ランスロットの支え方
そうだ。
俺は決めたんだ。
こうやってアーサーを支えると、あの時、決めたんだ。
剣を持つランスロットの腕はもう震えてはいなかった。
アロアたちを取り込む国王軍たちは、ランスロットの行動に驚き、言葉も出ない様子だった。
しかし、ランスロットの様子を見たウーサー王の周りにいた騎士団の数人は剣を引き抜き、ウーサー王に突きつけた。まるで、事前に打ち合わせでもしていたかのように。
「貴様ら、一体何を?」
ウーサー王は動揺を隠せてはいなかった。
「ウーサー王、あなたには、王の座を下りて頂きたい」
ウーサー王は驚きのあまり、目を大きく見開き、口を大きく開け、声すら発することができないようだった。
「お、お前ら、殺せ!この裏切り者どもを殺せ!」
命令された国王軍たちは、動揺していた。
騎士団の団長がまさか裏切るとは思っていなかったからだろう。
そんな国王軍たちを、剣を引き抜いた騎士団が襲いかかった。
国王軍たちは、簡単に斬られ、恐ろしくなったのか逃げ出した。
しかし、それでも、まだこちらに寝返っていない騎士団が数人いる。
彼らは国王を守ろうとランスロットたちに立ちはだかった。
王はその隙に国王軍の1人に連れられて路地裏から出て行った。
ランスロットも、グウィネヴィアに別の路地裏へ逃げるようにと叫んだ。
反乱を起こした者とそうでない者で真っ二つに別れた騎士団はお互いに睨み合い、動かない。
「俺は、お前らを斬りたくはない」
そう言ってランスロットは剣を下ろした。
「もうわかっているだろう?王は、偽物だ。このままではこの王国は滅びるぞ」
ランスロットに剣を向ける騎士団の1人が口を開いた。
「ええ。わかっています。団長のおっしゃることは正しいです。しかし、私たちは、王に忠義を誓った王直属の騎士団。王が偽王であろうが、化物であろうが、最後まで守り通します」
ランスロットの金色の瞳が揺らいだ。
忠誠か。
ランスロットは思い出した。ウーサー王に忠誠を誓い、騎士団の団長に任命されたときのことを。
全てはこの日のためだった。
顔を俯けてランスロットはつぶやいた。
「そうか」
ランスロットのそのつぶやきが引き金のように騎士団の男たちは、地面を蹴り、互いの敵に向かった。
戦いは、ランスロットたちの圧勝だった。
反乱を起こした騎士団員に手練が多かったのだろう。
返り血をあびたランスロットは、ただ剣を握り締めて、思った。
もう友を殺したくはなない。
アーサー、お前は本当に戻ってくるのか?