反乱への準備
◯グウィネヴィア
その言葉を聞いてランスロットが嬉しそうに笑った。
グウィネヴィアは久しぶりにランスロットの笑顔を見たような気がした。
長いこと会っていなかったというだけでなく、ずっと・・・騎士団の団長になってから、ランスロットは心の底から笑っていなかったからだ。
そんなランスロットを見て、グウィネヴィアはアロアの言葉には確信があるような気がした。
「じゃあ、これからのこと話しましょう。アーサーがいつ戻ってきてもいいように、私たちで、できる限りの反乱を起こしましょう」
できる限りアーサーを助けたい。
もう何もできずに、友を見殺しになんてしたくない。
そう言ったグウィネヴィアにアロアたちは、力強く頷いた。
みんなもう確信してるんだ。
アーサーはここに戻ってくるって。
「その前に、アロア」
ランスロットがそう言ったので、アロアはきょとんとした顔をした。
「何?」
「その手錠外さないのか?」
手錠?
グウィネヴィアはアロアの手元を見つめた。
「ア、アロア。あなた手錠ついたままだったの?」
どうりで、出したお茶を全く飲んでいないわけだわ。
アロアの前に出されていたカップには、なみなみ注がれたままのお茶が入っていた。
「だって、手錠外して欲しいとか言いにくい空気だったし」
ランスロットが不思議そうな顔で、アロアを見つめる。
「お前、引きちぎれるって言っていただろう?」
アロアは吹き出した。
「あんなの信じてたの?馬鹿ね。普通の人間が引きちぎれるわけないじゃない」
ランスロットはむっとした顔をした。
「な、馬鹿とはなんだ!?」
くすくすとグウィネヴィアが笑い声を上げた。
「もうランスロットは、ほんと馬鹿真面目ね」
ボーマンとトリスタンもつられて吹き出し、大きなこの豪邸は笑い声に包まれた。
さっきまでの緊迫した空気はどこかに消えてしまったように。
だがグウィネヴィアは思っていた。
自分たちは、何も悪いことをしていない。
むしろ正しいことをしているのだから、暗い顔で話す必要なんてないのだと。