ガウェインの支え方
「ガウェイン、俺はアーサーが王になるれるとは思えない。あいつの性格知っているだろう?」
「そりゃあ、アーサーはウーサー王に王の素質ってやつを奪われてんだからよ。でも、一緒に旅して、楽しかったろ?」
ガウェインがにっと笑って、ランスロットを見つめた。
ランスロットは大きなため息をついた。
「それは、仲間としてだ。王になるのとはまた違う」
「ほら、楽しかったんだろ?なら、大丈夫だ」
「何が?」
「お前が支えればいい。それだけだろ」
ランスロットは、何か言おうとしたが言葉が出なかった。
「王ってなんでもかんでもひとりでやってるわけじゃない。俺たちが支えればいいんだよ。一緒にいて楽しかったならこれからも一緒にいてやろうぜ」
「貴様ら何を喋っている?」
じゃあなぜ?と言いかけたランスロットの言葉をウーサー王が遮った。
ランスロットは後ろを振り向いた。
ウーサー王がじっとこちらを見つめている。
「ランスロット、その死にぞこないを早く殺せ」
ランスロットは、視線を床に落としてからゆっくりとガウェインを見つめた。
ガウェインはもうすでにボロボロで、血まみれだった。
彼がもたれる大きな岩の台座には、何か刺さっていた様に穴が空いていた。
「だとさ、ランスロット、いや、ランスロット団長か」
「できない」
「なんで?」
「お前は俺の大切な友だ」
「だったら尚更、友達が頼んでいるからいいだろ?」
「じゃあなぜ?」
ランスロットは先ほど言いかけた言葉を発した。
「ん?」
「なぜ、アーサーを一緒に支えようなどと言った?」
「一緒に支えるよ」
「ここで死ぬのに?俺がお前を殺すのに?」
ガウェインは、にっと笑った。
「俺はそうやってアーサーを支えるって決めたんだ」
ランスロットは理解できなかった。
いくら真の王を王座に就けるためとはいえ、自分の命を投げ出すなど。
「お前には、信じられねえかもしれねえが、これが俺の支え方だ。お前は?」
ランスロットは、じっとガウェインを見つめた。
「全く!何をしている!ランスロット!?」
ウーサー王が近づいてくる足音が聞こえた。
ランスロットは目を閉じた。
俺は?
ランスロットは、ゆっくり目を開けると腰にぶら下げていた剣を引き抜いた。
ウーサー王の足音が止まり、ランスロットがつぶやく。
「これが、俺の支え方だ」
ガウェインはにっと笑った。
ランスロットは、剣を両手で掴み、叫んだ。
「罪人、ガウェインよ。最期に言い残したことはあるか?」
ガウェインは、ふっと鼻で笑った。
「アーサー、お前の王になった姿、見たかったぜ」
ランスロットは、にっと笑って、剣を振り下ろした。