アーサの帰還
日がすっかり昇った頃、アーサー、ロッシュ、イズーの三人は、長かった馬車の旅を終えた。
目の前には巨大な壁に囲まれた大きな街、王のいる都が広がっていた。
もうここには一生戻らない。
そう思っていたのにな。
アーサーは、目を閉じてため息をついた。
「おいおい、これから王様を引きずりおろそうって男がため息なんかついていいのか
?」
そう言ったのは昨夜の会話などまるでなかったように振舞うロッシュ。
ロッシュの言葉を無視して、アーサーはまたため息をつく。
ロッシュもイズーもきょとんとした顔でアーサーを見つめる。
アーサーは焦っていたのだった。
一刻も早くウーサーを王の座から引きずり下ろしたい。
ずっと今まで逃げていたアーサーは生まれて初めて父親にそんな感情を抱いていた。
焦るとロクなことなんてない。
今までの私がそうだったように。
アーサーは、懐に入れた剣に服の上から触れ、目をゆっくり開けるとじっと王都を見つめ、つぶやいた。
「行こう」
◯アロア
「アロア、起きて」
懐かしい声が聞こえる。
この声でよく起こされていたっけ。
「ねえ、アロア」
そうだ。この声は
「アーサーがここに来たわ。迎えに行ってあげて」
「シスター!?」
アロアは目を開けて、起き上がり、周りをきょろきょろと見回した。
シスター来ていたの?それに
「アーサー・・・ここに?」
アロアは、ふかふかのベッドから立ち上がり、部屋を飛び出した。
朝の日差しが差し込むリビングには誰もおらず、昨日、話し合いのときに飲んだカップが置かれたままだった。
やっぱり誰もいない。みんなまだ寝てるわよね。
アロアは、寝室に戻ろうとしたが、立ち止まった。
「迎えに行ってあげて・・・か」
アロアは、そうつぶやくと自然に足が玄関へと向かっていた。