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アーサーの帰還②
◯アーサー
「おい、アーサー、本当にこんなところにあるのか?秘密の入口なんて」
「ああ。一年前、王都から脱出するときに俺たちが作った穴がこのへんに」
「あ、あった!」
そう声を上げたのは、イズーだった。
伸びて生い茂った草むらの奥に小さい穴が空いた壁が見えた。
アーサーたちは、王都の正面から入ると、国王軍に捕まってしまうと考え、円のように王都を囲む壁にある抜け穴を探していた。
それは、かつてアーサーたちが王都から脱出する際に空けた穴だった。
イズーが見つけた穴は正面の入口からかなり離れたところにあった。
アーサーたちは馬車を日の出とともに下りたのに、いま太陽は彼らの真上にまで登っていた。
まだ塞がれてなかったか。
よかった。
アーサーはほっと胸をなで下ろした。
「やっとこれで」
ロッシュはアーサーの横でぎゅっと拳を握り締めた。
「アロアに会えるんだな」
アロアか。
穴を見つめて動かないアーサーとロッシュを不思議そうな顔で、イズーが見つめた。
「兄さんたち、何ぼおっとしてんだ?俺、もう先入るよ」
そう言って穴に入るイズーの後に、待てよと言いながらロッシュが続いた。