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アーサーが伝えたかったこと
◯アロア
アロアの頬を涙が伝った。
アーサー、あなたは
その時、アロアの左手をロッシュが握った。
アロアはロッシュの顔を見つめた。
ロッシュの青い瞳からも涙がこぼれていた。
ロッシュは、まっすぐアーサーを見つめていた。
アロアもアーサーを見つめる。
アーサー、あなたは私の父を肯定してくれた。
何も悪くないとそう言ってくれた。
私が許せないでいた父を。
そして、誰も悪くないのだと教えてくれた。
立ちがったアーサーは、ロッシュとアロアに振り向き、こう言った。
「きっとネロもそう思っていたはずだ」
アロアの頬をまた涙が伝っていく。
「ええ。きっとそうね。きっと」
横でロッシュが何度も頷いていた。
「ネロにそっくりなお前が言うならきっとそうだ」
アーサーは、にっと笑った。
アロアには、笑ったアーサーの姿がネロに見えた。
いや、ずっとアーサーはネロそっくりに見えていたのだが、今、目の前にいるのは、正真正銘、ネロなような気がしてならなかった。
アロアとロッシュは、涙を拭った。
「さあ、行きましょう、王様のところへ」