの間に・・・?
ボーマンは思わず少年の顔に見とれた。
金髪の少年の顔はとんでもなく美しかったからだ。
光り輝く金髪に大きな茶色い瞳。
少し王子に似ている?
「すみません。僕の仲間があなた方に失礼をしたようで」
そう言われてボーマンはやっと我に返った。
「え、ああ。いや、いいんだよ。いや、よくねえか」
ボーマンは混乱していて意味のわからない答えを返していた。
それを見て金髪の少年がくすっと笑った。
それから真面目な顔に戻ったかと思うと彼は黒髪の少年を見つめた。
「さあ、財布を返すんだ。いいな?」
黒い髪の少年はしぶしぶ懐から財布を取り出して金髪の少年に渡した。
それは、まさしくアーサーの財布だった。
金髪の少年は、ボーマンに歩み寄り財布を差し出した。
「これですよね?」
「え、ああ」
ボーマンはなされるがまま財布を受け取った。
「では、財布はちゃんと返しましたよ」
金髪の少年はそう言うとボーマンの横を通り過ぎた。
その時だった。少年がボーマンにつぶやいたのだ。
「それからアーサーによろしく」
その言葉を聞いたボーマンは驚いて少年を見た。
はずだった。
「え?」
そこにはもう少年の姿はなかった。




