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ALOISE(アロア)  作者: 十八谷 瑠南
171/213

馬車にて

◯アーサー

「お、おい、お前ら、でかい声でそんな大事なことここで言うなよ。他の乗客に聞かれたらどうすんだよ」

ロッシュが慌てて口に人差し指をあて、小さな声でそう言った。

「大丈夫だよ。周り見てみなよ。みんな仕事で疲れてぐっすり寝てるよ」

ロッシュは周りを見渡した。

アーサーも外の景色から目をそらして、馬車の中を見渡した。

アーサーたちの周りには、ドロドロに汚れた服を着て死んだように眠る人たちで溢れていた。

馬車の中は汗臭いにおいが充満し、寝息やいびきでにぎやかだった。

皆、国にお金を納めるために自分の村から離れた場所で必死に働き、馬車で自分の村へ帰っているのか。

ロッシュはその光景に納得したようにそれもそうだなと言い、アーサーを見つめた。

アーサーは怪訝そうにロッシュを見つめ返す。

「何だ?」

「それでも、そいつを殺そうとするのはおかしいぜ。アーサー」

アーサーは、ロッシュが何を言っているのか一瞬わからなかったが、ああとつぶやいた。

「さっきのイズーの話の続きか」

ロッシュは頷いた。

「だって、お前はマーリンを殺そうとしたんだろ?」

「そうだぜ!兄さん、リーダーに・・・マーリンに向かって持ってた剣を振り下ろしたんだ」

「お前、いくら間違った人間を王にしたからってそれはないだろ」

アーサーは、ふっと微笑んで、また日が沈みかけている王国を眺めた。

「ああ。そうだな。私は間違ったことをした。マーリンはもうずっとわかっていたのにな。自分がとんでもない罪を犯したこと。だからこそ、あいつは」

ガウェインやグウィネヴィア、ランスロットに私を出会わせて剣を探させたり、アロアに助けてもらうように根回しをした。

「自分の責任から逃げなかった。マーリンは逃げなかったのに私は逃げていたのだな」

ロッシュとイズーは何も答えなかった。

何も言わないふたりが気になり、アーサーは再び馬車の中を見ると、きょとんとした顔で、ロッシュとイズーがこちらを見つめていた。

「何だ。貴様らその顔は」

「だってよ、なんかお前変わったなあと思ってよ」

「俺もそう思う。兄さん、なんか変わったよ」

アーサーは、そんなふたりを見て笑った。

「そうかもしれないな」

「やっぱり変わった!」

ロッシュとイズーが声を合わせてそう言った。


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