アーサーの帰還③
◯ロッシュ
小さな穴を通り抜けるとロッシュの目の前に大きく、きらびやかでありながら荘厳な装飾が施された建物が飛び込んできた。
そしてそんな建物に囲まれながらも堂々とそびえ立つ大きな城が遠くに見えた。
ロッシュは驚きを隠せなかった。
ロッシュが立っているのは、王都の路地裏の奥にある草むらの中だったが、そんな場所でさえ自分がいた世界とは違う世界にいるようなそんな気分になった。
ロッシュは、思い出していた。
昔、アロアとネロと3人でここに来ようと約束した日のことを。
あの時、自分たちの中で王都はお城がある大きな街ぐらいにしか思っていなかった。
「これが、王都か」
先に穴を通り抜けたイズーも、呆然と王都を眺めていた。
「これが、王都だ」
ロッシュは、はっと我に返った、いつのまにか横にアーサーが立っていた。
「行くぞ。ロッシュ、イズー」
アーサーは、颯爽と歩き出した。
まあ、あいつにとったらここは故郷だもんな。
「待てよ、アーサー!」
その時だった。
大きな銃声が響いた。
「な、なんだ?今の音?」
ロッシュはきょろきょろとあたりを見回した。
銃声は続き、だんだんと音が近づいてくるのがわかった。
「お、おい。アーサー、イズー、一旦壁の外に出たほうがいいんじゃないか?」
「俺もロッシュの兄さんに賛成!はやくここから離れよう」
だが、アーサーは、ふたりの話などまるで聞いていないように、上を見上げていた。
「アーサー?」
ロッシュは、アーサーの視線の先を見つめた。
なにか人影がいるようだったが、顔は見えなかった。
誰だ?
人影が消えると同時にアーサーは何かつぶやき、走り出した。
「お、おい、アーサー!」