本当の再会
◯ランスロット
ランスロットは、じっと見下ろしていた。
美しい赤い小さな花が供えられた墓を。
ガウェイン、俺は、本当にこれでいいのだろうか。
仲間を裏切って、ここにいていいのだろうか。
ランスロットの金色の瞳には、まだ焼きついていたのだ。
騎士団の仲間の最期が。
「自分で決めたことには責任を持ちなさい」
ランスロットは驚いて、後ろを振り向いた。
グウィネヴィアがまっすぐこちらを見つめて立っていた。
「マーリンが私たちに言った言葉よ。覚えてる?」
ランスロットは、顔を俯けて、頷いた。
「ああ。忘れるわけがない。だから、お前は俺に逃げるなと言いたいんだろ?」
グウィネヴィアは、何も答えない。
「だが、俺は、これでよかったのか?友を殺し、同じ釜の飯を食った仲間を殺し、これで」
「いいんだよ」
ランスロットは、懐かしいその声に驚いて顔を上げた。
ずっと待っていたその姿を見つめた瞬間、ランスロットの抑えていた感情が溢れ出した。
「いいって何が?俺は友を・・・ガウェインを殺したんだぞ?お前だって恨んでいただろう?初めは、それでいいって俺は、思ってた。恨まれてもこうしてウーサーの側にいれば、いつかお前の役に立つってそう思ってた。でも、そこでできた仲間をこの手で斬ったとき、本当にこれでよかったのかわからなくなったんだ。ガウェインは、命を落としてまでお前を支えようとした。だから俺は」
「いいんだ。ランスロット」
そう言われて、ランスロットは、言葉を発する代わりに涙が溢れた。
「グウィネヴィアから全て聞いた。貴様が、父に取り入るためにガウェインを殺したことも。城内でうわさを流したことも。反乱を起こすために、人を確保していたことも。貴様らは、ずっと信じてくれていたのだな。私のことを」
ランスロットの金色の瞳が震えた。
「私は、必ず王になる。そしてこの国を変えてみせる。だから、もう自分を責めないでくれ。ガウェインの死を、貴様の仲間の死を、必ず無駄にはしない」
頬に涙が流れ、ランスロットは力強く拭った。
「本当は、不安だった。お前、もう戻ってこないんじゃないかって疑っていた。正直、もう少しここに来るのが遅かったらどうなっていたかわからない」
こちらをみつめる金色の瞳が震えるのがわかった。
「ランスロット、覚えているか?マーリンのあの言葉、こんなことになるなんて望んではいなかった。だが、決めたのは自分なんだと、自分で決めたことに責任を持つと、あいつはそう言ったろ。だから、貴様がどんな道を選ぼうが、それは貴様が決めたこと。この言葉を知っている私には何もいう権利はない。それはこれからもそうだ」
ランスロットはその言葉に小さく頷いた。
「でも、今、これだけは言える。ありがとう、ランスロット。待っていてくれて、ありがとう」
ランスロットは、俯いて微笑み、そのまま顔を上げた、
「おかえり、アーサー」
アーサーは、涙を流して笑った。
「ただいま」
◯グウィネヴィア
グウィネヴィアは、アーサーの腕を引っ張って、ランスロットの横まで連れていくと、もう片方の腕でランスロットの腕を引っ張った。
「おい、グウィネヴィア?」
「これで揃った。これで、私たち4人揃ったわ」
グウィネヴィアが見下ろす視線の先には、私たちの永遠の友 ガウェインここに眠ると刻まれた文字があった。
アーサーとランスロット、グウィネヴィアは、優しい金色の瞳でガウェインの墓をただ見つめていた。
3人には、見えたような、感じたような気がした。
ガウェインがそこにいることを。
そんな再会を果たした4人を墓地の影から見つめる者がいた。