胸の痛み
◯アーサー
こんなところ一日でもいや一時間でもいたら頭がおかしくなりそうだ。
薄暗い下水道の中でアーサーはそう思った。
アロアの持っている明かりだけが頼りだった。
「ひどい臭いだ」
下水道の悪臭に思わずアーサーはつぶやいていた。
「下水道だからね」
アロアはアーサーに素っ気無く答えた。
「なぜだ?」
「え?」
「なぜこの国は孤児が多い?」
アロアの足音が止まった。
「アロア?」
アーサーが振り返ると、アロアの青い瞳がまっすぐアーサーを見つめていた。
「王の政策のせいよ」
「父の政策?」
「アーサー、本当にあなた何も知らないの?」
アーサーは何も答えない。
「知ろうともしなかったの?」
まただ。
「この国の王子でありながら、なにも知ろうともしなかったのね」
また胸が痛い。
「私は・・・」
アーサーはわかった、今から発する言葉は何も意味を持たないと。だから口をつぐんだ。
胸の痛みはどんどんひどくなる。
この痛みはなんだ?
「だったらこれから知ればいい」
アーサーはその言葉に驚いてぽかん口を開けた。
「今まで知らなかった分これから知ればいい」
アーサーの胸の痛みが引いていく。
「知らなかったことは仕方ないもの」
アロアがアーサーの横を通り過ぎる。
「何してるの?はやく行きましょ?」
アーサーは動かない。
彼は、なぜか腹が立っていた。
何も言われなかったことに安心した自分に腹が立っていた。




