3/213
親友たちの村
◯ロッシュ
こんな村失くなってもいい。
ロッシュは風車小屋から青空の下に広がる小さな村を見下ろした。
ほんの一か月前までここはロッシュと彼の親友達にとってかけがえのない大切な村だった。
しかし、親友の1人が死に、もう1人の親友はそのことに罪の意識を感じて村を出て行ってしまったことで、ロッシュはこの村が、人が、とても退屈なものにしか見えなくなった。
彼はまだ受け入れられずにいたのだ。
親友を失ったことも、ロッシュに何も告げずに出て行ってしまった親友のことも。
ふと後ろを振り向いて風車小屋を眺めた。
風車小屋は真っ黒に焼けて、ボロボロになっていた。
この火事が親友であるふたりの人生を狂わせたこ
とをロッシュはわかっていた。
俺は、あのふたりに何もできなかった・・・。
風車小屋から下り、ロッシュは、墓地に向かった。そこには、小さいが立派な墓がたくさんの色とりどりの花に囲まれて建っていた。
「ごめんな。ネロ」
ロッシュは、そこで初めて親友のために泣いた。