別れ②
◯ボーマン
「トリスタン」
ボーマンはしゃがみこみ、トリスタンの肩を力強く掴んだ。
「グウィネヴィアとイズーを頼んだぞ」
「ああ。任せとけって!」
「俺は、兄貴がいなくても平気だけどね」
「何だと?」
ボーマンの横にいたアロアが笑った。
「イズーは、アーサーを迎えに行くためにひとり旅した子だもの。きっと大丈夫よ」
「ほら、姉さんの言うとおり!」
イズーはうれしそうに微笑んだ。
アロアもしゃがみこみ、トリスタンとイズーを抱き寄せた。
「わ、何すんだよ。アロア!」
「どうしたの?姉さん?」
アロアはぎゅっと力をこめてふたりを抱きしめる。
「もし、ひとりで解決できないことがあったら、ふたりで力を合わせるのよ。あなたたちは、辛いことをふたりで切り抜けることができた最強の兄弟なんだから」
トリスタンとイズーは目に涙をうかべながら、アロアを抱き締めた。
横にいたボーマンも、そんな三人を抱きしめる。
「苦しいよ。ボーマン」
「そうだよ。ボーマンの兄さん」
「ほんと、ボーマンまで何してるのよ?」
「いいだろ?俺だって仲間に入れてくれよ」
そう言って4人は、笑いあった。
護衛のふたりに囲まれて、トリスタンとイズー、グウィネヴィアの3人は、隠れ家へと戻って行った。
イズーはいつまでもこちらに手を振っていた。
その姿をアーサー、アロア、ボーマン、ロッシュ、ランスロットの5人は見つめていた。
「でも、あのボーマンがあんなこと言うなんてね」
「あんなこと?」
「トリスタンに言ったのでしょう?お前は強い奴を傷つけてもいいって」
ボーマンは少し顔が赤くなった。
「鼻男、貴様、そんなこと言ったのか?」
「げ、王子まで何だよ」
「たしかに、貴様は、トリスタンとイズーに会ってから変わったな」
「それは違うぜ。王子」
アーサーとアロアがボーマンを見つめた。
「俺が変わったのは、お前らのおかげだよ。お前らと出会ってなかったら、俺はまだ、きっとあの街で子供をいじめてたさ。トリスタンとイズーのような奴を」
アーサーとアロアは顔を見合わせて笑った。
「それより、アロア」
ボーマンは、アロアを見つめた。
「ん?何?」
ボーマンは口を開きかけて、閉じた。
「いや・・・やっぱなんでもない」
「何よ?」
「ほんと、なんでもないんだ」
ボーマンは、なんとなく感じていたのだった。
アロアはもう、トリスタンとイズーに会わない気でいるんじゃないかと。
この戦いが終わったらきっとアロアは・・・。