アーサーは帰ってくる
◯アロア
アロアは驚いた。
預言者であるマーリンが未来の王の父親と親しくなり、剣のありかを教えてしまったなんて。
昔ね、私ひどい過ちを犯したことがあったの。
その時は本当に自分を責めた。
今のあなたの様に自分が大っ嫌いだった。
確かに、マーリンは・・・シスターはそう言った。
これが、シスターの責任。
そして、ウーサー王は、それほどまでして王になりたかったのか。
ん?でも、そうなら
「それならどうして、アーサーが生まれたの?アーサーさえいなければ、ウーサーはこんな苦労しなかったのに」
グウィネヴィアは、頷いた。
「それなの。アーサーが今生きている理由」
アロアは意味が分からなかった。
「て、どうゆうこと?」
「イグレーヌ。彼女はウーサー王にとってずっと出会いたかった人であり、一番出会いたくなかった人」
その時、アロアの中にネロの姿が浮かび上り、アロアは、あっと小さく声を上げた。
ウーサー王は運命に逆らえなかったんだ。
「イグレーヌを愛してしまったのね?」
「ええ。それはもう深く愛していたそうよ。そして、そんなふたりの間に生まれたアーサーの顔は、イグレーヌにそっくりだった」
「だから殺せなかった・・・自分が愛した人にそっくりな息子を」
だから、アーサーは生きている。
本当は殺したくてたまらなかったのに。
「殺せないから、王の素質を奪った」
アロアのそのつぶやきにランスロットが、ああ、そうだと答えた。
「ウーサーはアーサーを我儘で傲慢な性格になるようにした。お前、牢の中で言っていたよな。アーサーの言葉使いは、まるで誰かに言わされているようで元々あった人格や素質が奪われているんじゃないかって」
ボーマンが驚いて、アロアを見つめた。
「お前、そんなこと思ってたのか?」
「ええ。ずっと一緒にいると不思議とそう思えてきたの」
ランスロットはじっとアロアを見つめていた。
「それは、お前の死んだ友と関係あるのか?」
アロアがランスロットを見つめ返す。
「そうね。そうかもしれないわ」
「だから、まだ思ってるのか?」
「何を?」
「アーサーがここに来ると」
グウィネヴィアが目を見開いてアロアを見つめた。
ボーマンとトリスタンもアロアを見つめたが、もう答えはわかっているようだった。
アロアは、微笑んだ。
「アーサーは必ず戻ってくるわ」